目次

恋は焦らず

冷えた缶コーラ
持て余してたら
勿体ないワと
あなたが空にした

用意周到な
ぼくが好きな女
誘い出したときに
見抜いていたんだ

人影たえるのを恐れてる
この道いかがわしくはないよ
夏に向かって
恋は焦らず

街のざわめきを逃れて
明日になるまで歩こう
白い歩道に街路燈
舞台造りを頼もう

ワイン飲んだから
警戒したかしら
もうひと息だと
あなたも思った

詰めが甘いって
言われるぼくだって
ここまで来たんだ
協力しておくれ

汗ばむ上着を脱いでいる
あなたは着痩せすると気付いた
夏に向かって
恋を進める

青い公園を廻って
明日になるのを待ってよう
星の降る夜に飛行燈
ムード造りを頼もう

街のざわめきを逃れて
青い公園を廻って
星の降る夜に飛行燈
ムード造りを頼もう

目次][UP

あすなろ

茜さす
夕陽の中ふたりきり
どうすれば
あなたから
答へを引き出せるでせう

ひもすがら
覆ってゐた叢雲は
蕩蕩と
来る風に
流されてしまひました

心から
望むことはいつの日か
すべてを
輝かせ
わたしの手に宿るでせう

それからきっとわたしは
あなたの内の焔を守りつ
悪しき者の後ろに
架かる虹の向かうを見るでせう

白栲の
袖を引いて行きながら
どうしても
言ひ出せぬ
言葉をまた飲みました

せせらぎや
芽吹く前の木木たちも
遠くある
吊り橋の
車の列もみんな
夢のやうです

恐怖
不安
嫉妬
憂苦
懊悩
恋慕
好意
懸想
親炙
欣幸
怨嗟
欺瞞
愁訴
焦慮
悔恨
安堵
畏敬
至誠
自足
愛染

心から
望むことはいつの日か
すべてを
輝かせ
わたしの手に宿るでせう

心から
望むことはいつの日か
すべてを
輝かせ
わたしの手に宿るでせう

心から
望むことはいつの日か
すべてを
輝かせ
わたしの手に宿るでせう

心から
望むことはいつの日か
すべてを
輝かせ
わたしの手に宿るでせう

いついつの日か

目次][UP

WANDERER

こんな時間に開いてるのは
ろくな店ではないだろう
覗いていく素振りも
見せないのが肝心

夜汽車を見下ろす
満ち足りた月が
光と冷たさ
振りまいてる

歩道を滑りゆく
間延びした影よ
あの人のそれが
恋しいか

厭な奴ならいつだって
どこに行こうと居るだろう
距離を取ればどちらも
安全とは言えまい

好きなだけ飛ばす
ソアラのライトが
対向車のない
カーヴを測る

歩道を滑りゆく
間延びした影よ
あの人のそれが
恋しいか

好きなだけ飛ばす
コスモのライトが
対向車のない
カーヴを測る

歩道を滑りゆく
間延びした影よ
あの人のそれが
恋しいか

目次][UP

遣りきれない

セメント坂道を昼下がり
焼かれつつ歩く
遣りきれないのは暑さより
きみの止め方

友達の恋人と知らず
抱き締めた両腕を悔みたい

ひとりきり先に逝くなんてさ
あああん
あああん
あああんあん
ああん

初めて喪服着け数珠握り
きみん家の座敷
遣りきれないのは暑さより
御尊父の涙

友達の恋人と言へず
押し付けた唇を恨みたい
あれは事故だよね,さう思ふよ
ずるい
ずるい
ずるい
ずるい

おしまひに逢ったとき着てた
ワンピースの柄を憶えてる

友達はきっと知らない
あああん
あああん
あああんあん
ああん
あああん
あああん
あああんあん
ああん

目次][UP

桟橋の上,グラフィックなシーサイド

桟橋の上
グラフィックなシーサイド
桟橋の上
グラフィックなシーサイド

なのに

照り返し
サングラスと薄いシャツで
繰り返し
竿を投げて釣りに夢中で

ねえ
ひとりにしないでよ
ひとりだけずるいよ
眩し過ぎて金色
本も読めない
これ週末?
これ夏休み?

桟橋の上
Graphicなseaside
桟橋の上
Graphicなseaside

なのに

昼下がり
今朝のヨットが帰り着いて
首飾り
知らぬ女が薄く笑ってて

ねえ
ひとりにしないでよ
ひとりだけずるいよ
ふたり海に行かうって
こんなことなの
これ週末?
これ夏休み?

