お楽しみはこれからだッ!!
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第45回 “絶対きみは大丈夫”
 掲載誌 糸納豆EXPRESS Vol.17. No.1.(通巻第33号)
 編集/発行 たこいきおし/蛸井潔
 発行日 1999/5/2


 ぱっと見、何が変わっているとかいわれてもわからないかもしれないのだが、今回の「お楽しみはこれからだッ!!」は何かが一味違う(笑)。一度コピーしてしまうと本当にわからないかもしれないのだが、この前の回(第44回。TORANU TあNUKI掲載予定)から版下の完全電脳化を達成している。今までは、テキスト部分はDTPでも枠線とタイトルロゴ、カットは全て一度プリントアウトしたテキスト版下をもとに手描きで行なっていたのだが、この版下はそれらを全てスキャナーで読み込んで完全にモニタ上のみでレイアウトを行なっている。まあ、スキャナーで読み込む前のカットは今だに手描きだったりはするのだが(笑)、野暮なことはいいっこなしよ(笑)。

 で、その記念すべき完全電脳化第2回(笑)の記念すべきテーマは、「絶対きみは大丈夫」ということで……。

「あの…
 おじいちゃんのお孫さんね、きっと、わたしのお母さんと同じお空の綺麗なところにいったんだと思います。
 お兄ちゃんがいってたんです。
 お母さん、お父さんと結婚できて幸せだったから、きっと、すごく綺麗なところにいるって。
 だから、おじいちゃんのお孫さんもすっごくすっごく綺麗なところにいると思います」
「…ありがとう」

 台詞は現在NHK衛星第2にてTVアニメ絶賛放映中のCLAMP『カードキャプターさくら』より。……っと、意味のない前振りに文章を割きすぎてスペースがないではないか(笑)。


 主人公、木之本桜は小学4年生。ひょんなことからクロウカードを守る封印の獣ケルベロスに見込まれて、封印を解かれてあちこちに散らばってしまったクロウカードを探し出して封印し直す「カードキャプター」の役目を仰せつかる。

 クロウカードはそれぞれに異なる魔力を持っていて、封印したカードに込められた魔法はさくら自身が使うことができる。

 ……要するに、「魔法少女」ものなのだが、このクロウカードの設定は、カード集めが同時にさくらの魔力のレベルアップになるというゲーム的な要素と、新たに出現するカードを手持ちのどのカードを使って封印するか、というパズル的な要素を、物語の基本骨格に盛り込むことに成功している(ま、いずれもトレーディングカード的要素ではあるな)。ヒット作品を生み出すには、というワークショップでも開くなら、ケーススタディとしては最適な作品といえよう(笑)。

 因みに、前ページの台詞はたこいが最も気に入っているエピソードより。さくらの母親はさくらが幼い頃に他界しているのだけど、もともとは名家の掌中の玉で、高校在学中に教師と大恋愛をして周囲の反対を押し切って結婚してしまったので、母方の実家とは普段は絶縁状態にある。

 夏休み、父親が知人から借りた別荘に遊びに来たさくらは、近所のとても大きな別荘で一人のおじいさんと友だちになる。さくら本人は気づかないのだけど、そのおじいさんはさくらの母親の祖父、さくらの実の曾祖父であることが、読者にはなんとなくわかるようになっている。要するにその旅行は、表立っては交流できないさくらの周囲の大人たちの粋な謀り事だった、という次第。

 で、別荘を去る日の、おじいさんへのさくらのお別れの台詞がアレなのだが、「わたしのお母さん」と「おじいちゃんのお孫さん」がイコールであると知って、おじいさんに感情移入している読者には、なかなかたまらないものがある(笑)。

 もちろん、それをいうさくらが「天然の健やかさ」を持っているからこそ、こういう一歩間違うと紙一重(笑)な台詞がきちんと効いてくるんだけどね。

「だいじょうぶ、なんとかなるよ。
 絶対だいじょうぶだよ」

 こちらは、第1部クロウカード編のクライマックスの一つ、高位カード「ダーク」の力で真の闇に閉じ込められてしまったさくらの台詞。どんなことがあっても絶対にあきらめない、他者に対して絶対にネガティブな感情を持たない、そんなさくらの「健やかさ」の、この台詞は象徴といえる。

 とはいったものの、さくらの過剰なまでの「健やかさ」に対して、さくらの周囲の人物たちは、なかなかにあやしい(笑)。さくらの兄の桃矢は中学生の頃は教育実習生と大恋愛した経験があるが、今は同級生の雪兎(さくらの想い人でもある)に一途な想いを寄せているし(笑)、魔法のライバル小狼も雪兎に夢中(笑)、さくらの同級生には先生と大恋愛している女の子なんてのもいる(笑)。

 その極めつけはさくらの大親友の知世。さくらの秘密を知ってカード集めにも協力してくれているのだが、その趣味はさくらに自分の作った「魔法少女らしい(笑)」コスチュームを着せて、その活躍をビデオに収めること(笑)。で、やはり(笑)、さくらに対して報われない想いを寄せている(笑)。

 こういうマンガが「なかよし」に連載されて、NHK(!)でアニメとして放映されているというのは、いい時代(笑)……なんだろうか(笑)。何にしても世紀末ではある(笑)。

(因みに「絶対きみは大丈夫」というフレーズの元ネタは……、敢えて明記はしないが(笑)、大槻ケンヂっていい奴だなあ、とだけいっておこう、うん(笑)。)


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