お楽しみはこれからだッ!!
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第11回 “アフリカの叫び”
 掲載誌 霧笛7
 編集/発行 五×嵐耕/五×嵐耕・五×嵐宏子
 発行日 1991/8/20


 諸誌巡礼の旅を続ける“お楽しみはこれからだッ!!”連載11回はまたまた“霧笛”にやってきました。

 さて、今回のテーマは“アフリカの叫び”(笑)。

「承太郎。おれは死ぬのなんかこれっぽっちもこわくないね……。
 ふふ……。『スタンド』の能力のせいで子供のころから死の恐怖なんかまったくない性格だったよ。
 どんなヤツにだって勝てたし犯罪や殺人も平気だった………。警官だってまったく怖くなかったね………。
(中略)
 そんなおれがはじめてこの人だけには殺されたくないと心から願う気持ちになった。その人はあまりにも強く、深く、大きく、美しい………。そして、このおれの価値をこの世で初めて認めてくれた……。この人に出会うのをおれはずっと待っていたのだ。
 『死ぬのはこわくない。しかしあの人に見捨てられ殺されるのだけはいやだ』
 悪には悪の救世主が必要なんだよ。フフフフ」

 『ジョジョの奇妙な冒険』第三部、タロットの残り枚数が切れたと思ったら、とーとつに突入してしまった“エジプト9栄神編”第一の敵、ゲブ神のンドゥール最期の台詞。“愚者(ザ・フール)”のイギーなんていう訳のわかんない犬が話にからんできたせいで、対ンドゥール戦そのものは今サンくらい盛り上がらなかったんだけど、この台詞だけはちょっといいんじゃないかと思う。しかしいつになったら終わるんだろうね、このジョースター御一行様のお笑い珍道中(笑)。


 今回のテーマ、一体どの辺が“アフリカの叫び”なんだか疑問に思う方もおられるかもしれませんが、今回のテーマは、実に、そのものズバリ、“ユッスー・ンドゥール”なのでありました(笑)。

 アフリカ、セネガルのスーパー・スター、天才ヴォーカリスト、ユッスー・ンドゥールッ! これが“ゲブ神のンドゥール”の命名の由来であるのは、まあ、論を待たない(笑)。全く、荒木飛呂彦のマンガを読んでると音楽に詳しくなれちゃって(笑)、嬉しくなっちゃうね(笑)。

 ま、それは冗談にしても(笑)、冗談ついでにもう一人、ユッスー・ンドゥールと縁の深い(?)マンガ家を紹介したい。

「ねーっ。
 あたし来年からクリスマスにお酒供えんのやめんの」
「おっとさんとおっかさんのアレか?
 なんでだよ親不孝もん」
「そのかわり月見酒する。
 月見て。おじさんたちと飲んでさ。
 月って、きれいだなあと思うことにする」

 須藤真澄をご存じだろうか?

 SFマガジンには、何回かマンガを描いたことがある。“ビデオのよろこび1泊2日3なすび”という映画のイラストレビュウを半年ばかり連載したこともある。

 僕がこの人を目にとめたのは、別冊宝島『映画の見方が変わる本』に寄せられていた数点のカットだった。独特のペンタッチ、一風変わったデフォルメ、そして何よりも、描かれた女の子の妙に愁いを含んだ表情。

 その数カ月後、今度はSFMの“1泊2日〜”を見つけた。その回がたまたま僕のこよなく愛するビクトル・エリセ『エル・スール』をとりあげていたもんだから、この時点で僕の須藤真澄支持の立場は完璧なものとなってしまった(笑)。

 ただ、この時点では、須藤真澄がマンガ家だということは全然知らなかったので、三留まゆみと同じような類の人かなあ、とか思っていたのである。

 三留まゆみを知らない人には何のことだかわかんないじゃないか(笑)。

 とにかく、そんなある日、ふとした拍子に須藤真澄作品集2『子午線を歩く人』を読んだのである。これがまた“珠玉の”という古くさい表現が本当によく似合ってしまう佳品ぞろいで、僕はすっかり須藤真澄に首ったけの状態になってしまったのであった。

 台詞はこの作品集収録の短編「白い星 青い実」から。

 実は須藤真澄という人、コミックボックスに毎月連載を持っている(1991年当時)れっきとしたマンガ家だったのでありました(笑)。で、今のところ、ふゅーじょんぷろだくとから作品集が2冊。作品集1『観光王国』はどこの書店にもなかったので、近所の本屋さんで注文して取り寄せてもらってしまった。

 収録短編のテンションの高さでは、『子午線〜』の方を絶対に推す。

 あと、東京3世社マイコミックスから『電氣ブラン』という処女短編集が出ている。しかし何にしろ、マイナーな人であるのは間違いない(笑)。

 で、この須藤真澄、猫を一匹飼っているんだけど、その猫の名前が“ゆず”、と、いう。これが実に“ユッスー・ンドゥール”にちなんでつけられた名前だというのだけれど、普通“ゆず”っていったら、“柚”のことだと思うよねえ(笑)。


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