吉備海部直の姫。仁徳天皇の側室。大后磐之媛の嫉妬を畏れ故郷へ帰ってしまった姫を、天皇は吉備まで追って行ったという。
仁徳天皇に献ったという歌二首が古事記に伝わる。
天皇上り幸でます時、黒日売の献れる歌(二首)
倭方に 西風吹き上げて 雲離れ そき居りとも 我忘れめや
【通釈】大和の方へ、西風が吹き上げて、雲が離れ離れになるように、遠く隔てられておりましょうとも、私は忘れなどしません。
倭方に 往くは誰が夫 隠水の 下よ延へつつ 往くは誰が夫
【通釈】大和の方へ帰って行くのは、どなたのお相手かしら。隠れ水のように、忍んで通っては、帰って行くのは、どなたのお相手かしら。
【補記】以上二首、古事記下巻より。黒日売はその美しさを愛されて仁徳天皇の宮中に入ったが、大后の磐之媛の嫉妬に耐えきれず、故郷の吉備へ逃げ帰ってしまった。天皇は黒日売を追って淡路島から吉備へと行幸し、ついに再会を果した。上の二首は、天皇が大和へ帰る時に黒日売が詠んだ歌という。
更新日:平成15年03月21日
最終更新日:平成15年03月21日