アウトラインプロセッサとは何か?


 アウトラインプロセッサには実に様々な利用法がありますが、最も主要な使われ方という観点からすると「考えをまとめる道具」、あるいは「文章を作成するツール」ということができるでしょう。「考えをまとめる道具だって? そんなものがあり得るの? 考えをまとめるのは頭の中に決っているじゃないか。」と思われた方もいるでしょう。アイデアプロセッサという言葉を初めて聞いたとき、私もそう思いました。それでもちょっと気になったものですから、「どんなものだか試してみるのもいいだろう」くらいの軽い気持ちで買ってみたのですが、これが運命的な出会いと言ってもいいほど私にとっては重要なツールでした。今では何を書くにもこれでなくては書く気がしないというくらい、必須のツールとなってしまいました。

 昔から、アイデアをまとめるための方法としては様々なやり方が工夫されてきました。「KJ法」などがよく知られていますが、それらはカードを使うことがミソでした。何でもかんでも、とにかくカードに書き付けておき、それらがある程度まとまったら同類同士をまとめたり、お互いの関係に配慮しながら机上(実際には床上!?)に平面的に配置したり重ねたりしながらその全体をまとめてゆくという手法です。これは確かに良い方法なのですが、「めんどくさい」というのが実際にやってみての感想でした。広いスペースが必要だということも欠点の一つです。また、たった一言書くだけでも大きなカードを占有してしまうのも、もったいないような気がします。おそらくそんな訳で、これを実際にやっている人はあまりいないのではないでしょうか。

 作家の安部公房さんは、コルクボードに虫ピンを立てて小説の構成を考えたようです。虫ピンには旗のように項目を書いた紙が付いているのです。それを2次元的に配置して全体の構成を考えるわけです。構成を考えるのには自由がきいて良いでしょうが、一つ一つの項目はあまり長くは書けないのが欠点です。

 しかし、これらの方法は、本質的に重要な意味を示唆しています。つまり、全ての情報は構造を持っているということ、それらを操作するには2次元平面(あるいはそれ以上)が必要だということです。

 アウトラインプロセッサは、このカード等を使って情報を整理する作業をコンピューターのディスプレイ上でできるようにしたものだということも出来ます。しかも、いくら長い文章でもタイトルだけを表示させておいてそれらを自由に移動できるのですから、最強の文書作成ツールと言っても良いでしょう。

 「文章を書くにはワープロがあるじゃないか。それ以上に何が必要なんだ?」とお思いの方もあるでしょう。確かに、ワープロは強力な道具です。それまで紙とペンでやっていた作業から較べれば革命的な飛躍と言っても良いでしょう。ワープロの一番大きなメリットは書き直しが自由に出来るということです。推敲する際にこんな便利なものはありません。また、活字と同じ美しさで印刷できるということも、私のように字の下手な者にとっては救世主的存在です。さらに、フロッピーに保存しておけば、後々ちょっとした修正だけで再利用できるというのも大きな利点です。

 このワープロによる革命を第1の革命とすれば、アウトラインプロセッサの登場は、第2の革命と言っても過言ではないと私は考えています。ちょっとした文章ならワープロでいきなり書き始めてもきちんとまとまった文章にできますが、かなり大きな文章の場合には大まかな構成や話の流れをメモ書きなどでまとめてから書き始めるのが普通です。ところがワープロを使うと、後でどうにでも変えられるという安心感からか、とにかく最初から書いてしまうという人が多いようです。それでもしっかりした文章を書ける人もいるようですが、まとまりのない文章になってしまい、あとで修正に苦慮する場合が多いものです。全体の構成を意識しないで書き始めてしまったせいか、あるいは意識したとしても、それを頭の中に保持し続けることは人間にとってかなり負担の大きいものだからでしょう。

 アウトラインプロセッサはアイデアプロセッサとも呼ばれています。それは、アウトラインプロセッサがアイデアをまとめるのに大変便利なツールだからです。アウトラインプロセッサを使えば、ごく自然に全体の構成を考えることになります。骨格がある程度まとまってから、細部を書いてゆくということがごく自然に出来るのです。また、全体の構成はどうなるかわからないが、取敢えず思い付いたことだけを書いておき、後でそれらを再構成するということもできます。この自由度の高さはまさに「快感」です。なぜこんな当たり前なことが今迄できなかったのだろうと不思議に思うくらいです。


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