MacWorld Expo 2002 Tokyo


●Expoのほうも見てきた

MacWorldExpo Tokyo 2002、最終日に見てきた。

あちこちで「がらがらに空いている」「地味だ」「来年が心配だ」などと書かれたり囁かれたりしていたので、どんなものかと思いながら赴いた。私が到着したのは午後になってからだったが、確かに昨年までのような異様な混雑はない。PCWatchでも報道されているが、アップルブースにずらりと並んだiMacやiBookなどは、比較的自由に触ることが出来た。新ハード発表がなかったこともあるだろうが、例年ひどく混雑するので今年は展示台数を大幅に増やしたことと、その割に触る人が少なかったことの両方ではないだろうか。係員も大量に配置され、どこでもすぐに質問に答えてくれるし、わからなければわかる人をつかまえてきてくれる。こんなホスピタリティがあるExpoはいままでになかった!私個人は、マシンの奪い合いになるよりも、じっくり触れて質問をすることができるので、むしろいいと思うのだが。悲鳴をあげるような混雑がそんなにほしいのだろうか?

販売店の規模が減ったこと、イメージング関連(デジタルカメラやフィルムスキャナー、印刷機器など)の出展が減ったことは、確かに寂しかった。おそらく「マックはもう買ったし、デジカメも持ってるし、特にほしいもんもないし」という人々は足を運ばなかったと思われる。逆に赤子を抱えた夫婦が多かったのは「これからこの子の記録をDVDに落として!」と思ってるからだろう。隣で入場無料のPhoto Expoが開催されていたので、イメージング関連各社はこちらに注力していたようだ。

ただし、プリンタ関連で出展していた沖電気は、なかなか気が利いていた。目立っていたアンケートとプレゼントのほうではなく、機器展示の横でやっていたハンズオンセミナーである。ずらりとマックを並べて「RGBをCMYKにマッチングする方法」といった、カラープリンター活用者には必見の講座を行っており、満員御礼だった。いや、これだけではなく、他でも盛んに行われていたMaya(プロフェッショナルアニメーションソフト)で3Dを動かすセミナー、iPhoto入門、Office Xのセミナーなど、ハンズオン系がかなり充実していた。カンファレンスが60セッションもあったことと関連して、単にお祭りをするだけではなく「もっと実地に活用しようよ」というメッセージは伝わってくる。これが本来の「Expo, Conference」であり、この方向がもっと積極的に伸びていくのがいいと思う。ただ、運営などはJavaOneを手がけたKey 3 Mediaのほうが上手だと思う。


MacOS X対応のソフトウェアは、どこも盛況。特に、ブースが近く、大激突状態だったのは、MacromediaAdobe。FlashMXとGoLive 6.0 + LiveMotion、それぞれがMacOS X対応の新版のデモに余念がなく、しかもどちらもびっくりするくらい混雑している。

音楽関係のブースも充実していた。充実していた割には、アプリケーションのMacOS X対応が遅めになっているのが気になる・・・ハードウェアやドライバを提供している会社は、かなり積極的にMacOS Xへの移行を表明しているのだが、Digital PerformerやLogicなどの有名ソフトはMacOS 9のままで、移行時期も「未定」としか答えてくれない。ここのあたりがリンクしないといけないのだが、このままの状況が長く続くと、顧客がWindowsXPにいっちゃわないか?・・・


個人的にチェックしたのは、VirtualPC。SoftWindows95はもはや後がない(開発中止になっている)ため、後継環境のためにも見に行った。Connectixのブースでいろいろ話を聞いて、触らせてもらったが、WinXPに関してはPowerBook G4でもかなり遅くなり、厳しい。意外にきちんと動いたのは、Win2000とNT4.0。これは意外な速度で動いた。ただし、どれをとっても、SoftWindowsより処理速度では劣る・・・結局、この日は買わずに帰ってきてしまった。(手元にWindowsマシンがあるから、余計だ。)


●恒例の珍妙製品と、お祭り

ただし、単に仕事に活用するだけではつまらない。珍妙な製品で知られるイタチョコシステムがついに今年は出展なし、その代わりといってはなんだが、もうあちこちで紹介されている三洋電機セミコンダクターの参考出品。iMac(flatpanel)の下に敷く「ざぶとん」は、USBとFireWireのハブを備え、iPod専用スロットも持っていて、デジタルハブとしては実は利用しにくいiMacを、巧みに利用しやすくする。しかも、20W x 2chのアンプを備えていて、とても明瞭な音で音楽を楽しめる。iBookやPowerBookなどにもざぶとんがほしいという要望があるほかに、アップルシンガポールの人に「すぐに売ってくれ」とまで言わしめた逸品。ただし、担当者は「まだ詰める部分があり、夏にはもっといいものを」と話していた。

