iTunesで思うこと


あるお店でiTunesを最新のMacを使ってデモしているところを見てきた。そして、ちょっといいと思い、アップルのサイトからダウンロードをした。始まった瞬間に3MBを超えていることに気付き、しまったと思うが、やっちまったもんはしょうがない、と諦めてゲットした。

ちょっと使ってみたのだが、いっぺんに気に入ってしまった。近年のApple製ソフトウェアでは最大のヒットだと思う、これは。

iTunes自体がどのようなソフトウェアなのかと言えば、これは「統合音楽環境ソフトウェア」だろう。

他にもいろいろあるが、だいたいこんなところだろうか。まぁ、市販のソフトウェアも同様のことができる、いや、もっと高機能な製品である。でも、全然違う。そういう問題じゃない。


ファーストインプレッションで感じて、それ以降何日も使用していても、全然変わらない感想。

なんというか、独特の幸せさがある。触っていて、アップル・タッチとでも言うべき独特の滑らかさ(動作というより使用感の滑らかさ)がある。使っていて、とても心地よい。気持ちのよい車に乗せてもらっているような、上質のうれしさ。
かつてMacPaint、Claris WorksといったMacintosh上のキラーソフトウェアが持っていた、使い勝手上の滑らかさをこのソフトウェアも持ち合わせている。その意味で、完全にAppleの純血種だ(注:iTunesはSweetJAMをベースにしているそうだ。しかし、元のソフトウェアとはだいぶ違う印象をもたらす製品になっている)。

市販のMP3ソフトウェアに比較して高機能ではないのだが、必要なものが過不足なく納まっている。画面も非常にわかりやすい。何と言っても、データベース的に様々なCDを取り込んで「自分用のライブラリ」が貯まっていくのがうれしい。完全にノセられているとわかっていても、なんだか拒めない。

また、意外にもグラフィカルなエフェクトが心地よい。この手の機能は同種のソフトウェア、とりわけWindowsパソコンに添付されているものに多数あるが、そのどれもが真似しにくい独特の機能のバランスが、iTunesにはある。

昔から、Macintoshの標準添付ソフトウェアは、その分野でのAppleの指し示す基準だった。MacPaintはグラフィックソフトウェアの原型をつくり出したし(あれがなければその後のグラフィックソフトウェアはどうなっていたか?!)、それはMacWriteも同様だ。標準添付ではないけれど、少し後に市販されたMacDrawも、作図ソフトウェアの流れを作った。こうしたものは皆、クラリスワークスからAppleWorksへと引き継がれている。また、Canvas, SuperPaintといった初期のMacを支えたソフトウェア群も、皆こういった流れの影響下にあったものだ。
HyperCardがこの域に達したかは疑問を持つ人も多いかもしれないが(iMac以降のユーザにHyperCardのことを説明してもピンとこないかもしれないね)、あれはあれでオーサリング環境という流れを作り、Macromediaの世界へと流れ込む。
こういった製品群は、概念からデータフォーマットから設計まで、Appleが独自に作ってきたものだった。今度は逆に、現在流通中のデータフォーマットMP3を包含する形で、音楽統合環境を作ろうという。逆に挑戦する立場だ。
いずれにせよ、今後Macintosh上で動作するソフトウェアは、この程度の基準は満たした上で、もっと高機能になるべきだということである。

たいへん厳しい要求が、開発者には突き付けられたことになる。もちろん、単純にユーザとしては福音なのだが。


ところで、音質はどうなのか?

CDプレイヤーとして使用する限りは、まったく通常のCD演奏機である。
問題はMP3だろう。

MP3は様々なビットレートでエンコーディングできる。ビットレートが低いと、音質が悪いが、サイズは小さくなる。逆に、ビットレートが高いと、音質はいいが、サイズが大きくなる。もともとMP3は音楽をインターネットで配信したり、シリコンオーディオ装置にインストールして使うために開発されたフォーマットだ。
つまり、そうよい音質を目論んでいるわけでは、もともとない。そういう目的ならば、NTTの研究所が生み出したV-Twinのほうが適している(V-Twin自体はハギワラシスコムから製品化されている・・・が、開発に携わった方々には失礼ながら、あまり売れていないのではないか。これは知名度の問題だと思うが)。
初期の頃、MP3プレイヤーはそれほどメモリを搭載していないので、モノラル64Kbps以下で圧縮して、曲数をできるだけ詰め込む、その代わりザラザラした肌触りの、AMラジオのような音で聞く、ということが多かった。また、インターネット配信でもそれほど大きなものは送れないので、下手をすると32Kbpsで圧縮したものを渡しあうこともあった。(この程度だと曲の輪郭がわかる程度と、私には感じられた。)

