The Counterattack of Alpha-Ralpha Express

Lesson #5 "しんぺんざっき"

両谷承


 今回は蛸井氏よりお題目がもらえなかった。これといっていつものように2〜3ページも喋るような凄い新譜も聞いてないしなあ、という訳で何だか自虐的なタイトルを付けてしまいました。今回はいい加減なことを思いつく順番につらつらへろへろと綴ってゆこうと思っとります。

 しかしまあCAREはお題目原稿だから保ってるような部分も結構あるからなあ。糸納豆みたいなファンジンで、読者の大半が私を知らないってのも珍しいかもしれない。いいや(と、最近投げ遣りが癖になっとります)。


 糸納豆を読んでていつも羨ましいな、なんて思ってるんですが。東北大SF研ってのは何だか本当に巨大なコネクションで(人数の話ではない)仲良さそうで、いいなあ、と。そんなことない、っておっしゃる向きもいらっしゃるかもしれないけど、私も一応はファンダムの人間だったりはしたもんで、ニュアンスは分かってるつもり。  私はご存じのかたもいらっしゃるかもしれない某プラネッツの身内だったりもしたもんで、そっちの繋がりはないでもないんですが糸納豆みたいなものを媒介にしてみんなの動向が掴める、なんてことはない。淋しい、とかそういうことではないんですけどね。


 糸納豆は個人誌だから、蛸井氏の都合によりけりで発行がいつになるか分からない。だからどうだって話じゃないんだけど、結構リアルタイムで原稿を書いても古くなっちゃうことがないでもない。二十七号の原稿なんかいきなり九十四年一月の話で始まっちゃうもんね。でも今回は安心。なんか次号は急いで出す、ってことみたいなんで、そういうつもりで書かしてもらいましょう(ちなみにこの時一緒にコンサートに行った娘は当時十九才になったばっかで、本物の元娼婦だったりしたんだよなあ。当時ぼくが書いてた小説には十七歳の売春婦が出てきてたりしてて、偶然に大笑いしてたんだけど)。


 これを書いてるのは平成六年十一月の末なんだけど(と、入れとかないとなんだかわかんなくなる可能性もある)、いま桑田佳祐と長淵剛が誹謗中傷しただのなんだのって喧嘩してたりする。どうしてまたこんなに長淵が怒ってんだかさっぱり分かんなくて、会社で先輩に聞いてみたら「人間、本当のことを云われるのが一番腹立つんや」って云ってた。そりゃそうかも知んない。だけどそこで(反論する訳でもなく)腹立ててむきになるのは恥の上塗りってやつじゃないのかな。ヴューズに長淵のロング・インタヴューが載ってたから読んじゃったけど、玄界灘のど根性は湘南のおぼっちゃまには分かるまい、とかなんとかアル中の少年野球監督みたいな世迷い言ぬかしてやがって、これは素敵なもの読んじまったな、って思った。例の曲の中身に関しては、一言の反論もないんだもの。

 ………などと考えてて気付いた。きっと、おんなじようなメンタリティの持ち主が結構この世のなかにいるから奴の唄が売れるんだろうなあ、って。気味悪い。

 まあしかし、桑田はもう少し堂々としててもいいと思うな。少なくともミュージシャンとしては遥かに才能もあるんだし、正直者なんだから。


 先週の土曜日に有明コロシアムでリングスを観た。山本はドールマンに勝ってしまった。ナイマンはフライをノックアウトした。前田は情けないことにトニー・ホームを倒すのに六分以上も掛かってしまった。結構盛り上がったのでみんなで寿司を喰って帰った。しかしこの文章の載った糸納豆が出る頃にはトーナメントも決勝が終わってるんだろうな。 翌日は東京ドームで女子プロレスの大会を観た。神取はやっぱりかっこ良かった。僕の愛する咲恵ちゃんは最初からどじ踏んでいいとこなしだった。関西も強かったけど、アジャはそれどころじゃなく強かった。北斗は散々かっこつけて、でもやっぱり泣いていた。三鷹に着いたらもう午前零時を超えていたのでコンビニでのり弁当買って帰った。

 こういう生活をしていたら風邪をこじらせてしまった。喉が痛い(なに書いてんだか)。


 Charaの新譜を流しながら書いている。今回のお題目はCharaにしても良かったんだけど、うちには前のアルバムと今回のとの二枚しかないし(ファーストはよく覚えてないし、セカンドはアレンジがごちゃごちゃしてて嫌いだったし)、どうも女の子のミュージシャンを題材にすると不必要に逆上してしまうらしいし、見送りってことで。

 しかし僕はこの手の女声ヴォーカルに徹底的に弱い。タイプとしては元・少女隊の安原麗子に近いな(少女隊はファンだったんだいっ。ライヴだって三回も観てるんだ。……やれやれ)。

 例によっていろんなミュージシャンが参加してるけど(前の『ヴァイオレット・ブルー』には遊佐“南光台の遊佐そろばん塾の長女”美森が参加してた)やっぱりハイライトは土屋<蘭丸>公平だよね。前回のストリート・スライダーズのツアーはNHKホールで観てるんだけど。なんたってスライダーズのライヴだしどうせ観に来てんのはみんなスライダーズのファンだから静かに観られるな、ひょっとすると座って観られるかな、とか思って行ったんだけど(流石にみんな立っていた)。この日は世にも珍しい「スライダーズのアンコール」ってのがあった。


 僕が十五歳の頃に一番好きだったバンドがイーグルスなんだけど、なんと再結成してアルバムを出してしまった。再結成の噂は情けないことに解散直後から何度となく出てたんだけど、ついに実現してしまった。

