原田知世 collaborate with 鈴木慶一

#2 原田知世 LIVE!! with 鈴木慶一
#2 "Tomoyo Harada" LIVE!! with "Keiichi Suzuki"

たこいきおし


 1992年。当時24歳の原田知世のプロデュースを手がけた鈴木慶一の頭に、『マイ・フェア・レディ』な気分がまったくよぎらなかったなどということが果たしてあるであろうか(笑)。(いや、あるまい(笑))

 1998年。気がついてみるとそれからもう6年。原田知世も今年はとうとう30歳(!)だったりするのであるが、まあ、大方の『マイ・フェア・レディ』ストーリーのご多分に漏れず(笑)、すくすくと、期待以上に育っているようで、誠にもって慶賀の至りである。


 三部作を終えて、次に原田知世がすることは、その三部作でやり忘れたこと、積みきれなかったことだ。
 それは、このプロジェクトにかかわった人々が漠然といだいていたことの具体化だ。それは、思い切ったポップミュージックに立ち返ろうということ。
 意外にもスウェーデンは未踏の地だった。誰もまだやっていなければ、わたしはO.K。
 トーレ・ヨハンソンもこれまでの三作を気に入った。
 収録候補曲は約50曲もあった。選び抜かれた曲はどれも見事にポップだ。スウェーデンのレコーディングスタイルは、わたしが音楽を始めたころのようで、心はポップミュージックに帰っていった。
 トーキョーでのレコーディングはいつもの方法よりも生楽器を多用した。
 ここ数年のローファイブームがいい作用をした。
 なぜか、今とてもいい気持ちだ。(鈴木慶一)


 ……というのは、1996年に「100 LOVE-LETTERS」のシングル発売時の広告チラシに鈴木慶一が寄せていた文章。

 その前、というのは1995年の段階、ということなのだが、鈴木慶一と原田知世の「プライベート・アルバム」の感の強い『Egg Shell』の後、次にどういう展開が待っているのか、正直いって、まったく予想できなかった。なにしろ、『Egg Shell』というアルバムは、「鈴木慶一的なる世界」、としてはあまりにも完成されすぎていて、一種の閉塞感すら感じられたから(もちろん、ムーンライダーズ〜鈴木慶一ファンの視点からすると、それ故の心地よさというものがあるのだが)。

 前回のコラム(糸納豆EXPRESS第28号掲載「原田知世produced by鈴木慶一」)で、原田知世も鈴木慶一的な「趣味人」の域に近づきつつある、と書いたのは、そういう含みがあったのだが、それは、そのままゆくならば、ムーンライダーズ周辺の歌姫の一人として、そのうちメトロトロンあたりからアルバムを出すようになっちゃうかもしれない、という危惧……というか、期待(笑)というか……も若干は込めてのものであったのである(笑)。

 しかし、その後の展開がそんな閉塞的な危惧(笑)を大きくひっくり返してくれるものであったのは、もう周知のことといっていいと思う。


 スウェーデン。

 まあ、今でこそ、タンバリン・スタジオで、トーレ・ヨハンソンで……という日本人ミュージシャンのアルバムは巷にごろごろ転がっているが(カジヒデキとかボニー・ピンクとか)、1996年初頭においては、先に引用した鈴木慶一の言葉通り、確かにそこはまだ「未踏の地」であった。

 個人的には、ちょうどそのちょっと前あたりから、ソフィー・セルマーニとか、リサ・エクダールといった、スウェーデンの歌姫にハマっていたので、実のところ妙な符合(笑)を感じたものではある。

 そうしてリリースされた原田知世初のスウェディッシュ・アルバム、『クローバー』は、鈴木慶一とトーレ・ヨハンソンが仲よく半分ずつプロデュースしたものであるが、前の3部作にはなかったアコースティックでポップな楽しさに満ちた、快作といっていいアルバムであった。

 以下、アルバムの内容に触れながら1998年に到る流れを概観してみたい。

(なお、各アルバムについては例によってアルバムタイトルから曲目リストへのリンクを張ってあります。リストの作成には、原田知世MLのオーナー吉田さんのページ、及びみさえさんのページ「ORANGE HOUSE」を参考にさせていただきました)。


