Mobile:ノートPCの新調

◆出先で紙とは、情けない…◆

結構早くからデータの電子化を試みてきたのに、ここ数年、すっかり紙を使う体制に戻りつつあった。一つは重さのせいだ。
しかし、紙も束ねれば相当に重くなる。A5システムノートが徐々に重くなってきた。さらに、外で書いたメモや原稿などを、家で入力するバカバカしさ。

  なんて情けないんだ!

そう思い続けて何年も経つ。初代DynaBookを買って旅行先に持ち込んだり、昔のThinkPad(Windows 3.1時代)で、Windowsを全フォーマットして1B/V(超漢字の前身となる、DOS/Vマシン上で動作するBTRON)で使ってみたりと、何年も工夫をしてきた。

だが、バッテリーの持続時間を考えると、つい最近までノートPCを持ち歩くこと自体、現実的じゃなかった(と私は思う)。たかだか2時間半程度では、あっという間に「ただの重り」になってしまう。帰宅してもなおバッテリーが底をついていない、そういうもんじゃないと安心できないのではないだろうか。2時間でも持てば使う、という人もいるかもしれないし、そのことに文句をつける気は皆無だが、私には不満で仕方なかった。携帯電話を買う時に、待ち受け時間の長さを条件にあげる人がいることを考えればすぐにわかる。
バッテリーの持続時間は、たとえてみれば財布のようなものかもしれない。クレジットカードはあったほうがいいに決まっているけど、ある程度の現金がないといざという時に困る。コーヒー1杯、消しゴム1個に、クレジットカードは普通、使うまい。
どこでもAC電源をとれるわけではない。ましてや図書館では、マシン持ち込みコーナーはあっても、電源が切れればどうしようもないのだ。(コンセントはたいてい、ない。カラオケボックスは窓がないからイヤ。喫茶店では断れば使わせてくれるところもあるけれど、例外と考えておいたほうがいい。)

単なるメモなら、今までもザウルスだったりNewtonだったり、モバイルギアだったり、様々な道具があったし、一様に1日は電池が持つ。だが、ある程度以上の長さの文章入力にはやはり、役不足なのだ。
情けなくても、使えなくなってしまう重い箱を持って歩くよりは、まだ家で再入力するほうがいい。本だって資料だって持ち歩くのだ。

ということで、出先ではやはり紙のノートに頼らざるを得なかった。

しかし、今年に入ってから、空気が変わってきた。

◆今までのマシン◆

話は変わるが、私はMacintoshをメインに使っている。世のほとんどの人が、ノートパソコンに関しては特に、Windowsマシンを使っている、この御時世に。
その最大の理由は、フォントと画面から来るイメージである。こんなもの、機能とは無関係であるし、目的とする仕事ができればちょっとくらいの見てくれなどどうでもいいはずなのだが、どっこいそうはいかない。私の場合、特に「画面、特にフォントや行間などから受けるイメージにより、使用頻度や入力速度に差が出る」のだ。
何度も試した。そして、一番入力速度が早いのは、MacでJEditやLightWayTextを使って、見やすい画面を作り上げた時だ。特に、マックのフォントの持つ、柔らかい線が醸し出す印象は、すごく重要に感じている。一度Librettoを使い、PowerBookに戻った瞬間に感じる安心感は、特に何ものにも替え難かった。

そうは言っても、実はWindowsのノートPCも所持している。もちろん、これも必要に応じては活用してきた。膨大にあるWindowsのフリーウェア/シェアウェアで使いたいものもあったし、コンピュータ関係の仕事をしている関係から、こういうマシンが1台あると何かと重宝するのだ。つまり、両刀使いでいくしかない。
1997年よりLibretto50を使い続け(これは小さな画面とキーボードが体調の問題を引き起こしやすいらしく、眼精疲労がひどくなるので、長時間の使用は止めた)、1999年の秋、Let'sNote A77を購入した。5時間弱の外での運用が可能になることを目指し、満を持して購入したものだった。(その頃使っていたPowerBook 2400cは、2時間くらいだった。)

