日景温泉★★★★


秋田杉の山中にある大きな湯治宿

■概要

10年ほど前に訪れた日景(ひかげ)温泉を再訪した。秋田県と青森県の県境である矢立峠の付近は、秋田杉の美しい山だ。峠の秋田県側、山の中に日景温泉がある。

巨大な一軒宿で、木造の建物は何回も増築されたようで、全体は複雑な形をしている。周囲は深い山、渓流にかかる橋を渡って宿に入る。ひなびた雰囲気は10年前と変わっていない。



正面入り口の左手に湯小屋がある。湯小屋は男女別にあって、その間に混浴の露天風呂がある。このほかに建物右手奥には湯治棟の日栄館がある。ここにも湯治用の浴室がある。休憩室は玄関を入って右手、薪ストープが置いてあった。



日景温泉は日本の秘湯を守る会の会員旅館だ。開業は1893年、磐梯山大爆発の地震の後に湧いた温泉を日景弁吉氏が温泉場とした。日景温泉の名前は創業者の名前にちなんでいる。

草津に似た酸性泉ということで、「三日一廻りの霊泉」と宣伝したという。湯治の普通の一廻りは7日から10日だから、3日でよいという効能を誇っている。いまでも湯治を受け入れていて、日用品を売る売店もある。



■所在地

秋田県大館市長走37 
TEL:0186−51−2011
FAX:0186−51−2013




■印象

浴室に入ると硫黄の香りがする。白濁したお湯が静かにかけ流されている。浴室の床は石畳、厚い木製の浴槽は硫黄の析出で黄色に染まっている。左手の小浴槽は浅い寝湯。

お湯はややぬるめ、硫黄の香りに包まれて、あふれるお湯が気持ちよい。お湯を飲んでみるとタマゴと強い塩味がする。

1984年の分析表が掲げてある。泉質は含硫黄−ナトリウム・カルシウム・マグネシウム−塩化物泉(硫化水素型)、源泉の温度は41.5度、成分総計10059mgである。

1956年の古い分析表も飾ってあった。泉質は含ホウ酸食塩塩化土類硫化水素泉、48度、成分総計13964mgとなっている。



男女の浴室の間が混浴の露天風呂になっている。ヨシズの目隠しがあるので展望はないが、岩が白くなって雰囲気満点だ。かなりぬるめなので長湯ができる。

玄関から右に進むと湯治棟があって、湯治部の浴室がある。こちらは男女別のシンプルな浴室だが、床は硫黄分析出で白く染まって年季が感じられる。

ひなびた温泉に入りたくて10年前に訪れた記憶が蘇ってきた。そのときとまったく変わっていない。時間が止まったような雰囲気が、かえって心を落ち着かせる。古い温泉のよさを感じさせてくれるところだ。


■営業

営業時間 8:00−21:00
休館日 無休
料金 400円

交通

東北自動車道の碇ヶ関ICで降りて、国道7号を大館市方面へ南下する。矢立峠を越え、矢立温泉道の駅を過ぎたら標識に従って右折し、山道を2kmほど。駐車場は広い。
JR奥羽本線の陣場駅から車で5分程度、無料送迎あり。



調査日:2003年11月


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