『クローバー』

 このアルバムは、全10曲中、前半5曲がトーレ・ヨハンソン、後半5曲が鈴木慶一のプロデュースだが(この構成は、ちょっとCDじゃなくてLPの感覚に近いものがあるかな)、CD帯の惹句にある「トライアングル・コラボレーション」という表現が示すように、この時点での原田知世は既に、単に「プロデュースされる」だけの存在から一歩脱していると思う。

 アルバム・データをつらつらとながめて見ると、棚谷祐一、北田かおるなどいった、鈴木慶一3部作の1作目、『GARDEN』をサポートした人材の名前が散見されるのだが、アルバムの印象は『GARDEN』とはまるで異なる。

 「50曲を越える候補曲から選び抜かれた」というだけあって、各曲のクオリティの高さもさることながら、ここには3部作の蓄積を土台にさらにワン・ステージ上に上がった、新しい、ポップな「原田知世」がある。

 特に注目すべきは、アルバムのトリを飾る、10曲中でも屈指の出来といっていい「裸足のマリア」が原田知世本人の作詞作曲によるものだという点である。『GARDEN』『Egg Shell』では、原田知世の作った曲「も」入っている、といった、よくも悪くも「サブ」的な印象だったのだが、この曲は原田知世の作った曲「が」入っている、といえる、十分に「メイン」を張れるレベルの秀作だと思う(実際、「裸足のマリア」はその後のライブでも「定番」化している)。

 アルバム全体としてみると、詞の世界は3部作からの流れの鈴木慶一、鈴木博文を中心とした統一された世界観のものなのだが、曲の世界において、そのうちの半分をトーレ・ヨハンソンがプロデュースすることによって醸し出された意図的な違和感が、このアルバムをよい意味でヴァラエティ感のあるものに仕上げている。

 パステルタッチのブルー、イエロー、グリーンでまとめられた紙製3つ折の(これまたLP的?)ジャケット装丁も涼しげでナイス。とにかく人に聴かせて回りたくなる、オススメの1枚、である。


『I could be free』

 明けて1997年。『クローバー』から1年を経過したこのアルバムは、完全に鈴木慶一の手を離れて、トーレ・ヨハンソンのみのプロデュースになる。なおかつ、全曲、作詞を原田知世本人が担当した(ただし、作曲はなし)ということで、シンガーソングライター原田知世としては、初のオリジナルアルバム、ということになるかと思う。

 トーレ・ヨハンソンと鈴木慶一の個性が拮抗していた『クローバー』と比べるとヴァラエティ感には若干欠けるところがあるけど、逆に、統一感という点では(当然のことながら)、こちらの方に分がある。まあ、人にススメたくなる度合としては『クローバー』の方が勝っちゃう面もなくはないのだが(笑)、現在までに到る原田知世のシンガーとしてのスタンスの一応の完成形としての意義は大きい。

 因みに、シングルカットの「ロマンス」のポップ度は、『クローバー』からのシングル「100 LOVE-LETTERS」を明らかに凌駕している。このあたりはヒット・メーカー、トーレ・ヨハンソンの面目躍如といったところであろうか。

 『クローバー』とはうってかわってちょっとくすんだ濃色を基調にしたジャケット(やはり紙製3つ折)も、マル。


『Flowers』

 『クローバー』『I could be free』収録作を中心に97年秋に編まれたベスト盤。オマケでは「T'EN VA PAS」のTombourine Mixなんてのも入っている(笑)。しかし「T'EN VA PAS」は、「彼と彼女のソネット」からライブオリジナルのMixなんかまで含めると、これで一体何ヴァージョン目であろうか(笑)?

 まあ、収録曲はともかくとして、この装丁がまたちょっとよい。ミニアルバムなので普通より薄手の透明プラスチックケース(Q盤などの廉価版CDによくある)を使用していてるんだけど、その素材の透明感を最大限生かす装丁になっている。

 因みに、アルバムの装丁というのは、明らかに、今、原田知世のアルバムを買う楽しみのひとつといっていいと思う。なんというか、この装丁だけでも、手元に置いておきたい、という気持ちを喚起する効果は十二分にある(因みに、3部作の頃から、アルバムの装丁には原田知世本人のアイデアがいろいろと反映されているらしい(【編註1】)。

 ともあれ、内容的にはポップなシングル曲中心で、価格もリーズナブルなので、現在の原田知世への入門書としては最適かも。


 今回はあえてとりあげないが、今年(1998年)8月にはニュー・アルバム『BLUE ORANGE』もリリースされ、10月にはスウェーデンからバック・バンドを呼んでのライブツアーも行なわれた(アルバム・データ及びライブ・レポートについてはまたの機会ということで(笑))。

