障害者基本法


障害者基本法(昭和四十五年法律八十四号/施行 同五月二十一日)
改正 昭和五八法八〇、昭和六一法九三、平成五法九四

目次
 第一章 総則(第一条〜第九条)
 第二章 障害者の福祉に関する基本的施策(第十条〜第二十六条)
 第三章 障害の予防に関する基本的施策(第二十六条の二)
 第四章 障害者施策推進協議会(第二十七条〜第三十条)
 附則

 (目的)
第一条 この法律は、障害者のための施策に関し、基本的理念を定め、及び国、  地方公共団体等の責務を明らかにするとともに、障害者のための施策の基本  となる事項を定めること等により、障害者のための施策を総合的かつ計画的  に推進し、もつて障害者の自立と社会、経済、文化その他あらゆる分野の活  動への参加を促 進することを目的とする。

 (定義)
第二条 この法律において「障害者」とは、身体障害、精神薄弱又は精神障害  (以下「障害」と総称する。)があるため、長期にわたり日常生活又は社会  生活に相 当な制限を受ける者をいう。

 (基本的理念)
第三条 すべて障害者は、個人の尊厳が重んぜられ、その尊厳にふさわしい処  遇を保障される権利を有するものとする。
 2 すべて障害者は、社会を構成する一員として社会、経済、文化その他あら  ゆる分野の活動に参加する機会を与えられるものとする。

 (国及び地方公共団体の責務)
第四条 国及び地方公共団体は、障害者の福祉を増進し、及び障害を予防する  責務を有する。

 (国民の責務)
第五条 国民は、社会連帯の理念に基づき、障害者の福祉の増進に協力するよ  う努めなければならない。

 (自立への努力)
第六条 障害者は、その有する能力を活用することにより、進んで社会経済活  動に参加するよう努めなければならない。
2 障害者の家庭にあつては、障害者の自立の促進に努めなければならない。
 (障害者の日)
第六条の二 国民の間に広く障害者の福祉についての関心と理解を深めるとと  もに、障害者が社会、経済、文化その他あらゆる分野の活動に積極的に参加  する意欲を高めるため、障害者の日を設ける。
2 障害者の日は、十二月九日とする。
3 国及び地方公共団体は、障害者の日の趣旨にふさわしい事業を実施するよ  う努めなければならない。

 (施策の基本方針)
第七条 障害者の福祉に関する施策は、障害者の年齢並びに障害の種別及び程  度に応じて、かつ、有機的連携の下に総合的に、策定され、及び実施されな  ければならない。

 (障害者基本計画等)
第七条の二 政府は、障害者の福祉に関する施策及び障害の予防に関する施策  の総合的かつ計画的な推進を図るため、障害者のための施策に関する基本的  な計画(以下「障害者基本計画」という。)を策定しなければならない。
2 都道府県は、障害者基本計画を基本とするとともに、当該都道府県におけ  る障害者の状況等を踏まえ、当該都道府県における障害者のための施策に関  する基本的な計画(以下「都道府県障害者計画」という。)を策定するよう  努めなければならない。
3 市町村は、障害者基本計画(都道府県障害者計画が策定されているときは、  障害者基本計画及び都道府県障害者計画)を基本とするとともに、地方自治  法(昭和二十二年法律第六十七号)第二条第五項の基本構想に即し、かつ、  当該市町村における障害者の状況等を踏まえ、当該市町村における障害者の  ための施策に関する基本的な計画(以下「市町村障害者計画」という。)を  策定するよう努めなければならない。
4 内閣総理大臣は、関係行政機関の長に協議するとともに、中央障害者施策  推進協議会の意見を聴いて、障害者基本計画の案を作成し、閣議の決定を求  めなければならない。
5 都道府県は、都道府県障害者計画を策定するに当たつては、地方障害者施  策推進協議会の意見を聴かなければならない。地方障害者施策推進協議会を  設置している市町村が市町村障害者計画を策定する場合においても、同様と  する。
6 政府は、障害者基本計画を策定したときは、これを国会に報告するととも  に、その要旨を公表しなければならない。
7 都道府県又は市町村は、都道府県障害者計画又は市町村障害者計画を策定  したときは、その要旨を公表しなければならない。
8 第四項及び第六項の規定は障害者基本計画の変更について、第五項及び前  項の規定は都道府県障害者計画又は市町村障害者計画の変更について準用す  る。