 下北沢に結構気に入ってるバーがある。この店の母体はインディアン・ジュエリー屋なんだけど、このバーの店内にも色々とネイティブ・アメリカンなものが飾ってあって、たいていはいつもアメリカの西のほうのロックが流れてる。そこのバーテンダー(ったって二十代前半。解散当時は小学生だよ)に教えてもらって、あわてて買いにいった(ちなみに下北沢ってのは結構凄いところで、えらくシックなのに店員が全員ZZトップのファンだったりするバーもある)。

 ともかく買って聴いてみた。あれ、こんな筈じゃ……って感じ。

 まるっきりフラメンコみたいな「ホテル・カリフォルニア」は確かに凄い。「デスペラド」も、いつ聴いてもどきどきする。なんだけど……

 何がつまらないって、新曲。これは、ただ単に、つまらない。あと、我が敬愛するドン・ヘンリーの歌う曲が、どれもこれも見事なまでにつまらない。テレビのインタヴューでジョー・ウォルシュが「今だにマジックは残ってるんだ」なんて云ってたけど、ふざけんなって。

 結構、こういうのって辛い。


 考えてみると、CAREは日本のポップ・ミュージックばかり題材にしてるから、ひょっとしたら僕はとっても邦楽に詳しい奴だと思われてるかも知れない。邦楽のCDなんてあんまり買わないんだけどね。

 糸納豆には三木さんのお手紙がよく載ってるけど、彼みたいな方と比べるとほとんど聴いてないに等しい。といっても原稿に書くようなバンドにはそれなりの思い入れがあるんだけど。

 「小沢と小山田=犬と猿」説は結構凄いかも知れない。ちなみに僕の部屋の隣に住んでいる奴(こいつと私は一時期「エレファント甲斐性ナシ」と云うフォーク・デュオを組んでギター二本で「恋とマシンガン」だの「お掃除オバチャン」だのをやっていた)は「小山田=猿」に対し「小沢=猿回し」説を採っていた。そいつに云わせると、パーフリの解散の原因は「猿回しが猿を見限った」という事になるそうで。

 『LIFE』に対しては、とりあえずのスタンダードとしてこういったアルバムは必要だな、それにしても渡辺満里奈とうまくいってんだろうなぁ、というのが僕の主な感想。スタイル・カウンシルとジャミロクワイからの剽窃(引用?)がやたらに目立つコーネリアスよりはいいんじゃないでしょうか。しかし単なる小山田のギャグだった「渋谷系」って言葉が一般名詞になってしまいましたなあ。


 書いてるうちに十一月が終わってしまった。去る日曜日に筑波サーキットに行ってバイクのレースを観てきました。「テイスト・オブ・フリーランス」って云う、カタナだのニンジャだのCB七五〇だのマッハSSだのが本気になってレースをやっちゃう、べらぼうに面白いイヴェント。前回観て病み付きになってしまった。

 今回は行くはずだった我らが族長が不参加。東北自動車道の国見の先でガードレールに突っ込んで、大腿骨骨折でベッドの上なのでした。車体価格六〇万に改造費八〇万以上のエリミネーターは復活できるのだろうか。

 しかしああいうレースで国際A級が優勝しちゃったりするのは反則だよね。六〇年代のトライアンフをかりかりにチューンしてくる五〇幾つのおっちゃんの方がよっぽどかっこいい。


 近所にとっても優秀な中古レコード屋さん(といっても僕はCDしか買わないけど)がある。日曜日になんとなく立ち寄って、いつものように一枚買ってしまった。ニコラ・ヒッチコックって云う女の子のアルバム。さっきは書かないって云ったけど、でも少し書いちゃおう。

 僕は女の子のヴォーカルに弱い。男声ヴォーカルに弱いのと別の次元で、ね。例えば、アコースティックなバックに気負いのないナチュラルな歌声が乗ってたりすると、基本的に抵抗できない。

 と云うわけでこの世で一番好きな女性ヴォーカリストはリッキー・リー・ジョーンズ。エディ・ブリッケルも好きだ(でもニュー・アルバムはいまいちだった)。全然違うけどカレン・カーペンターだって好きだ。もっと違うけどクリッシー・ハインドだって好きだぞ。大貫妙子だって……やめとこ。

 毎晩のように入り浸ってるバーがあって、そこに以前いた店員さん(素敵にカスタムした綺麗な青い火の玉カラーのZIIに乗ってて、かなり速かった)が見付けてきたミュージシャンだったんだけど。あっさりしたバック・トラックにクリアな唄声が乗ってて、こういうのってなんか寒い季節にはいいな。流行ったらしいんだけど、どうもみんな知らないみたいで、偶然見付けて衝動買いしてしまった(千円だったし)。

 声の素敵な女の子って、いいなあ。いつもそう思ってるんだけど。


 そのバーでいつもの仲間で呑んでたら、三原綱木さん(元ブルー・コメッツ、現ニュー・ブリード。十二月はいつも紅白で忙しい)が「ストーンズのチケット欲しい奴いる?」って言い出した。勿論名乗りをあげたんだけど、そしたらケイ・アンナさん(三十年ぐらい前の美少女アイドル、綱木さんの奥さん)が「しょうがないな」とか云ってる。話を聞いたら、ウドー音楽事務所の社長(ケイさん云うところの「すけべおやじ」)がケイさんを食事に誘って「ストーンズのチケット回してあげるよ」と云ったんだそうな。

 かくして我々はストーンズのチケットと引き替えに芸能人をひとり人身御供に差し出したのだった。なんてファンキーな日常。


 今回は本当に中身がない。次はもっとまともなことを書きます。この辺で。ご機嫌麗しゅう。


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