Tiger導入記

2005.09.22


●ついのその時が来ちゃったよ

電脳関連の話題は、猫時間通信@Blog(2003年春〜2004年1月は旧猫時間通信)で不定期に扱うようになったため、この電脳関連ページはほとんど更新されなくなった。記録として残しておきたいことが出た時のみだ。

それにしても、2003年11月27日に、メーラー(メールソフト)をARENAからApple Mailに移行するためのメモ以来、何も書いていない。もちろん問題がほとんど起きなかったからなんだが、Mac OS X 10.2 "Jaguar"から10.3 "Panther"に至る安定度・完成度はなかなかなものだったと思う。

実際、iPodを使い、セカンドマシンや買い替えでiBookやMac miniを使い出した人は、想像よりずっとトラブルが少なく、必要十分だと感じる人が多いように見受ける(もちろん目的によってはそうでない方もいるが)。

そして2005年、Mac OS Xは10.4 "Tiger"になった。今までのアップグレードは比較的直線的だったのに対して、今回はやや異なる印象がある。Tiger導入については、簡単なメモを残しておこう。

ところで、なぜ4月29日に発売された新版を、9月の中旬になってインストールしたかといえば、一つは仕事の区切りがつくのを待ったこと、もう一つはアプリケーションやデバイスドライバが対応するのを待ったことの両方であるため。ここに書いた情報は、そう新しくないことは、一応お断りしておく。


●インストール手順は変えたほうがいいようだ

Mac OS Xの新版を、新しい起動ディスクにインストールする場合、Panther以前はたいていこうしてきた。

1. まず、ディスクユーティリティで、ディスク検証と修復、アクセス権の検証と修復を行う。

2. この状態でバックアップをとる。

3. 新しい起動ディスクに、新しいOSを新規インストール。

4. 新システムで起動できることを確認する。

5. サードパーティのデバイスドライバやアプリケーションを再インストールして、必要なファイルを新システムにも導入。

6. 各アプリケーションの基本動作確認をして、使いやすい「いつもの状態」にしていく(旧環境設定ファイルをコピーしたり、新たに設定し直したりする)。

まぁざっとみて半日〜丸1日の作業。Mac OS Xのインストール自体に結構時間がかかる上に、各種アプリケーションのインストールは中途半端に待ちつつ、いくつもCD-ROMを入れ替えてはクリックする。だから、時間をとる覚悟が必要だった。

***

Tigerは、インストール後の処理が変更された。Tiger自体をインストールし終えると、環境設定画面になるのはいままでと同じ。だが、設定を始めると間もなく、移行アシスタントが起動し、それまでの環境のファイルを持ってきてくれるようになった。その手順はこんな感じ。

[移行1] 引き継ぎ元がハードディスクであるか、別のMac本体であるかを聞いてくれるし、別のMac本体ならばFireWire ターゲットモードで起動するように促してくれる。

[移行2] 転送すべきデータは、「ユーザ(各アカウント)」、「ネットワークその他の設定」、「アプリケーションフォルダ」、「引き継ぎ元ハードディスク内のファイルおよびフォルダ」の4項目について、チェックしたものだけが転送される。

[移行2-1] 「ユーザ」のうち、使っていないユーザデータは転送しないように設定できる。

[移行3] データ転送を開始する。(結構時間がかかるが、本当に待つだけ)。

この手順が終わると、ユーザ登録情報の確認になる。新規インストールであっても、従来のデータを引き継げば登録情報も転送されてくるので、確認するだけになる(もちろん変更したい点は修正すればよい)。

移行アシスタントにおいてすべてのデータを転送すれば、たとえばクラシック環境、たとえばMS Officeなど、使っているアプリケーションやデバイスドライバ等も含めてすべて転送される。

再起動してみればわかる。いままでとまったく同じ環境が再現する。使っていた日本語インプットメソッド(EGBridgeとかATOKなど)も、プリンタドライバも、以前と同じように動作する。ブラウザも、ブックマークどころか、キャッシュまで再現されるので、気になる人はキャッシュやCookiesの整理が必要かもしれない。

この手順を考慮に入れると、Tigerに移行する手順は微妙に変わってくる。逆に、それにさえ注意しておけば、比較的スムーズに移行できる。

***

私は新しい起動ディスクを用意したのだが、その時の導入手順を残しておく。PantherからTigerへは、こう移行するとラクだ、という一例として。

1. 現在使っているアプリケーション、デバイスドライバは、まずTiger対応のバージョンにしておく。もちろん、トラブルがないことも確認。(もしもPanther以前とTige以降はまったく違うバージョンが必要であり、Pantherにはインストールできないならば、それはあとで再インストールするしかないだろう。私はそういうソフトウェアをたまたま使っていなかった。)