B5ファイルサイズ、CD-ROMドライブは着脱可能(ドライブ・ベイになっており、空箱を入れて重量を軽くしたり、追加バッテリーを搭載してダブルバッテリー体勢にしたりすることができる)。重量は1.6kg程度。さらに、本体付属の標準バッテリーを大容量バッテリーに交換し(大容量のシングルバッテリー)、ドライブベイはCD-ROMドライブを装着したままの状態でも、1.8kg弱だった。FDDドライブも本体に付属するし、Linux/FreeBSD/超漢字などもインストールしやすい、非常に素直なPCという評判である。
悪くない選択だった。実際、すぐに他のOSも共存させることができた。鞄に入れてみて、その軽さの割に豊富な環境に、ちょっと嬉しかったものだ。

しかし、買ってみて、初めてわかる不具合というのもある。それは主として、画面やキーボードの使用感、さらに動作中の音だ。とはいっても、ハードディスクの音やファンの音ではない。そういう音は1999年当時は解決が難しいものだったし、覚悟していた。
困ったのは発振音だった(発信音、と書くのが普通なのだろうが、どうも独特の音なので、発振音と表記する)。

バッテリーを持たせるため、ソフトウェアとチップの両面から消費電力管理を行う。近年のノートPCではほぼ採用されている手法であり、画面や入出力も含めて様々な電力監視を行うモードを設定できる。
Let'sNote A77の場合、バッテリーの寿命を延ばすモードに設定すると、マウスポインタ移動中に必ず「ジー」という軽い発振音がする。耳を近づけると、液晶ディスプレイからだ。喫茶店で使っていてもわかる!外付けマウスにしても、トラックパッドにしても、変わらない。しかも、CPUの電力節約を行わないことにすると、この音はなくなる。
いずれにせよ、あくまでも本体からにじみ出る音なのだ。 一度音が気になりはじめると、苦痛以外の何者でもない。念のためにNiftyのパナソニックPCユーザのフォーラムで調べてみると、やはり同様の症状を訴える人がいる。しかも、個体差がなく、そういう製品らしい。

しかも、画面の輝度調整が5段階しかない。通常は8段階はあるし、Macintoshはもっとずっときめ細かい。それでも自分にとってちょうどいい輝度になればいいのだが、こういう場合、たいていはならないものだ。 音が困る、画面は思うようにならない。キーボードは我慢できるレベルのものであり、至極気に入っているわけでもない・・・ こうなると、徐々に使う頻度が減ってしまう・・・

しかも、こういう時によくあるように、2000年の5月中旬、それまで安定して動いてくれていたPowerBook 2400cが突如、昇天。まぁ、世の中、そういうものらしい。しかも、イカレたのはCPUの載ったドーターボード(マザーボードに上に載っている)だときたもんだ。こういうことって、そうそうはないと思う。
Macだけはないと非常に困るので、PowerBook G3/400 (FireWire)を買いましたよ、大枚叩いて・・・だって、他に選択肢はない!

バッテリーは5時間近く持つと公称しているが、実際に使った感触では4時間は保証されているくらいだ(それでも立派なものだが)。しかし、PowerBook G3は2.9kgもあるのだ。昔、東芝のDynaBookを持ち歩いていた頃の体力はありません・・・
このため、どうしても必要な時以外は、ノートPCを持ち歩かなくなってしまった

◆うんざりを解消するはずが・・・◆

それで1年以上やってきたのだが、やはり大量の入力がある日は、うんざりすることも多くなってきた。

一方で、ここ1年ほどの間に、Crusoeが採用されたマシンが出たり、Pentiumも低消費電力化されたりで、ノートマシンのバッテリーの持ちが5時間を超えることも珍しくなくなってきた。つまり、空気が変わってきたのだ。

  そろそろ潮時じゃないかい?

そんな囁きが聞こえる中、Webで情報を漁ったり、家電量販店を見に行ったりすると、結構魅力ある製品もある。文書入力マシンと割り切れば、悪くないマシンも多いようだ。できるだけ軽く、できるだけバッテリーが持つマシン、そのバランスを自分なりに見極めて・・・

2001年5月に出たiBook (Dual USBモデル)、これもかなり気になった。周囲の人が次々と買っていくし、バッテリーも公称5時間持つという(多分実際は4時間〜4時間半くらいと思われる)。
だが、トラックパッドが大きすぎて、キー入力中に勝手にポインタが動いてしまう。さらに、PCカードスロットがないため、PHS通信のためにはUSB接続の電話に買い替えないといけない。それではZaurusとPHSを共有できない。
しかも、重量2.2kg。以前、重いと言って持ち歩く頻度が減ったPowerBook 2400cでさえ、1.9kgだった。これは、私にとってはモバイルマシンではない