 (法制上の措置等)
第八条 政府は、この法律の目的を達成するため、必要な法制上及び財政上の  措置を講じなければならない。

 (年次報告)
第九条 政府は、毎年、国会に、障害者のために講じた施策の概況に関する報  告書を提出しなければならない。

   第二章 障害者の福祉に関する基本的施策

 (医療)
第十条 国及び地方公共団体は、障害者が生活機能を回復し、又は取得するた  めに必要な医療の給付を行うよう必要な施策を講じなければならない。
2 国及び地方公共団体は、前項に規定する医療の研究及び開発を促進しなけ  ればならない。

 (施設への入所、在宅障害者への支援等)
第十条の二 国及び地方公共団体は、障害者がその年齢並びに障害の種別及び  程度に応じ、施設への入所又はその利用により、適切な保護、医療、生活指  導その他の指導、機能回復訓練その他の訓練又は授産が受けられるよう必要  な施策を講じなければならない。
2 国及び地方公共団体は、障害者の家庭を訪問する等の方法により必要な指  導若しくは訓練が行われ、又は日常生活を営むのに必要な便宜が供与される  よう必要な施策を講じなければならない。
3 国及び地方公共団体は、障害者の障害を補うために必要な補装具その他の  福祉用具の給付を行うよう必要な施策を講じなければならない。
4 国及び地方公共団体は、前三項に規定する指導、訓練及び福祉用具の研究  及び開発を促進しなければならない。

 (重度障害者の保護等)
第十一条 国及び地方公共団体は、重度の障害があり、自立することの著しく  困難な障害者について、終生にわたり必要な保護等を行うよう努めなければ  ならない。

 (教育)
第十二条 国及び地方公共団体は、障害者がその年齢、能力並びに障害の種別  及び程度に応じ、充分な教育が受けられるようにするため、教育の内容及び  方法の改善及び充実を図る等必要な施策を講じなければならない。
2 国及び地方公共団体は、障害者の教育に関する調査研究及び環境の整備を  促進しなければならない。

第十三条 削除

 (職業指導等)
第十四条 国及び地方公共団体は、障害者がその能力に応じて適当な職業に従  事することができるようにするため、その障害の種別、程度等に配慮した職  業指導、職業訓練及び職業紹介の実施その他必要な施策を講じなければなら  ない。
2 国及び地方公共団体は、障害者に適した職種及び職域に関する調査研究を  促進しなければならない。

 (雇用の促進等)
第十五条 国及び地方公共団体は、障害者の雇用を促進するため、障害者に適  した職種又は職域について障害者の優先雇用の施策を講じなければならない。 2 事業主は、社会連帯の理念に基づき、障害者の雇用に関し、その有する能  力を正当に評価し、適当な雇用の場を与えるとともに適正な雇用管理を行う  ことによりその雇用の安定を図るよう努めなければならない。
3 国及び地方公共団体は、障害者を雇用する事業主に対して、障害者の雇用  のための経済的負担を軽減し、もつてその雇用の促進及び継続を図るため、  障害者が雇用されるのに伴い必要となる施設又は設備の整備等に要する費用  の助成その他必要な施策を講じなければならない。

 (判定及び相談)
第十六条 国及び地方公共団体は、障害者に関する各種の判定及び相談業務が  総合的に行われ、かつ、その制度が広く利用されるよう必要な施策を講じな  ければならない。

 (措置後の指導助言等)
第十七条 国及び地方公共団体は、障害者が障害者の福祉に関する施策に基づ  く各種の措置を受けた後日常生活又は社会生活を円滑に営むことができるよ  う指導助言をする等必要な施策を講じなければならない。

 (施設の整備)
第十八条 国及び地方公共団体は、第十条第二項、第十条の二第一項及び第四  項、第十二条並びに第十四条の規定による施策を実施するために必要な施設  を整備するよう必要な措置を講じなければならない。
2 前項の施設の整備に当たつては、同項の各規定による施策が有機的かつ総  合的に行なわれるよう必要な配慮がなされなければならない。