iTunesの標準設定はこういった過去の経緯と比較して、かなり高いビットレートでエンコーディングする。デフォルトで80Kbps、さらに良い音質だと96Kbps(もちろんカスタムのビットレートも設定できる)。世間で「CD並み」と呼ばれる領域であり、MP3プレイヤーの使用を前提とすれば、豪華だ。
そのためか、Ver1.0Xで扱えるMP3プレイヤーはNOMAD IIが入っている。このマシンは6GBのハードディスク(!)を積んだ、破格のマシンだ。豪華な音で、たくさんの曲を収録するのが目的で開発されたマシンであり、NOMADという名前が表す通り「音楽遊牧民」を目指すマシンである。
だいたい、Mac自体がそうしょぼい音を扱うマシンではないのだから、標準設定がこうなっている以上「ふだんはMacで音楽を聞いて、それを外に持ち出す」という発想で作られているように見受けた。

けど、それでも私の耳には今一つくすんだ音質に聞こえる。当然だろう、どうやってもCDそのものより音の品質は低くなる。従って、やはりクラシックやJazzなどには向いていないと感じている。
でもまぁ、悪くない、好きなマシンの前に座ってそのまま音楽を楽に聞けるのだから。もっと個人的なことを告白すれば、昨年のMP3大ブレイクを今頃実感するなんて、ほんとにじじいだ!(笑)、それを今頃やってるMacも同様にじいいだ!(苦笑)


実際にCDをマウントする(CDを挿入すると、デスクトップにCDのアイコンが出てくること)と、トラックごとに情報を入力できるようになっている。
もちろん手で入力してもいいが、CDDB(そういうものがインターネット上にあるのだ)からアルバム情報を丸ごとゲットできる。同様の機能は他のMP3ソフトウェア(もちろんWindowsのものも含めて)でも実現されている。iTunesのメニューだと「高度な操作→CDトラック名を表示」になる。ここを選択するだけで、インターネット上のCDDBに接続して情報を取得し、数秒〜15秒程度で画面上に表示する。(ちなみに、インターネットに自動的にダイヤルアップ接続しないようになっている人は、手動でインターネット接続しておいてから操作すること。ほんとはダイヤルアップ接続じゃなくて常時接続だといいんだけど・・・ついでに、本来インターネットは常時接続を前提に研究されてきたものなのだ。)
もちろん、CDDBにない場合もある。こういう場合は、その旨のダイアログが表示される。自分で入力するしかない。

なお、自分で入力したデータを、他の人たちにも使ってもらおうと思ったら、メニューの「高度な操作→CDトラック名を送信」を選べばいい。この時に注意することとして、CDDBは日本語でどのような漢字コードを使うべきか、といった規定もないし、海外の人々が日本のCDを集めていて、漢字コードを使われたら文字化けしてしまう(海外の人がJ-POPS歌手を聞くことはあり得るのだ)ので、アルファベットでローマ字入力してから送信する。
しかし、みんなでデータを入れあって共有しようなんて、すごくインターネット的な考え方であり、それをこういうスマートなユーザインタフェースを持ったソフトウェアで行えるのは、とても気持ちがよい。

ところでCDDBだが、WindowsのMP3ソフトウェアではすでに使えるものが多いために、けっこう思い掛けないCDが登録されていることがある。ちょろりとやってみたところでは、竹内まりや、山下達郎、遊左未森といったもの(なんちゅう脈絡や)は登録されている。手許にあるCDは登録されているかな?という興味だけでも面白いかも。


ちなみに、詳細な解説がMacWireのレビューに掲載された。日本語版英語版の両方がある。他のユーザとMP3ファイルのやりとりをする可能性があるなら、日本語版のほうが有利。その理由は、読めばわかります。

これだけのソフトウェアが、ダウンロードするだけで入手できる。これは恐るべきことだ・・・それはさておき。

Have a fun !


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