桟橋の上
Graphicなseaside
桟橋の上
Graphicなseaside

桟橋の上
グラフィックなシーサイド
桟橋の上
グラフィックなシーサイド

目次][UP

間抜けなクリスマス

腕を組んでぼんやり突っ立つ
わたしの手を握ればいいのに

外の誰かが来るまでそうして
莫迦面さげていればいいんだわ

あなたにだけ
早めの
時刻を
教えたのよ
今日は

間抜けなヒトだわ
クリスマスに
仕事の仲間と
過ごすなんて

いつもわたしを構ってくれる
気持ちが解らないぢゃないのよ
早くイイヒト見つけなさいと
意地悪いうとブルー入った

ごめんなさい
試した
みたいで
チャンスなのよ
今日は

誘ってちょうだい
忘年会は
一次会で帰る
振りするのよ

間抜けなヒトだわ
クリスマスに
仕事の仲間と
過ごすなんて

目次][UP

涼しいね(だから次の日,熱を出した)

待ち合はせの駅から
雨は止み始めてた
大きな傘でも差し掛けたなら
背丈が違ひ過ぎて

和菓子屋に立ち寄って
鹿子と薯蕷ふたつ
小さな包みを抱へる姿
何だか似合った

旧いお屋敷の庭をぐるりと周る
遊歩道のたたずまひ
百年前と同じだった

髪を掻き上げ
耳が見えたとき不意に雲がとぎれ
木木とベンチと池と笑顔とがみんな輝いてゐる

夕べ考へておいた
話は盡きたけれど
困らなくて良い,肩を並べて
ゆっくり歩いてゐる

好きなやうに生きたいな
好きな人と生きたいな
胸の奥でさう呟いたのに
顔を見られた

影法師が伸びてく石畳で
こちらに会釈を返し
番ひの猫が駆けて行った

風が追ひ越す
藤棚に残る雫ちらしながら
風邪を引きさう,待ってくれてゐる熱い腕を取りたい

風が追ひ越す
芝生の匂ひを軽く運びながら
風邪を引きさう,側にゐてくれる熱い腕を取りたい

目次][UP

涙のウォッカボトル

不意を突かれ
脚を崩して
捨てないでと喚くより
こちらからBye Bye
言うほうがいいよね
仮にも恋人と呼べる人の
動き判らぬはずもない
呼びとめて
振りむけばがっかりね

少したばこ控えなさい
煙などで隠れきれるものでない
あなたの姿
ラッシュ時だろと
ふたり連れだろと
ひと目で判るの

あなたいつもわたしのこと
心配してくれたよね
素敵な言葉と髪の香りで
痛いほど恥骨を突きあげ
舌を絡めて泣いても
あなたの気持ちだけは
吸いとれない

少し焦りすぎたかしら
少しあなた若すぎたね,きっと
あなたの態度かわり始めたは
指環をねだった後のことかしら

有名希望のあなたにとって
有名女優に似たよな
そんな女でなければ駄目よね
流れるような脚線美

Vodka煽れば胃が焼けるね
ついでに胸も妬けるね
飲めば酔うほど
眼が冴えて眠れず
電話しようかと思ったけど
やっぱり止めておきましょう
あなたが出ないが怖く
手が出ず

東の空しらんできて
心までも白けてしまったね
眼が紅いのはアルコールのせい
それだけなのよ
外に何もない

次の約束とりつけないと
安心できないようじゃね
そうね
いずれにしたって
長くはなかったふたりなのよね

手紙にしよか
直接言おうか
最後の言葉きれいに決めたい
忘れないように
残酷なまでに
あなたの心に突きたてたいね

次の約束とりつけないと
安心できないようじゃね
そうね
いずれにしたって
長くはなかったふたりなのよね

目次][UP

そんなきみと,こんなおれ

こんなおれと知ってながら
寄りそうきみが莫迦です
甘い夢を追うような
年頃でもあるまいに

少なからず女には
泣かされてきたおれには
きみだってやはり女と
思えていたものです

浸りたいよな想い出を
掻き集めてみたところで
きみがおれに示す
形には勝てないようです

人に冷たくされるのが
どんなにか辛いことだか
嘗めたことのありそうな
きみ故に

慰め合うのなら
御免とそっぽ向くおれを
すまなくさせるよな Dayly Call
待ちくたびれたよな A Cup Of Tea

そんなきみと知ってながら
探ったおれが莫迦です
眼差しの奥に偽りの
陰を見つけたくて

自らをいい女だと
称せるほどのきみです
女のうまい負け方を
心得ているようで

期待と猜疑と諦めと
交錯もしたおれには
女なんかは嫌いだと
見栄も張れないで

不確かな気分は木の葉
下手な手出しすれば落ち葉
けど後の始末うれうより
思いきり騙されてみようか

寂しげにしてたからとか
優しげに見えたからとか
泣かしたくなるよな台詞
吐かないで

明日のことくらいなら
考えてみてもいいよと
言うおれに頷くきみです
それでいいよと笑うきみです
本気になりそうなおれです
おれです

目次][UP

all words written by nii. n