お楽しみはこれからだッ!!
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第44回 “帰ってきた帰ってきた橋本みつる”
 掲載誌 TORANU TあNUKI 221〜2??号
 (通巻第64号)
 編集/発行 渡辺英樹/アンビヴァレンス
 発行日 〔未刊行)


 唐突ではあるが、最近江國香織の『こうばしい日々』(新潮文庫版)を読んだ。この文庫版は、11歳のアメリカ生まれアメリカ育ちの日本人少年ダイの日常と初々しい恋愛を描いた「こうばしい日々」と、結婚した姉の元恋人の青年に寄せる12歳の少女みのりの切ない想いを綴った「綿菓子」のカップリングになっているんだけど、あまりのキュートさに今人にススメたくてススメたくて仕方がない状態(笑)。読んだことない人はすぐに書店に走って欲しい(笑)。

 で、その「綿菓子」を読んでいたら、13歳の女の子がもうすぐ大学生になる同級生の兄に一途な想いを寄せる、というマンガを思い出したので、今回はその話から。

「あのサ−−−っ。
 なんか俺ほだされちゃった!!」
「!」
「いや…。
 こーゆー罪悪感もなかなか悪くないな。とか」

 台詞は橋本みつるの初期短編「ごめんね好きだよ」より。発表は1989年。あ、もう10年前か(笑)。なんというか、デビューしたてらしい若描きの空気が強く感じられる初々しい作品なのであるが、独特の絵柄、構図、ナチュラルな感情などの橋本みつるの特徴は全て兼ね備えている。因みに台詞は、相手との年齢差に躊躇していた受験生の斎藤航(18)が、主人公の涼(13)のあまりの一途さにほだされてしまうというラストのくだり。

 たこいが橋本みつるにハマる原因となった記念すべき作品なので、ソニー・マガジンズには単行本への収録を切にお願いする次第である(笑)。


 さて、ここで出版社名が白泉社ではなくソニー・マガジンズであることにご注目いただきたい(笑)。花とゆめ増刊からスリップ・アウトしてレディース系セリエ・ミステリーに発表舞台を移した後、セリエ・ミステリーの休刊によって白泉社での受け皿を失ってしまっていた橋本みつるは、昨年(1998年)ソニー・マガジンズの少女マンガ雑誌別冊きみとぼくに移籍(?)し、今までにない精力的な活動を展開、今年(1999年)の1月には一部特定ファン(笑)が10年間待望し続けた初コミックス『夢を見る人』を上梓するに到った。まったく、長生きはするものである(笑)。

 因みに、きみとぼくという雑誌はよその雑誌で中堅以上の活躍をしていたある程度メジャーなマンガ家をひっぱってきて創刊された、昔でいえば角川のASUKAのような成り立ちの雑誌なのであるが、最近は藤田貴美『EXIT』の続編連載の開始など、白泉社(というか花とゆめ)系のマンガ家の受け皿になっているようである(笑)。

 にしても、橋本みつるをひっぱってくるというのはなかなかできることではない(笑)。おそらくはたこいのような橋本みつるの熱烈な信奉者が編集部にいたものと推察されるが、詳細は不明である(笑)。

 因みに、橋本みつるの移籍に関しては、おそらくは日本で唯一の橋本みつるサイトのマスターの人からメールで教えてもらった(正確には若木未生&橋本みつるサイトなのであるが(笑))。その人は、「橋本みつる」で検索をかけてうちのページを探し当ててメールをくれたとのことで(笑)、まあ、あんな駄文でもウェブに転がしておけば何かの役に立つことはあるものなのである(笑)。人はみな繋がっているのである(笑)。

「お前のせいで三日も無駄に生きたんだよ」

 台詞は、橋本みつるの最新作にして初の連載作品(といっても季刊連載だけど)『パーフェクト・ストレンジャー』より。

 主人公、五十嵐蜜の学校に転校してきた渡辺景二は奇妙な少年であったが、その正体は地球ではないどこかからやってきたストレンジャーで、不治の病にかかった地球人の少女にひたむきな愛情を注いでいる。

 景二になにかひっかかるものを感じて行動を共にしていた蜜はなりゆきのままに景二の愛する少女の最期を看取ってしまう。少女が死んだら自分も死ぬつもりでいた景二を引き留めるために(それはまた、少女の遺言でもあった)、蜜はひとつの嘘をつく。

 それから三日後、接触テレパスの能力を使って蜜の「嘘」を暴いた景二が蜜に投げつけたのがこの台詞。このひりひりした感触は、やっぱり橋本みつるならではのもの。

 因みに『パーフェクト・ストレンジャー』の最終話は冒頭部分1/3が鉛筆描きの状態で雑誌に掲載されてしまったのだが、今まで1年間に短編1〜2編、100ページ以上のマンガを描いたことのなかった人が、いきなり短編2編+長編連載合計およそ250ページもの作品を発表したのだから、このくらいの息切れ(笑)は、まあ、仕方のないところであろう(笑)。コミックスでの完全版の発表が今から待たれるところである。

 今までTT誌上でたこいがいくらほめちぎっても(笑)、当該作品を読むことが非常に困難であった橋本みつるであるが、今や、全国の心ある書店(笑)でその初コミックスを入手することが可能になった。心ある方(笑)は、すぐに書店に走って欲しい(笑)。

(そうそう、本文中では書き忘れてしまったが、今回のテーマは「帰ってきた帰ってきた橋本みつる」(笑)なので、そこんとこよろしく(笑)。)


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