 また、ものすごく久しぶりの主演映画『落下する夕方』(合津直枝監督作品。第48回ベルリン国際映画祭正式招待)も11月に公開されたが、原田知世本人自ら「第2期の代表作」とコメントするだけあって、非常に作りのしっかりした映画で、女優としての活動も質的に充実していたといえる。

 そんな本人自身の活動の他にも、今年はムーンライダーズのニューアルバム『月面賛歌』に詞を提供したりもしている(【編註2】)。

 そんなこんなで、前回指摘したような「趣味人」的な空気は身にまとったまま、なんだかほどよい感じにメジャーブレイクしつつあるのが、今の原田知世ではないかと思う。


 と、いったところで、今回の本題のライブ・レポート。今回とりあげるのは、1996年6月に行なわれた原田知世Live'96『クローバー』と1998年5月に行なわれた原田知世アコースティック・スペシャル『カコ』。今回はタイトルの通り、いずれも鈴木慶一を迎えてのライブのレポートになっている。

(なお、ライブの曲目リストの作成は基本的には当日の記憶とメモによっていますが、『カコ』に関しては、若干の不明な点について原田知世関連のWebサイト(みさえさんのページ「ORANGE HOUSE」、hiroさんの「原田知世さんの情報ページ」、ムーンライダーズ、原田知世などのライブの舞台監督であるSASAさんのページ)を一部参考にさせていただきました)


原田知世Live'96『クローバー』(1996/6/27)・ミニレポート


(曲目リストへ飛ぶ)

 今回のライブの会場は、当時オープンして間もなかったTBS系列のライブハウス赤坂BLITZ。

 因みに、前年のライブ(Live'95『Egg Shell』)は東京(恵比寿)の1回のみだったけど、今回は一応ライブツアーで、大阪、名古屋、とまわって東京は最終日。

 なにしろ今回は、鈴木慶一がゲストということもあって、前年のライブにも増して期待して聴きにいったのだけど、これが期待以上の出来。前年のライブより格段によくなっている。

 ライブ『Egg Shell』では、基本的にはアルバムのアレンジに忠実で、バック・バンドで足りない音は打ち込みを使っていたようだったんだけど、今回は全部生楽器での演奏で、アレンジもバンド構成に合わせて最適化してある。特に、名前は覚えていないのだけどパーカッションの人が、本来パーカッションではない類の楽器(「彼と彼女のソネット」ではハモニカ、「アパルトマン」ではサックス、など)まで駆使しておおいに演奏を盛り上げてくれていたのが印象的だった。

 前年のライブがどちらかといえば静的というか、「みんなで静かに原田知世の歌を聴く会」といった風情だったのと比べると、今回はまず演奏からしてライブならではの楽しさたっぷり。

 そして、原田知世の声がまたいい。ライブ『Egg Shell』は、アルバム『カコ』で開眼したという「自分の声を純粋に音として扱う」というスタイルとしては初めてのライブだったこともあって(しかもライブは1回こっきり)、まだライブでのスタイルとしてはこなれ切っていなかった感じがちょっとあったんだけど、今回は十分に成熟したという印象。

 ライブの中盤に登場した鈴木慶一は自分のプロデュース曲の中から年代順に「さよならを言いに」「のっぽのジャスティス・ちびのギルティ」「戸棚の虹」の3曲に参加。各曲とも一部原田知世と鈴木慶一のダブル・ヴォーカル部分があって、もう最高! スウェーデンでのレコーディングにまつわる裏話など、MCも実に楽しい。

 で、ゲスト・コーナーが終わって立ち去り際、慶一っつあん、バックのベーシストに向かって……

慶一「ムーンライダーズ以外で同じステージに立つのは10何年ぶりかな」
博文「13年振りです」(
【編註3】

……って、おいおい、バックでしれっとしてベース弾いてるのは鈴木博文ぢゃないか(笑)!