 (専門的技術職員等の確保)
第十九条 前条第一項の施設には、必要な員数の専門的技術職員、教職員その  他の専門的知識又は技能を有する職員が配置されなければならない。
2 国及び地方公共団体は、前項に規定する者その他障害者の福祉に関する業  務に従事する者及び第十条の二第三項に規定する福祉用具に関する専門的技  術者の養成及び訓練に努めなければならない。

 (年金等)
第二十条 国及び地方公共団体は、障害者の生活の安定に資するため、年金、  手当等の制度に関し必要な施策を講じなければならない。

 (資金の貸付け等)
第二十一条 国及び地方公共団体は、障害者に対し、事業の開始、就職、これ  らのために必要な知識技能の習得等を援助するため、必要な資金の貸付け、  手当の支給その他必要な施策を講じなければならない。

 (住宅の確保)
第二十二条 国及び地方公共団体は、障害者の生活の安定を図るため、障害者  のための住宅を確保し、及び障害者の日常生活に適するような住宅の整備を  促進するよう必要な施策を講じなければならない。

 (公共的施設の利用)
第二十二条の二 国及び地方公共団体は、自ら設置する官公庁施設、交通施設  その他の公共的施設を障害者が円滑に利用できるようにするため、当該公共  的施設の構造、設備の整備等について配慮しなければならない。
2 交通施設その他の公共的施設を設置する事業者は、社会連帯の理念に基づ  き、当該公共的施設の構造、設備の整備等について障害者の利用の便宜を図  るよう努めなければならない。
3 国及び地方公共団体は、事業者が設置する交通施設その他の公共的施設の  構造、設備の整備等について障害者の利用の便宜を図るための適切な配慮が  行われるよう必要な施策を講じなければならない。

 (情報の利用等)
第二十二条の三 国及び地方公共団体は、障害者が円滑に情報を利用し、及び  その意思を表示できるようにするため、電気通信及び放送の役務の利用に関  する障害者の利便の増進、障害者に対して情報を提供する施設の整備等が図  られるよう必要な施策を講じなければならない。
2 電気通信及び放送の役務の提供を行う事業者は、社会連帯の理念に基づき、  当該役務の提供に当たつては、障害者の利用の便宜を図るよう努めなければ  ならない。

 (経済的負担の軽減)
第二十三条 国及び地方公共団体は、障害者及び障害者を扶養する者の経済的  負担の軽減を図り、又は障害者の自立の促進を図るため、税制上の措置、公  共的施設の利用料等の減免その他必要な施策を講じなければならない。

 (施策に対する配慮)
第二十四条 障害者の福祉に関する施策の策定及び実施に当たつては、障害者  の父母その他障害者の養護に当たる者がその死後における障害者の生活につ  いて懸念することのないよう特に配慮がなされなければならない。

 (文化的諸条件の整備等)
第二十五条 国及び地方公共団体は、障害者の文化的意欲を満たし、若しくは  障害者に文化的意欲を起こさせ、又は障害者が自主的かつ積極的にレクリエ  ーションの活動をし、若しくはスポーツを行うことができるようにするため、  施設、設備その他の諸条件の整備、文化、スポーツ等に関する活動の助成そ  の他必要な施策を講じなければならない。

 (国民の理解)
第二十六条 国及び地方公共団体は、国民が障害者について正しい理解を深め  るよう必要な施策を講じなければならない。

   第三章 障害の予防に関する基本的施策

第二十六条の二 国及び地方公共団体は、障害の原因及び予防に関する調査研  究を促進しなければならない。
2 国及び地方公共団体は、障害の予防のため、必要な知識の普及、母子保健  等の保健対策の強化、障害の原因となる傷病の早期発見及び早期治療の推進  その他必要な施策を講じなければならない。