他にも、ここではiPodを挿して本体で再生可能にする「iPod専用スピーカ付キャリングバッグ」(ほとんどラジカセになる)、USBを備えたマックに電波を飛ばして音楽再生を制御し、その音楽信号を電波で受信してよい音で再生する「USBトランスミッター/レシーバ(USBオーディオデバイス)」などがある。

このトランスミッター/レシーバは、送信機をUSBでMacに接続し、Macから送られるiTunes、CD/DVDなどの音楽出力を、再生用レシーバに電波で飛ばすもの。たとえば、書斎のiTunesのデータを、ダイニングのレシーバに飛ばすことで、ダイニングでもiTunesの音楽を聴ける。さらに、受信機は再生・停止などの操作ボタンを持っており、それでiTunesを制御できる。受信機は音楽再生に特化したため、当然のことながら音質はMac本体よりよい。さらに、文字データが表示されるので、曲名もわかる。その曲名自体も、液晶には裏返した文字が表示されており、アクリル板にあえて投影して読ませる仕掛け。なかなか凝ってるよね。

半導体専門の会社だけに、こういう回路設計には長けているから、アップルとは面白い分業が可能だろう。カーナビとの連携も楽しみな分野だ。


お祭りはユーザグループの集合する横丁で行われていた。Blue & White G3(ポリタンクと渾名)の筐体を利用して、ビールサーバを作るなど、ばかげて楽しい展示などはこちら。

ちょっと思ったのは、今回は来場者の年齢層が意外に高めだったと感じた。気のせいだろうか? しかし、女性の2〜3人組が非常に少なく、子連れも減って、いわゆる「秋葉原などで見かけるオタク度の高い人々が増えた」Expoにもなった点だ。これがお祭り度の減少と関係していたか・・・


●お店、雑感

お店関連では、T-ZONEが出ず(あそこは今事業を建て直している最中だから)、イケショップがSonnets(CPUアクセラレータの会社)代理店的な位置付けの出店に限定した点も、寂しかった。代わりにSofmapが復帰、激安アウトレット商品(iBook/500/CD-ROMが10万円を切る!とかね)を展開、まさに飛ぶように売れていた。一方で、秋葉館が価格で対抗、特にVirtualPCは各所で熾烈な値下げの結果、市価より1万円程度安くなっていた。他にもVisor Prisum(PalmOS搭載のPDA)がPHSカードアダプターをつけて12,800円とか、PowerMac G4/800が17万円代とか、まぁすごかったこと。午後一時頃はまだ空いていた販売ブースは、午後3時に各所で行列、ごった返していた。

私は、執筆の必要上から、EGBridgeの新版を購入。これも市価よりだいぶ安かったです。

また、3月23日はSONYの新型CLIE(Palm4.1と折り畳み型キーボードを搭載)が即日展示、しかも安くした上でメモリスティック32MBをつけるとか、iPod 10GBモデル(3月21日の基調講演で発表されたもの)が入荷、即日完売とか。

結構濃い内容の出店だったと思う。鞄もいいものが大量に出ていたし。


一つ思ったのは、東京ビッグサイトって、幕張メッセよりもホテルが少ない。しかも、大規模な宴会も開きにくい。だから、例年あった「遠方からの宿泊客と、それに伴う宴会やお祭り」が減ったのではないだろうか。それが何となく自主的に行われるお祭り気分の減少に関係していたのではないか。

また、東京ビッグサイトの建物って、解放感が少なくて、圧迫するような造形だと個人的に感じている。飲食店も、幕張メッセに劣る(ほんと、泣きたくなるくらい寂しい、いつも思うんだけど)。単なる場所の変更以上に小さなExpoになったのは、こうした事情もあるかもしれない。

一方で、実務、音楽、印刷、写真といった目的をもって活用しているユーザは、有益な情報を何らかの形で得られて、しかも直接関連しない分野の製品を興味深く見て、安いものを見つけたら買って帰る、という本来の楽しみができたと思う。私は例年のExpoがやや空疎になっていた印象をもっていたので、今回の方向性はたいへん興味深かった。

ところで、来年もIDG主催なんですかね?


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