 バックバンドのリード・ギターが徳武弘文、なのは事前に知ってたんど、こちらは事前情報なしだったので本当にびっくりした(笑)。そりゃ確かにバック・バンドのメンバー(【編註4】)はゲストではないかもしれないが(笑)、これはものすごくうれしい誤算(笑)。

 ライブのトリは「裸足のマリア」(なんでも、映画『レオン』にインスパイアされて作った曲であるらしい)。アルバムでもいちばん気に入っていたんだけど、生で聴くとこれがまた格別。

 そしてアンコールは、しっとりした「BOYH SIDES NOW」からポップな「100 LOVE-LETTERS」へ。「100 LOVE-LETTERS」はポップで、なかなかにライブ向きのナンバー。その盛り上がりのままに今回のライブは幕。

 なお、余談であるが、ライブ開演前にはスウェーデンの新人バンド、パインフォレスト・クランチのアルバム『Make Believe』が頭からフルに流れていた。まあ、スウェーデンつながり(笑)、ということだったようなのだが(【編註5】)、当時ちょうどそのアルバムをクルマのCDプレイヤーに入れて通勤BGMにしていたので、会場に入ったときは妙な既視感(既聴感か(笑)?)に襲われたものであった(笑)。


原田知世アコースティック・スペシャル『カコ』(1998/5/31)・ミニレポート


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 なんでも今回のライブ、チケットは発売1時間で完売だったそうで、直前でもチケットが入手できたLive'95「Egg Shell」の頃と比べると、隔世の感がある(笑)。つっても、今回は1会場あたり定員が500人強で、Live'95「Egg Shell」の恵比寿ガーデンホールより収容人数が少ないことは割り引いて考えないといけないけどね(笑)。でも、仮に収容人数が1000人でも、発売日の午前中くらいには完売していたと思う。少なくとも、今の原田知世というのが、そういう存在であることは間違いない。

 因みに、今回のツアーも、大阪、名古屋、とまわって東京は最終日。

 別にアルバムが出たばかりというわけでもない今回のライブ、タイトルの「原田知世アコースティック・スペシャル『カコ』」でピンと来る人もいるかもしれないけど、これ、1996年に福岡のみで行なわれた「アコースティック・ライブ」の全国版というコンセプト。その時は、鈴木慶一と徳武弘文の2人の生ギターのみをバックに原田知世が歌う(!)という大変贅沢な構成で、本州のファン(笑)は非常に悔しい思いをさせられたのだけど、今回はその構成にパーカッションを加えて、その名も「原田知世スーパーユニット」(!)。今回は鈴木慶一も徳武弘文も単なるゲストなんかではなく、そのユニットのメンバー、ということで、生ギター持って2時間出ずっぱりでした(笑)。いや〜、贅沢贅沢(笑)。

 会場の日清PowerStationは、開演前にはもう立ち見でぎっしり。僕はといえば、整理番号303と、比較的早めに入場できたおかげで、立ち見の一番前のポイントを辛くも確保。ちょうど人の切れ目に当たっていたおかげで、ステージの全景がよく見渡せて、個人的には満足。

 この日の知世ちゃんは青系のプリントのタンクトップ?にジーンズに青いサンダル、と青系のコーディネイト。髪型はソバージュ。パーカッションの三沢泉さんは青地に大きなハート入りのTシャツと、赤いパンツといういでたち、で、実は問題(笑)なのが慶一っつあんと徳武さんなんだけど(笑)、端的にいって、徳武さんがエルウッドで、慶一っつあんがジェイクでした(笑)。(【編註6】

 ライブそのものは「1or8」に始まり、「雨音を聴きながら」「Angel」「消せない大文字I LOVE YOU」「ロマンス」「20世紀の愛のようなはかないあの歌」と進行(曲の順番については若干記憶違いがあるかも(笑))。このあたりの曲は既に「定番」化しつつあるのかも。

 因みに、リストで行を空けてあるところは長めのMCが入ったところだけど、実際には1曲終わるごとに「ふう」と一息ついてちょっと雑談(笑)、みたいなスタイルで、メンバーも会場も妙に和やかな、なんかいい雰囲気でした。

 で、この後が今回の本題というか、アルバム『カコ』のコンセプト(ちょっと古い洋楽のカバー)でのライヴ。題して『カコII』(!)ということで、『カコ』収録曲の他に新たにセレクトしたナンバーもいろいろ聴けて、盛りだくさんの内容。いや、今回のライブのためだけのセレクトって、力入ってるよね。なんか、うれしすぎて頭真っ白状態だったけど(笑)。