Windowsノートとなると、決め手を欠く機種が多い。もちろん、何かを採れば何かを落として、そのバランスの上で製品を作り上げるわけで、自分がどのバランス感覚を採用するか=製品の選択に他ならないのは周知の通り。
さんざん迷った挙げ句、買ったのはSONYのVAIO C1(俗に目玉VAIOと言われる、横長ディスプレイを積んだミニノート、1kgを切る)。2001年の8月に、その年の春モデルを安く購入した(つまり、次世代機が出たので、売れ残りを買った)。
Let'sNoteを中古買い取り店に売却したので、実売価格との差額が今回の支出。

しかし・・・これも数日でダウン。なんでかって?

  眼精疲労の再発

Librettoで眼精疲労になったんじゃないのか、お前は学習効果がないのか、と言われてしまいそうだが、さすがに今回は運用まで考えていたのだ。横長の画面(画面は横1024ドット x 縦480ドット)を利用して、フォントを大きくし、縦書きで文書を表示する。巻き物の要領と思っていただければかなりイメージが湧くと思う。日本語の生理にもそっているし、いいはずだ…
しかし、試運転として喫茶店で使ってみると、1時間以内に急激に首の後側がはってくるのがわかる。このまま続けると、クラクラしてくるはずだ。なんで、この症状が再び?家のPowerBook G3では出ないのに?

帰宅して、両方を使い比べてみて、わかりました。

画面が縦に短い機種は、普通に机の上に置くと視線がひどく下を向く。この状態で画面を凝視すると、当然首の後ろの筋肉が伸びた状態で固定してしまう。長く続けば、当然こってきます。
もちろん、PowerBook G3はデスクトップ並みの大きな画面を採用しているため、このような心配はない。

マシンはすでに買ってしまった。どうしようか?2日、迷いながら使ってみて、やはり身体に無理はきかないことを実感、再度の売却を決意。というか、売るなら早い方がいい(売価はどんどん落ちていくのだから)。

◆も一度売って、買って◆

Let'sNote売却のお金が無駄にならない金額(つまり、VAIO C1購入時に、Let'sNote売却益の差額として払った現金より高値)で売れたので、とりあえず無意味にほっとする。

そのお金で、SONYのSRシリーズを買おうと思った(今年の春モデルなら安かった)。しかし、店頭で触れてみると、ファンの回る振動が、手に伝わってくる。強力なファンを積んでいるから安心とも言えるが、うるさいのは困る。
Panasonic、NEC、SHARP、東芝と見て歩き、バッタ屋ではかなり安いモデルも見つけることができた。しかし、結局IBMのThinkPad以外に気に入って使えそうなマシンがない、という結論に達する。

買ったのは、ThinkPad s30の有線LANモデルWindows2000プレインストール。したがって、ぴかぴかのミラージュ・ブラックではなく、従来の渋いThinkPadブラックである。

◆さすがというべきか◆

これはなかなかいい選択だったと思う。

重量1.45kg(標準バッテリー含む)で、6.5時間のバッテリー持続と公称。実運用でも6時間は持つ。これはかなり安心。LAN端子があるので、自宅のADSLルーターにすぐに参加できる。PCカード、CF(コンパクトフラッシュ)の2スロットなので、PHS通信も従来の機器がそのまま活用できる。
画面は10.4インチと小さめだが、1024x768でフォントを大きめにしておくことで対応できる(表示情報量をあげることには、私はあまりこだわらない)。視線も極度に下には向かない。これなら、デスクトップで長時間使うわけでもないから、ちょうどいい。
B5ファイルサイズではなく、B5ジャストサイズというのが特によい。喫茶店のテーブルで、本体を置いてもコーヒーカップを楽に扱えるし、図書館などに持ち込むにもちょうどよい。

しかし、何と言っても、伝統のThinkPadキーボード。ストロークが深く、引っ掛かりもいやな感触もない。ハッキリ言ってぱちゃぱちゃいうPowerBook G3のキーボードよりずっとよい。文章入力がメインなのだから、これはとても重要。

まともなマシンで嬉しかった。唯一の難点は、結局予算をオーバーした点・・・これは仕方ないと割り切った。
まったくのギチギチ財政ならば、たぶん、今回は買わなかったと思う。買い物の結果がまともなことに、まずは満足している。


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