   第四章 障害者施策推進協議会

 (中央障害者施策推進協議会)
第二十七条 厚生省に、中央障害者施策推進協議会(以下「中央協議会」とい  う。)を置く。
2 中央協議会は、次に掲げる事務をつかさどる。
 一 障害者基本計画に関し、第七条の二第四項に規定する事項を処理するこ   と。
 二 障害者に関する基本的かつ総合的な施策の樹立について必要な事項を調   査審議すること。
 三 障害者に関する施策の推進について必要な関係行政機関相互の連絡調整   を要するものに関する基本的事項を調査審議すること。
3 中央協議会は、前項に規定する事項に関し、内閣総理大臣、厚生大臣又は  関係各大臣に意見を述べることができる。

第二十八条 中央協議会は、委員二十人以内で組織する。
2 中央協議会の委員は、関係行政機関の職員、学識経験のある者、障害者及  び障害者の福祉に関する事業に従事する者のうちから、厚生大臣の申出によ  り、内閣総理大臣が任命する。
3 中央協議会に、専門の事項を調査審議させるため、専門委員を置くことが  できる。
4 中央協議会の専門委員は、学識経験のある者、障害者及び障害者の福祉に  関する事業に従事する者のうちから、厚生大臣の申出により、内閣総理大臣  が任命する。
5 中央協議会の専門委員は、当該専門の事項に関する調査審議が終了したと  きは、解任されるものとする。
6 中央協議会の委員及び専門委員は、非常勤とする。

第二十九条 前二条に定めるもののほか、中央協議会に関し必要な事項は、政  令で定める。

 (地方障害者施策推進協議会)
第三十条 都道府県(地方自治法第二百五十二条の十九第一項の指定都市(以  下「指定都市」という。)を含む。以下同じ。)に、地方障害者施策推進協  議会を置く。
2 都道府県に置かれる地方障害者施策推進協議会は、次に掲げる事務をつか  さどる。
 一 当該都道府県における障害者に関する施策の総合的かつ計画的な推進に   ついて必要な事項を調査審議すること。
 二 当該都道府県における障害者に関する施策の推進について必要な関係行   政機関相互の連絡調整を要する事項を調査審議すること。
3 都道府県に置かれる地方障害者施策推進協議会の組織及び運営に関し必要  な事項は、条例で定める。
4 市町村(指定都市を除く。)は、当該市町村における障害者に関する施策  の総合的かつ計画的な推進について必要な事項及び障害者に関する施策の推  進について必要な関係行政機関相互の連絡調整を要する事項を調査審議させ  るため、条例で定めるところにより、地方障害者施策推進協議会を置くこと  ができる。

   附 則    抄(平成五年法律第九十四号関係分)

 (施行期日)
1 この法律は、公布の日から施行する。ただし、目次の改正規定(「心身障  害者対策協議会」を「障害者施策推進協議会」に改める部分に限る。)、第  七条の次に一条を加える改正規定、第四章の章名の改正規定、第二十七条の  前の見出し並びに同条第一項及び第二項の改正規定、第二十八条第二項及び  第四項の改正規定、第三十条の改正規定並びに次項から附則第四項までの規  定は、公布の日から起算して六月を超えない範囲内において政令で定める日  から施行する。

 (経過措置)
2 第七条の次に一条を加える改正規定の施行の際現に策定されている障害者  のための施策に関する国の基本的な計画であって、障害者の福祉に関する施  策及び障害の予防に関する施策の総合的かつ計画的な推進を図るためのもの  は、この法律による改正後の障害者基本法の規定により策定された障害者基  本計画とみなす。

 (地方自治法の一部改正)
3 地方自治法(昭和二十二年法律第六十七号)の一部を次のように改正する。   別表第七中「地方心身障害者対策協議会」を「地方障害者施策推進協議会」  に、「心身障害者対策基本法」を「障害者基本法」に、「第三十条第一項」  を「第三十条第二項」に、「心身障害者」を「障害者に関する施策の総合的  かつ計画的な推進について必要な事項及び障害者」に、「連絡調整に関する」  を「連絡調整を要する事項の調査審議に関する」に改める。

 (総理府設置法の一部改正)
4 総理府設置法(昭和二十四年法律第百二十七号)の一部を次のように改正  する。
  第四条第二号の次に次の一号を加える。
  二の二 障害者基本法(昭和四十五年法律第八十四号)第七条の二第四項    の規定に基づき、障害者のための施策に関する基本的な計画の案を作成    すること。


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