Hide美人画研究所
荘厳の聖母:ウフィツィ美術館部分 ビザンチン様式の女性像:12世紀
- これ美人画ですか?所長・・。
* 美人画。 だから、ここでは女性像を美人画っていうって決めたでしょ、最初に。
- そうでした。聖母子像ですね。祭壇画の。
* うん。聖母が玉座に座ってる絵をイタリア語で「マエスタ」と言うんだけどそれだね。マエスタとは荘厳とか威厳とかの意味だ。つまりえらいってことだ。イタリアで先生のことを「マエストロ」っていうんだけど、ま、そういうことだね。
- ところでだれの作品なんですか?
* チマブーエだ。結構有名なんだけど聞いたことない?イタリアのトスカーナ地方を中心に活躍した画家だよ。ピサの大聖堂のモザイク画等もてがけたりしたんだ。彼はルネサンスの先駆けとして重要視されている。当時も大人気画家で名声を思うままにしたらしい。かのジオットの師匠だという説もある。しかしいかんせん資料が少ないんだよねえ。
- ルネサンスの先駆けですか。そういえば聖母の表情は中世ビザンチンのような固さは無いですね。なんかやわらかくほほ笑んでいるようです。
* そのとうりだ。この祭壇画は1270年ころのものと推定されるが、上右図の当時主流だったビザンチン様式の絵を見てごらん。無表情で近づきがたい感じがするだろう。それにひきかえチマブーエの聖母(中央図)はどうだろう!彼女のほほ笑みは明らかに豊かな人間性を表出している。それにマリアの座ってる玉座も遠近法的処理をされていて立体的でリアルなんだ。装飾性から脱却を始めている。それにしても彼のマリアはなんておだやかな慈愛に満ちた顔をしているんだろう!よっく見てみなさい。こわくないだろ。なごんでくるだろ。
- ふわぁ、ほんとだぁ。なんだか安らいできましたぁ・・。
* おい、しっかりしろ。寝るな。
- じょうだんですよ、そんなわけないでしょ。
* おっ、高慢な態度だな。そんなことでは君もチマブーエと同じように「煉獄」に落ちるぞ。
− はぁ??
* さっきチマブーエは結構有名だって言ったろ?どうしてかというと、ダンテの「神曲」の中にチマブーエのことが出てくるんだよ。だから知ってる人が多いんだ。引用すると、
「チマブーエは絵画界で王座を占めたと思っていたが、いまではジオットが名声を得た、ために前者の影は薄れてしまった。」(煉獄編第十一歌)
そしてこの詩は高慢な者の落ちる煉獄編に詠われているってわけ。たしかにチマブーエは有名画家であることを自負してて、だいぶ高慢な態度の人だったらしいんだ。ダンテとチマブーエとジオットは同時代の同郷人だから、ダンテの言葉は信憑性がたかいぞ。
- ああ、でもダンテのせいでへんなふうに有名になっちゃいましたねチマブーエさんは。ジオットのほうがすごい、なんて。まったくかわいそうに。同情しますよ。
* おっ、一度は煉獄に落ちるかと思われた君にも救いの道が開かれそうだな。
- へっへっ、私のおかげでチマブーエの格もあがろうってもんだぜ・・
* ・・煉獄行き決定みたいだな・・・・。
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