蔦温泉★★★★  


大正の文人ゆかりの温泉

■概要

蔦(つた)温泉は十和田湖から八幡平の間のぶなの原生林の中にある温泉だ。周囲はうっそうとした森で、沼が散在している。

国道から蔦温泉の案内をみて脇道に入ると、ぽっかり森が開けて蔦温泉の前に出る。池があって鯉が泳いでいる。蔦温泉の建物は森の緑に飲み込まれそうな様子で、古いがしっかりした雰囲気だ。



正面の入り口はどっしりとして、破風のかざりなど手が込んでいる。
入り口に帳場があって、宿の人はゆったりした口調で「ゆっくりしていって」と、日帰り客にも親切に案内してくれた。ここはまだ大正時代の空気が残っているようだ。



浴室は入り口から近い昔からの久安の湯(男湯のみ)と、少し奥に歩いた、新しい泉響の湯(男・女)がある。




■印象

男性用の久安の湯は、古く風情のある浴室だ。浴室のほとんどが、木の湯船になっている。材質は豊富にあるブナかもしれない。お湯は澄んでいて、ふんだんに溢れている。温度はちょうどよい。

温泉は湯船の底から涌いてくる。底の板の隙間から細かな泡が立ち上ってくる。はじめは湯船の端からお湯が注がれていると思ったけれど、それは温度調整の冷水だった。泉質はナトリウム硫酸塩炭酸水素塩塩化物泉(低張性中性高温泉)である。源泉の温度は43.8度、PH=7.24だ。

もう一ヶ所の浴室は男湯と女湯がある、泉響の湯だ。ここはまだ新しい。天井が非常に高く、3階建てが吹き抜けになっている。浴室は窓が高いところにあって、昼でも暗くしてある。写真は残念ながらうまく撮れなかった。洗い場は広い。お湯はこちらも澄んでいて、ちょうど良い温度だ。湯船は久安の湯と同くらいだろう。

泉響の湯も湯船の底から温泉が涌いている。お湯が静かにあふれて、床をあたためている。先客が湯船の縁を枕にして昼寝をしていた。ほの暗い浴室で、お湯に浸かって高い天井をずっと眺めていると、だんだん体が軽くなってくる。しばらくすると上下が分からなくなるような気がしてくる。

十和田の山奥の古い温泉は心のリゾートのひとつだと思った。お勧めする。


■所在地

青森県上北郡十和田湖町
TEL:0176−74−2311
FAX:0176−74−2244

■営業

営業時間 9:00−19:00
休館日 無休
料金 400円

交通

東北自動車道の十和田ICで降りて、国道103号線を北上する。十和田湖から国道102号線で奥入瀬川沿いに下って、焼山交差点で左折して八甲田山方向に行く。焼山から5kmほど。
駐車場は広い。



調査日:1999年8月

大町桂月

明治から大正時代の有名な作家で、全国各地の風光明媚な自然を訪れて紀行を残した。十和田湖を全国に紹介したことでも有名である。蔦温泉が気に入って最晩年にここに住んだ。墓も蔦温泉にある。

十和田湖

十和田湖は有名な青森の観光地だ。山の上からみた十和田湖のパノラマ78kBをどうぞ。

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