 まず、慶一っつあんのセレクトで、マリアンヌ・フェイスフルより、「AS TEARS GO BY」。続けて、こちらは『カコ』収録曲から「THIS LITTLE BIRD」(この曲もマリアンヌ・フェイスフルだというのは、実は今回初めて知りました)。

 お次は知世ちゃんのセレクト、ランディ・ヴァンウォーマーより「JUST WHEN I NEEDED YOU MOST」【編註7】)。それから、これまたライブの「定番」のひとつ、『カコ』収録曲よりジョニ・ミッチェル「BOTH SIDES NOW」

 その後が、再び慶一っつあんセレクトでヤードバーズより「幻の10年(HAPPENINGS 10 YEARS TIME AGO)」(!)。これは、なんと慶一っつあんがメインヴォーカル(!)。サビの部分だけ知世ちゃんが参加。ムーンライダーズのヴォーカルの時とは一味違うドスの効いた声で、すっごい渋い(!)。なお、この曲のギターについては「マエストロ(徳武さん)の手ほどきを受けました」と慶一っつあん(【編註8】)。

 『カコII』のトリを飾ったのは、エリック・クラプトン「CHANGE THE WORLD」。これは、春先から流れている日産の企業イメージCM(【編註9】)で原田知世が歌ってるものなので、やるんじゃないかな、とは思ったんですが、ふたを開けてみればこの曲も慶一っつあんのメインヴォーカル(!)。

慶一「この曲を歌うことになるとは思わなかったんだけど……(笑)」
知世「だってわたし、サビしか歌えませんから(笑)」

……つまり知世ちゃん、CMで流れている部分以外は覚えてない、と(笑)。今、フォーライフには「あの曲のCDは出ないのか?」という質問がかなり来ているらしいけど、リリース予定はなし。まあサビしか歌えないんじゃ、CDは出せないか(笑)?(そういう問題じゃない(笑)?)

 ライブのメインディッシュが終わって緊張が解けた(?)ところで、メンバー紹介。これが、なんというか、新作&ライブよろしく大会(笑)で……

三沢「実は今度ロンドンのインディーズからアナログのシングルが出るんですけど……」
徳武「実はDr.K Projectというバンドやってるんですが、今度ライブやりますので……」

……と続いたもので、その後慶一っつあんが……

慶一「実はムーンライダーズというバンドをやってるんですが……」

……ときた時には場内爆笑(笑)。ライブの予定とライダーズのニュー・アルバムの紹介などあったんですが、知世ちゃんがそのアルバムのために提供した曲(【編註2】)の歌い出しを2人とも思い出せなかったのはちょっと微笑ましかったかも(笑)。

 で、一時的に鈴木慶一ライブのMCみたいな状態になっていたところで……

慶一「そうだ。大事なことを忘れていた(笑)。……原田知世さん(笑)!」
知世「実は8月にニューアルバムが出ます(笑)」

……思わず場内(笑)。

 ということで、ニュー・アルバムと10月のライブの予定(次のバック・バンドはスウェーデンのメンバーとのこと)などの紹介の後、そのニューアルバム『BLUE ORANGE』から「ひまわりの丘で」「青空と白い花」の2曲を披露。

 その後は割と淡々と、「LOVE」「裸足のマリア」「恋をしよう」「I could be free」の4曲。中でも「裸足のマリア」では、知世ちゃん、やおら背後から小振りのギターを取り出してトリプル・ギター状態。もう、今回のライブはなんでもありだあ(笑)!

 アンコールはボブ・ディラン「PERCY'S SONG」【編註10】)と「シンシア」の2曲。アンコールにまで『カコII』のコンセプトを徹底した選曲がナイス。

 妙に楽しげな「PERCY'S SONG」で再登場して(【編註11】)、しっとりした「シンシア」につながる。最後の「シンシア」の間奏部分では、おそらくものすごく珍しいと思われる「鈴木慶一の口笛(!)」などというものまで経験させてもらい、その時点でたこいの脳みそはおおよそとろけました(笑)。

 ということで、今まで聴いた原田知世ライブの中でも屈指の内容のこのライブ。その場限り、がライブの醍醐味とは思いつつも、ライブ盤で発売してくれないかな、などとありえない夢想をしてしまうのであった(福岡のライブの時は後日FM福岡で放送されたんだけど、ね)。


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『クローバー』(1996/5/17)

