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勘違いをするんぢゃない

長い手足を揺らせて
わたしのため……
何をしてくれるのか言って
薄い胸板の裏に
わたしのため……
何か隠してるのに

 

若さが犯した過ち
認めてあげないわ
息を潜めているうち
あなたは消えるわ

 

「勘違いをするんぢゃない」
つらい言葉だけ残して

 

知らない人に優しい
あなたのため……
わたしも深入りなどしない
気紛れ・ひとり善がりの
あなたのため……
予報官が欲しい

 

浮気な人は情緒も
どこかがおかしいわ
いくら窘めてみせても
あなたは逃げるわ

 

「勘違いをするんぢゃない」
つらい言葉だけ残して

 

「勘違いをするんぢゃない」
つらい言葉だけ残して

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飛行機

窓から外が見えるうち
用意を終えてしまいたい
加速と離陸・沈む街
楽しんでくれ,ぼくくらい

重苦しい飛行機すら空を飛ぶ
重苦しい飛行機さえも飛ぶ

 

身軽にしてるぼくだから
長く浮かんでいられたら

 

何だかみんな上品を
気取るみたいでおかしいね
そっとはしゃいでいるぼくを
子供っぽいと思うかね

 

重苦しい飛行機すら空を飛ぶ
重苦しい飛行機さえも飛ぶ

 

ちょっぴり
虫歯が痛くなるけれど
あなたと窓を越して見る
白い波頭とアイランド
取るに足らないものになる
置いてきたものは皆

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炎のダンス

炎のダンス
自己崩壊のダンス
純粋なほどに跡形もない

 

きれいなマッチ
裂けたダンボールから
新しい世界が開けるのなら

 

赤いフィルタを透かす街並みは
きっとわたしを優しく包むでしょう

 

こうしてわたしはおとなを止めた
ガソリンの匂い纏わせて

 

炎のダンス
自己崩壊のダンス
あの人が救いに来てくれるわ

 

近づくサイレン
嬉しさもあるかしら
自らの職務を全うして

 

弥次馬連中
話の種になると
退屈な毎日を忘れに来る

 

丸い月を煙らせる街並みは
些細なことを隠してくれるのでしょう

 

こうしてわたしはおとなを止めた
眠るのが惜しくなるように

 

炎のダンス
自己崩壊のダンス
あの人は救いに来るはずだわ

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ちょっと弱い彼

早い時刻はほんと
苦手なのね
ごめんなさい
息を弾ませないで
喘息には
悪い季節

 

ブルゾンのポケットに
宝物を
隠すみたい
歩くのだけは妙に
速い人ね
腕組ませて

 

春が近いと思うから
あなたも雪を踏んで居る

 

子供扱いしたら
許さないと
言ってるのに
頭を軽く撫でた
あやすように
試すように

 

低い気温と湿度では
あなたは少し苦しさう

 

遠回りを嫌って
アーケイドを
斜に折れる

 

助手席に膨らんで
キイを投げて
寄越すあなた
心配しないで良い
今夜からは
付いてたげる

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フェアぢゃない

地下鉄の駅に立ちきみを待てば
涼しさも立ち上がるやう
半袖ぢゃ無理のある季節だもの
きみが早く来ると良いのに

外の客を従へ
きみは供付きの姫みたい

ぼくよりも夏らしい服を着てる
胸元を覗いてごめんね

ぼくの部屋散らかしてあるんだってば
ちゃんと断わってただらう
フェアぢゃない態度だよ呆れてるの
きみが言ひ出したことなのに

ぼくに買ひ物させて
きみは電話をしてたみたい

それとこれこれとあれぼくのネタ本
貸してあげられないごめんね

ぼくの部屋時計がむっつもあるけど
きみはどれにも目を向けない

見ない振りした

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おとなはやだね

ぐづぐづしてたから
陽が傾いてゐる
向かふに着いてすぐ
Check-inかな

単車で行かうよと
きみは言ったけれど
タイヤが持たないよ
おカネないんだ

フォームで電車を待ってる束の間
ぼくのたばこを取りあげて吸った

そろそろ良いか
なんて思ってる
そんな手に
そんな手に
乗るもんかい

荷物は預けてさ
また外へ出たんだ
急いで誰そ彼る
コトもないだらう

知ってゐるよきみの
Kissが高いってこと
伝統的な女
脈打たせてる

防波堤の上歩いてるとき
よろける仕種がちょっとやらしかった

そろそろ良いか
なんて謀ってる
そんな手に
そんな手に
乗るもんかい
乗るもんかい
乗るもんかい

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天の声

坂の上にきみを見掛け急ぎ足
一年ぶん汗を掻いて息切らし
登り詰めてきみの姿もとめれば
路地の角を曲がる背中みえただけ

今度うまくやれと天の声
つまり運がないのサ
きみの長い髪を捕まへて
肩を抱いて頬にキスを
したいから

銀行の引き出しのとこ雨宿り
行列から合図しても空回り
金を下ろしきみの姿もとめれば
手をかざし駆け出す背中みえただけ

諦めたらどうだいと天の声
つまり縁がないのサ
きみの長い髪を捕まへて
肩を抱いて頬にキスを
したいのに

諦めたらどうだいと天の声
つまり意気地ないのサ
きみの長い髪を捕まへて
肩を抱いて頬にキスを
したいんだ

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近づきたい

雲の切れ間に
光が滑りこんで
見る見るうちに
路面を白く変へ

今朝は雨模様,薄寒くても
半袖で来てれば今の気持ちにもっと
近づけた気がする

今朝は雨模様,薄寒くても
半袖で来てれば今の気持ちにもっと
近づけた気がする

抑へて走る
葛折れの峠は
小舟を揺する
さざなみを思はせ

ステレオを止めて窓を閉ざして
音を無くせたなら今の気持ちにもっと
近づける気がする
近づける気がする

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花火

窓際のテイブル
和らいだ光を
受けて話してゐると
また判らなくなる

花火を見に行った
人込みの河原で
温かい頬に触れて
痺れてた日を思ひ

零した水を延べ
行くなと書けば済む
どうしてぼくはぼくの未来に自信がない

「辛抱強いのは
いいことなんでせう」
まだ何年か余裕
あると言ひたさうな

不意に雨と変はり
人込みの散る中
取り込みたいと強く
抱き締めた日を思ひ

零した水の跡
ウエイトレスが拭いた
どうしてぼくはきみの未来に割り込めない

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all words written by nii. n