春日之袁杼比売 かすがのおどひめ

丸邇(わに)の佐都紀(さつき)臣の姫。「春日」は結婚以前の居住地。雄略天皇の室。古事記に雄略天皇に献ったという歌が伝わる。

 

やすみしし 我が大君の (あさ)とには い()()たし (ゆふ)とには い()()たす 脇几(わきづき)が 下の 板にもが 吾兄(あせ)

【通釈】我らの大君が、朝には倚りかかってお座りになり、夕には倚りかかってお座りになる、脇息の下の板になりたい。いつもお側にいられるように。ねえ皆さま方。

【語釈】◇やすみしし 「我が大君」の枕詞。「八隅を治める」、あるいは「心安く天下を治める」の意かという。◇朝と この「と」は「間」の意味(岩波古典大系)。◇吾兄を 天皇に親しく呼び掛ける語とする解もあるが、ここでは宴での囃子詞として、同席する男たちに呼び掛けた語と見ておく。

【補記】古事記下巻。泊瀬のケヤキの木の下で宴会をした時、袁杼比売は雄略天皇に大御酒を献った。その時天皇の詠んだ歌「水灌ぐ…」の歌に応じて比売が献ったのが上の歌であるという。


更新日:平成15年03月21日
最終更新日:平成21年03月31日