Metro
Words Kaoru Kitada Music Tore Johansson & Lynette Kayana Arrange Tore Johansson & Lynette Kayana
1 or 8
Words Hirofumi Suzuki Music Tore Johansson Arrange Tore Johansson
20世紀の愛のようなはかないあの歌
Words Tomoyo Harada Music Tore Johansson Arrange Tore Johansson
Happier Than Marmalade
Words Lynette Kayana Music Tore Johansson Arrange Tore Johansson
100 LOVE-LETTERS
Words Keiichi Suzuki Music Hitoshi Haba Arrange Tore Johansson
世界で一番退屈な日
Words 北田かおる Music 朝井泰生 Arrange 鈴木慶一
戸棚の虹
Words 鈴木慶一 Music 朝井泰生 Arrange 鈴木慶一
ブーメランのように
Words 鈴木博文 Music 羽場仁志 Arrange 棚谷祐一
消せない大文字 I LOVE YOU
Words 鈴木慶一 Music 坂下正俊 Arrange 棚谷祐一
裸足のマリア
Words 原田知世 Music 原田知世 Arrange 鈴木慶一
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『I could be free』(1997/2/21)

愛のロケット
Words Tomoyo Harada Music Tore Johansson Arrange Tore Johansson
I could be free
Words Tomoyo Harada Music Tore Johansson Arrange Tore Johansson
君は君のもの
Words Tomoyo Harada Music Tore Johansson Arrange Tore Johansson
雨音を聴きながら
Words Tomoyo Harada Music Tore Johansson Arrange Tore Johansson
ロマンス
Words Tomoyo Harada Music Ulf Turesson Arrange Tore Johansson
LOVE
Words Tomoyo Harada Music Tore Johansson Arrange Tore Johansson
CIRCLE OF FRIENDS
Music Tore Johansson Arrange Tore Johansson
Are you happy ?
Words Tomoyo Harada Music Tore Johansson Arrange Tore Johansson
PARADE
Words Tomoyo Harada Music Ulf Turesson Arrange Tore Johansson
バカンス
Words Tomoyo Harada Music Tore Johansson Arrange Tore Johansson
Navy blue
Words Tomoyo Harada Music Tore Johansson Arrange Tore Johansson
燃える太陽を抱いて
Words Tomoyo Harada Music Tore Johansson Arrange Tore Johansson
ラクに行こう
Words Tomoyo Harada Music Masatoshi Sakashita Arrange Tore Johansson
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『Flowers』(1997/9/18)

PARADE
Words Tomoyo Harada Music Ulf Turesson Arrange Tore Johansson
Metro
Words Kaoru Kitada Music Tore Johansson & Lynette Kayana Arrange Tore Johansson & Lynette Kayana
T'EN VA PAS(Tombourine Mix)
Words Regis Wargnier & Cathrine Cohen Music Romano Musumarra Arrange Tore Johansson
君は君のもの
Words Tomoyo Harada Music Tore Johansson Arrange Tore Johansson
100 LOVE-LETTERS
Words Keiichi Suzuki Music Hitoshi Haba Arrange Tore Johansson
シンシア
Words Tomoyo Harada Music Ulf Turesson & Johnny Dennis Arrange Free Wheel
ロマンス
Words Tomoyo Harada Music Ulf Turesson Arrange Tore Johansson
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原田知世Live'96『クローバー』(1996/6/27)・曲目リスト


「世界で一番退屈な日」『クローバー』
「空から降ってきた卵色のバカンス」『Egg Shell』

「消せない大文字I LOVE YOU」『クローバー』
「彼と彼女のソネット」

「ELECTRIC MOON」『カコ』
「アパルトマン」『GARDEN』
「平凡な日々」シングル「あした」B面

(鈴木慶一登場)
「さよならを言いに」『GARDEN』
「のっぽのジャスティス・ちびのギルティ」『Egg Shell』
「戸棚の虹」『クローバー』
(鈴木慶一退場)

「ブーメランのように」『クローバー』
「20世紀の愛のようなはかないあの歌」『クローバー』
「Happier Than Marmalade」『クローバー』

「1 or 8」『クローバー』
「Metro」『クローバー』
「月が横切る十三夜」『Egg Shell』

「裸足のマリア」『クローバー』

(アンコール)
「BOTH SIDES NOW」『カコ』
「100 LOVE-LETTERS」『クローバー』
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原田知世アコースティック・スペシャル『カコ』(1998/5/31)・曲目リスト


