MacWorld Expo SF 2003

2003.01.09


●2003年初頭、怒濤の展開

日本では1月8日の午前2時(というか、要するに1月7日の深夜)から、MacWorld Expo SFがあった。ストリーミング中継もあり(眠いので見ていない)、また数多くの報道(たとえばPCWatchMacWireなど)が出ており、いまさら私がくどくど繰り返す必要もない。

とにかく大量にいろいろなものが出てきた。iPod用のスキージャケットという周辺機器向けの話題。FInal Cut Expressという本格映像編集ソフトの廉価版、iApplication(日本でiアプリというとドコモの携帯電話Java用アプリを指すほうが多いか?)のバージョンアップとセットCD-ROM発売、KeynoteというMicrosoft PowerPoint互換のプレゼンテーションソフト(これは有料)、Safariと名乗る高速Webブラウザといったソフトウェア関連の話題。そして、PowerBook G4に2つの新機種。12インチ液晶モデルと、17インチ液晶モデル。しかも、日本でもすぐに1月8日に発表されている。これだけたくさんあると、報道側も対処に苦慮するようで、ばらばらと五月雨式にWebニュースに流れてくる。ほんと、ご苦労様です。

12インチPBは、G4 867MHzではあるが、2次キャッシュの容量が256KBに下がっており(従来の15インチPBと、17インチPBでは512KB)、さらに3次キャッシュはない(15インチPBと17インチPBは1MB)。キャッシュはCPUコードで大量の繰り返しがある場合に、極めて大きな効果がある(そうでない場合はさほど効果がない)。たとえばVirtual PCのようなハードウェアやOSをエミュレーションするソフト、PhotoShopの各種フィルタリング処理などは明らかに効果が出るはずだ。12インチは速度面でもやや廉価版になっており、その意味で「速いiBook」のような位置づけになってくるのだろうか。触ってみないとなんともいえないけど。

実機も出ていない段階で気が早いが、おそらくアジア市場(正確には日本)を考慮に入れていると思われるだけに、マシン性能の向上が著しいWindowsノートと真っ向から比較されてしまう。WindowsからのSwitchを促したいならば、もう一踏ん張りほしい・・・でもこれ、現在PowerBook G3を使っている自分としては、結構欲しいものだったりするけど。

一つ気になるのは「今年はノートブックの年だ」と宣言したこと。たぶん従来の15インチ液晶モデルも、ある時期にはリプレースされそうな気がしてくるし、実際、IBMなどは主要なPC開発リソースをノートPCに特化している。利幅の薄いデスクトップよりも、ノートブックサイズのマシンにシフトして、高速なインターネット端末を大量に売りたい、という意向に見える。夏あたりに、細かくリファインしたモデルが出れば、一番の買いになりそうな予感もするな。


●新ソフトウェアに注目

ちなみに、前述のSafariを落としてみた。まだパブリックβ、しかも英語版のみだけど、びっくりするくらい速い。どれくらい速いかというと、隣のThinkPad s30(超低電圧版Pentium III 600MHz)で動作するWindows 2000上のInternet Explorerよりも、速い(私のマックはPowerPC G3 400MHzだ!)。今まで「WebブラウジングはWindowsのほうが快適な速度だからなぁ」と言われていたが、それを補ってあまりある。Cocoaは遅いとディベロッパーが発言することもあったりして、アップルとしては「そんなことねぇぜ、じゅうぶん速いアプリも作れるもんね、みんなが一番使うWebブラウザでやったろうじゃんか」というところだろうか。

それだけじゃない。Page Snapbackという機能がある。検索エンジンや、大きな目次があるサイトに遭遇した場合、あちこちを巡ってからまた検索結果や目次にさっと戻りたいときは、非常によくある。それをすぱっと実行できる。「進む」ボタンや「戻る」ボタンでの動作も快感となるような小気味よさ。Netscape Navigator 7から人気が出ているタブ機能はないが、まぁこれは使いやすいブラウザということで、今はあえて入れていないのかもしれない。

日本語も、デフォルト・エンコーディングを設定してやれば読める。Yahoo! Japanのトップページが乱れたりするけど、たいていのJavaScriptはオーケーだし、このサイトのスタイルシートも問題ない。これはいいです。すでにメインの座につきそうな勢いだ。

かつて、MacWriteとMacPaintが、68000MPU時代のMacintosh品質の基準になったように、iTunesとSafariあたりをMac OS X時代の品質の基準にして開発しよう、というところだろう。たぶん、これでよそのマーケットを食うというより、「これくらいは標準として、使い勝手と機能を両立させたいいものを作ってね」というアップルからのメッセージのように見える。


一方で全然注目を浴びていませんが、X11 for Mac OS Xというものが、アップルから公式にアナウンスされた。UNIXベースのMac OS Xを、まさにUNIXとして使う場合、どうしてもX11(X-WindowというUNIX業界で標準のウィンドウシステム、柔軟性も自由度も高いが、中身をある程度わかっていないと設定が難しいかも)を避けて通れない。今までもX on Xプロジェクトなどがあり、私もXDarwinを軽く使ったことがあるが、アップル自身が公式な環境を提供していってくれるらしい。

これはうれしい! OSのソースコードを持っているアップルが整備してくれるのが一番だ。現在、パブリックβを公開中。まだダウンロードしていないが、使用体験などを聞く限りでは、X Serverも速く動作し、Aquaユーザインタフェースともきれいに融合して、とても使い勝手がいいらしい。大学や研究所など、今までMacにそう悪意を持たずにいて、しかもUNIXベースで研究をしている人々への、キラーアプリとなる可能性がある。(一般ユーザにはあまりぴんとこないかもしれないけど。)

しかしなぁ、ハードディスクやメモリの容量が・・・というよりもう、G3でこれ以上の投資はきついな(涙)。いや、今のマシン、気に入ってるし、今年の5月まではApple Care Protection Planにも加入されているもんで。


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