博士の奇妙な…#2

特殊放射線ハヤシレイ

小林紀史


◆放射線といったら

 さて、電脳部室にお集まりの諸君、「放射線」といったら、何を思い浮かべるかな? X線? レントゲン撮影のときには必ずお世話になるね。可視光よりずっと波長が短い電磁波。他に? α線、β線、γ線? 放射性元素が出すやつね。α線とβ線は、それぞれヘリウム原子核と電子、γ線はやはり波長の短い電磁波。陰極線? 本来の放射線と違うけど、まあ、いいか。CRTの画面を光らせるのが、これ。原子炉から取り出す中性子線は、X線を通さないものでも透視できる。うかつに漏らすと原子力船「むつ」になっちゃうけどね。他にも、陽子線、反陽子線、陽電子線、重イオン線、…メガ粒子線? なんじゃ、そりゃ?

 そんなのより、もっと有名なやつがあるでしょ? ほれ、食品業界や医療関係での利用が期待されている未知の放射線。知らない? ほんとに? おかしいな。

◆ハヤシレイ(Hayashi ray)

 今から30年以上前、早矢仕功氏が発見し、自らの名前にちなんで命名した未知の特殊放射線、それがハヤシレイ(Hayashi ray) である。氏の説明によれば、ハヤシレイは、天然有機化合物や高分子化合物、あるいはこれらの混合物に、X線などの放射線を照射すると、発生するという。氏は、容器に充填した2升の米に、毎分40レントゲンのX線を照射することによって、ハヤシレイを発生させることに成功した。

 このハヤシレイは、X線に似て電離作用を持たないが、フィルムを感光させず、螢光を発生させることもない。そして、金属などの物質に対する透過性は、X線より高い。特筆すべきは、次の作用を有するという点である。

1.酒類、香料などを熟成させる
2.コウジカビのアミラーゼの酵素力を増大させる
3.微生物の生長を促進し、また抑制する
4.米、麦、豆などの収量を増加させる
5.神経痛、リューマチ、肩こりを治療する
6.目の輝きを増し、顔の小じわを取り、全身の皮膚のつやをよくする

 この特徴により、ハヤシレイは、工業、農業、医療の各分野において、無限の利用可能性を秘めている。その後、ハヤシレイの利用について、どのような進展があったのか、食品業界関係者、医療関係者からの報告が待たれる。

◆真偽の程は

 仕事中に見つけた文献の紹介です。内容はたいしておもしろくない(作用6は笑ったけど)ですが、問題の文献は、特公昭35−4825号公報。特許の知識があれば気づくと思いますが、これは公告公報、つまり、特許庁の審査官が審査して、特許にするよという意志表示をした公報なんですね。これで、異議申し立てがなければ、ほぼ自動的に特許になるという。実際に特許になったかどうかは調べていませんが、いいのかなあ。興味のある方は、特開昭58−79200号公報もどうぞ。やはり早矢仕功氏の出願で、ハヤシレイ発生装置の改良です。刃物の劣化も防止できるそうで、なにやら、ピラミッドパワーみたいですね。


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