紀鹿人 きのかひと 生没年未詳

紀小鹿女郎の父。天平九年(737)九月、外従五位下。天平十三年(741)八月、大炊頭。また万葉集08/1549題詞には「典鑄正(いものしのかみ)紀朝臣鹿人」とある。大伴稲公の友人であったらしい。万葉集には三首(6-990・991、8-1549)。紀氏系図などによれば、養老三年(719)閏七月に朝臣を賜姓された紀臣広前の従弟に夏人があり、或いは鹿人と同一人か。

紀朝臣鹿人の跡見(とみ)茂岡(しげをか)の松の樹の歌一首

茂岡に神さび立ちて栄えたる千代松の樹の歳の知らなく(万6-990)

【通釈】茂岡に神々しい様子で盛んに繁っている、千年を待つという松の木――いったいどれ程の歳月を経てきたのかも分からない。

【語釈】◇跡見 奈良県桜井市外山(とび)付近とするほか諸説ある。◇茂岡 「木が茂った岡」の意にもとれるが、ここでは地名か。


最終更新日:平成15年11月08日