2. ディスクユーティリティで、ディスク検証と修復、アクセス権の検証と修復を行う。

3. この状態でバックアップをとる。

4. 新しいハードディスクにTigerをインストールする。

5. 環境設定で、移行アシスタントが起動する。以前の起動ディスクを引き継ぎ元にして、基本的にすべてのデータを転送してしまう。

6. 設定が終わると、起動する。この段階でソフトウェアアップデートを起動し、OSやアプリケーションのアップデートがあれば、まずあててしまう。

7. よく使うアプリケーションについて、一通り起動してデータを読めるかを、ざっと確認(調整、もしくは再インストールが必要になる場合もある)。環境設定などはすべて引き継がれているので、ほとんど再設定の必要はなく「いつもの状態」になる。

手順が増えたように見えるが、そうでもない。Tiger自体のインストールに1時間弱。ファイルの転送に2〜3時間程度ではないか。そのほとんどは純粋な待ち時間であり、アプリケーションのCD-ROMを入れ替えては再インストールして、環境を設定し直す(あるいは古い環境設定ファイルをコピーする)といった手間がない分、むしろラクになっている。

注意すべき点は、現在使用中のアプリケーションなどは先にTiger対応にしておく、ということ。移行アシスタントの作業を信用しない、というケースもあるだろうが、使用中のPantherが安定しているなら、きちんと仕事をしてくれるようだ。

ただ、Pantherをすでに使っているならともかく、Jaguar (10.2) 以前のMac OS Xを使ってる場合は、現在のアプリケーションをTiger対応に出来ない場合もあるだろう。こういう場合は、いさぎよくアプリケーションやデバイスドライバなどは再インストールするほうがいいかもしれない。


●インストール後に行ったこと

インストール後、アプリケーションを起動確認していたところ、Virtual PC 7.01については、再調整が必要になった。事前に7.0からTiger動作確認済みの7.01に上げたのだが、/Library/Recieptの中にあるVirtualPC用のパッケージ(.pkgという拡張子がつくファイル)が転送されていなかった。これらを手動でコピーすると、動作してくれた。

たいていのアプリケーションは、そのまま動作するようだ。ただし、DreamWeaverなどは制限がいくつかあることを、Macromediaがサポートページで明記している。自分が使う機能に関係しているかは、確認しておいたほうがいいだろう。

あと、インストール直後はSpotlightが索引を作成する。ユーザがCPUをあまり使わないうちにバックグラウンドで行うので、時間に余裕があるなら(自動的にスリープしないように設定して)数時間放置しておくと、なおよい。ユーザが使っていると、なかなか索引を作成し終えないのだ。

ちなみに一度索引が出来れば、その後は作業を邪魔されることはない(すでに多くの雑誌などで書かれていることではあるが、念のため)。


●Mailは変更点が多い

Apple Mailはファイルフォーマットが変更されたため、最初に起動させるとまずファイル変換を始める。ここはしばし待つしかない。

ちなみに、Panther以前は1つのメールボックスが1つのファイルだった(UNIXの標準的なMailbox形式)。Tigerからは1メール=1ファイルとなった(UNIXではmhなどに代表されるメールソフトと同様の形式、ただしファイル名規則などは異なる)。ちなみにメールボックスはフォルダに変更された。これにより、Spotlightではメールも含めて検索できるようになっている。(Mail自体の検索エンジンもSpotlightである。)

Panther以前のMailは、長いメールマガジンなどを受信すると、検索用の索引を作るのに時間がかかる場合があった。TigerではSpotlightが高速に索引を作るので、その分だけ速く感じられる。

また、ユーザインタフェースも変更された。ドロワーがなくなり、メールボックスは左側に固定表示されるようになった。いままでの動作に慣れていると最初はぎょっとするが、慣れれば解決がつく範囲。

むしろ、スマートメールボックスにより「ここ二日の最新メールを見る」といったことが簡単に行えるようになったことが、とても大きい。新着メール一覧がなかったが、スマートメールボックスがその代わりをやってくれる。


●インストールしてみて

Pantherの完成度は高く、相当安定していたため、すぐに乗り換える気が失せるほどだった。仕事が一段落しなかったこともあり、なかなか導入しなかったが、思ったよりずっと気に入った。移行がスムーズに済み(アプリケーションの再インストールがほとんどいらないのはラクだった)、G3などの低速マシンで体感速度の向上する場面もあったことが大きいと思う。

今回は特に、Spotlightのような新しい試みが導入されている(プログラマーにとってはCore Dataも新しい試みだ)。そういう面では、Mac OS X 10.1から10.3 "Panther"までの直線的な発展と比べて、次世代のための土台を新たに築き直そうとしている印象がある。

発売直後、不具合の報告がしばしば見られたようだが、インストールの手順そのものの変更などは、多くのユーザが予想しなかったことではないだろうか。ここまで変更したのなら、アップルはもっと積極的に広報をすべきじゃないかとも思う。私のように、ある程度情報が出回ってからアップグレードした人間はともかく、そうでない人々にこそ必要な情報を、もっと積極的に出すべきだろう。

Tiger発売の翌月にMacPeopleがまとめた小冊子(インストール手順が画面とともにまとめられていた)は、1月遅れであってもなかなかタイムリーだったと思う。しかし、こういう仕事こそ(必要に応じて外部移管してでも)アップルは先回りしてやってほしい。技術に詳しいユーザはむしろ他のプラットフォームより少ないくらいなのだから。


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