「1or8」『クローバー』
「雨音を聴きながら」『I could be free』

「Angel」シングル「恋をしよう」B面
「消せない大文字I LOVE YOU」『クローバー』

「ロマンス」『I could be free』
「20世紀の愛のようなはかないあの歌」『クローバー』

「AS TEARS GO BY」(マリアンヌ・フェイスフル)
「THIS LITTLE BIRD」(マリアンヌ・フェイスフル)『カコ』

「JUST WHEN I NEEDED YOU MOST」(ランディ・ヴァンウォーマー)
「BOTH SIDES NOW」(ジョニ・ミッチェル)『カコ』

「HAPPENINGS 10 YEARS TIME AGO」(ヤードバーズ)
「CHANGE THE WORLD」(エリック・クラプトン)

「ひまわりの丘で」ニューアルバム『BLUE ORANGE』
「青空と白い花」ニューアルバム『BLUE ORANGE』

「LOVE」『I could be free』
「裸足のマリア」『クローバー』
「恋をしよう」
「I could be free」『I could be free』

(アンコール)
「PERCY'S SONG」(ボブ・ディラン)
「シンシア」
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【編註1】 例えば、『カコ』(1994/2/18)のジャケットに植田正治の写真を使ったこととか、『Egg Shell』(1995/1/20)のジャケット写真でデザインが同じで素材の色と質感の違うニットを複数使ったことなどは原田知世の発案によるもの。
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【編註2】 ムーンライダーズ『月面賛歌』(1998/7/18)の2曲目に収録の「幸せの場所」
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【編註3】 この会話の言い回しと正確な年数は実はうろ覚えです(笑)。「ムーンラーダーズとTHE SUZUKI……」っていってたかも。
 しかし、この会話を3会場で毎回やってたんだろうから(笑)、これは演出だったんだろうなあ(笑)。
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【編註4】 というか、実は、この時のバック・バンドのバンド・マスターは鈴木博文だったのだそうだ。
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【編註5】 会場入口で配られたチラシの中にはパインフォレスト・クランチの初来日公演の案内もあった。
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【編註6】 自分たちの服装にはひとっことも言及してなかったけど、時期(『ブルース・ブラザース2000』公開)的にみて、まあ、狙っていたんでしょうねえ(笑)。
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【編註7】 なお、「JUST WHEN I NEEDED YOU MOST」については……

慶一「これは、僕知らなかったんだよね(笑)」
知世「死角に入ってたんですね(笑)。わたしくらいの年代の人なら、聴けば「あああの曲」って思うと思うんですけど」

……というようなやりとりあり(笑)。

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【編註8】 「幻の10年」は、オリジナル曲はジェフ・ベック&ジミー・ペイジのツインリード(!)ということで、その辺を踏まえた上でこういう発言が出たものと思われる。なお、ヤードバーズを選択したのは次のエリック・クラプトンへの含みがあったのかもしれない(ヤードバーズのリードギターはエリック・クラプトン→ジェフ・ベック→ジミー・ペイジの順に交代して最終的にはレッド・ツェッペリンの母体となった)。

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【編註9】 ところで件のCM、プロデュースは慶一っつあんだけど、曲自体は先方からの持ち込みとのこと。実際、ライブのすぐ後にヴォーカルが交代して続いているので、どうやら「CHANGE THE WORLD」を日本人のヴォーカルにカバーさせる、というシリーズの模様。
 因みに、CM裏話で、知世ちゃんと慶一っつあんの出合いが「まわ〜るまわるよスクロ〜ル〜」のエオリアのCMだったというのは、僕は初耳でした(実は有名な話だったらしいけど(笑))。

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【編註10】 なお、「PERCY'S SONG」は初め曲名が全然わからず、hiroさんSASAさんのホームページから曲名の情報をいただき、インターネットで歌詞データを検索して確認しました。インターネットえらい(笑)。

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【編註11】 実に楽しげに歌われていた「PERCY'S SONG」だが、ボブ・ディラン詩集などでその歌詞をよくよく調べてみると、歌われている内容はけっこう不吉(笑)だったりするのだが、それはまた別の物語。
 ところで、「PERCY'S SONG」が入っているボブ・ディランのアルバムを探してみたんだけどなかなかみつからない(初期作品なので年代は63〜64年あたり?)。ベスト盤とかにも入ってないし、どなたか収録アルバムについての情報をお持ちの方、ご教示いただけると幸いです。

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