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少年サッカー指導コラム


審判講習会でのルールの揚げ足取り


 皆さん、大変ご無沙汰しておりました。コラムを久々に掲載させていただきます。
 まず、始めにですが、こうして間が開いてしまったことについて、お詫びと、少々の弁明をさせていただければと思います。
 実は、私、昨年(2001年)9月に結婚しまして、その前3月のプロポーズくらいまで、結婚に向けての交際で、正直このホームページの更新にまで手が及びませんでした。その後も、挙式に向けての準備と、自分の本業、そして少年サッカーチームでの本来の指導(昨年から監督に就任)などから、ホームページに関することとしては、いただいたメールに対して時折ご返事差し上げる程度で、メールをいただいた皆様には本当にご迷惑をおかけいたしました。リンクのご案内などもいただきながら、こちらでは、更新さえできず、改めて、この場を借りて、お詫び申し上げます。

 さて、本題に入りましょう。昨年3月のことでしたが、私は3級の審判資格の更新のため、審判講習会に出席しました。その場で起こった、少々滑稽な、そして悲しいというか寂しいというか、そういう出来事についてお話いたします。
 講習会は非常に内容の濃いものでした。ビデオにてジャッジの解釈や判断について分析したり、説明したりと、私としては改めてルールを確認でき、新鮮ささえ感じられました。また、ルール改正の内容についても説明があり、それが確認できた点も大変有意義でした。
 ところが、その最後の質疑応答でその変な出来事が起こってしまったのです。もう、1年近く前のことなので、内容も忘れかけているので、具体的には説明しません。

 それでも説明しますと・・・、講義中に、コーナーキック後、最初にボールに触れた時点でのオフサイドの解釈について説明があったのですが、最後にまたそのことについていろいろ講師側とやり取りをはじめてしまったのです。守備側の選手全員が、グランド外に出ることで、オフサイドラインが変わって、コーナーキック後2番目にボールに触れる攻撃側の選手をオフサイドにできるのでは、というような内容のものだったかもしれません。まあ、非紳士的行為で全員が警告を受けて、作戦としては2回目で全員退場、その場で試合終了ということなのですが・・・。

 内容はこのくらいにして、このやり取りがあまりにも長くなりそうなので、受講者の中から、「それは講義終了後に講師と直接お話いただけませんか」という意見が出てきたのですが、その当事者の方からの答えが、「いや、それはできないですよ。だって、将来的にサッカーの戦術が変わる可能性だってあるんですよ!!」というような感じの勢いだったのです。言い方は正確にお伝えしていないかもしれませんが、本人の言い分は明らかにこういう様な内容であったと思います。

 この当事者の方ですが、着ていたウインドブレーカーの背中に、北信越の協会に関係するようなものがプリントされていただけに、私はもうびっくりしてしまいました。こういう方が、もしも県内でサッカーの指導にあたっているのだとしたら・・・。さらに私はそう考えるとぞっとしてしまいました。ルールの解釈を、まるで重箱の隅をつつくようにして、そこまでしてチームが勝つような戦術を取りたい・・・もう本末転倒としか言い様がなかったのが正直な感想でした。
 サッカーの楽しさって何なのでしょう。本当に勝つことだけが楽しいのでしょうか?姑息な手段を用いてまでして勝つようなチームを見るより、私は華麗なテクニックや、フェイント・ドリブル、1本のすばらしいスルーパスを見せてくれる選手のいるチームの方が私は見たいです。それで勝てるなら、なお楽しい。でも、それを表現できるよう努力せずに、ただ勝とうとする、勝たせようとする、そういうチーム関係者がまだまだこの県内には多いのだろうか・・・そんな疑問を抱いてしまいました。ああこれでは、見ていてワクワクするような選手はこういう人たちによって潰されていくのだろうか・・・という虚しささえ感じていたのでした。

 プロフェッショナル以外の試合でも、審判問題が取り沙汰されることがよくありますが、少年でも見られることがあります。昨年末某新人戦の決勝でも、主審が誰なのかについてクレームが入ったようですが、そこまでして勝利至上主義になることが果たしていいのでしょうか?私は子どもたちにはミスジャッジには絶対抗議しないよう説明しています。そのうえで、そのミスジャッジを乗り越えて自分たちでいいサッカーを表現し、その結果としてレフェリーに「(技術的にも、スポーツマンシップとしても)いいチームだね」と評価してもらえるようなチーム、選手になろう、と話しました。子どもたちも、父兄も、敗戦理由を他に転嫁したくなるのは当然のことです。でも、それを直視せず、自らの力で切り開くことをやめてしまったら、そこに進歩はありません。仮に努力を始めても、転嫁していた時間だけ、進歩へのスタートは遅れているのです。もうひとつ上のレベルを目指し、気持ちを切り替えていくことがこの年代では大切なのではないかと考えます。

 少年サッカーにかかわる指導者も、選手である少年たちも、ルールを知ることは大切ですが、必要以上にルールに拘ってしまうと、どうやら勝利至上主義にはまってしまう可能性があるようです。子どもたちがサッカーを楽しむこと、いいテクニックが発揮できるようにしてあげることを指導者は忘れてしまわぬよう、注意していかなければならないでしょう。

 次回は県内で優勝するチームと全国レベルとの比較をしてみたいと思います。

 この後、ご本人から正式な弁明のメールを頂戴しました。上記のルールの解釈については、ご本人にとってどうしてもわからない点であったため、極端な例を挙げた上で、きちんと解決を図りたいがための行動であったということ、その上であのような結果に到ってしまったこと、「揚げ足取り」といわれるような悪意は全くなかったということ、などをご説明いただきました。

 また、少年の指導育成の立場として、子どもたちがサッカーを楽しむということ、勝利至上主義ではなく、子どもたちの大きな成長を期待して技術向上に尽くしていくことなどは私同様に強く思っていることだというお話も頂戴しました。

 この場を借りて、今後の指導者としての更なる成果、長野県サッカーの発展に尽力されることを御祈念申し上げます。


コラム2002年1月17日 審判講習会でのルールの揚げ足取り

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