トーレンス TD126MkIIIに付いているアームは、シェル一体型です。カートリッジは、トップの写真左のように、下からネジを入れて、指賭け金具に切ってあるタップを利用して、金具とカートリッジでヘッドシェルのつめを挟んで締め付けます。 この方式ですと、シェル上側にはネジが見えず、美しい仕組みではありますが、最近、いささか困った自体が発生。 オルトフォンの最新のMC☆シリーズ(MC☆10ω,20ω,30ω)は、カートリッジのほうにネジが切ってあって、タップなしの穴が開いたヘッドシェルの上からネジを入れるしか取り付ける方法がなくなっています。最近の様々な製品をよく見ると、アーム一体シェルのものも、ヘッドシェル部はすべてこの「バカ穴」構造です。 オーディオショーのオルトフォン・ブースで、「どうすりゃいいのか」と担当者に聞きましたところ、「その場合、シェルに穴を開けていただくしか手がない」と言われました。やはり・・・・・。 このままでは次はMCシリーズをあきらめなくてはなりません。しかし、最新のオルトフォンMCシリーズは少なくとも一台は持っていたい。幸いなことにトーレンスの交換アーム(下の写真;このように根元から外れます)の予備をずいぶん前に購入してありました。 このヘッドシェル部にドリルで穴をあけることにしました。失敗したらもう代わりは買えませんから、これは大決心。慎重にやらねば。 楕円穴を開けるのは困難なので、オーバーハングは調整できないでよいことにして、MCシリーズにオーバーハングをあわせて、2.8φのドリルで丸穴をあけました。ただ、指賭けが入っていた隙間も埋めなければならないので、アルミ片でスペーサの工作が必要。物が大きくて大雑把な車の改造とは異なり、かなり微細な加工で、しかも失敗は許されない。少々神経をすり減らしながら、なんとか改造に成功しました。 見事に最新のMC☆30ωが付いた様子がトップの写真右と下の写真。ウッド粉入のケースがいいですねえ。ヘッドシェルは指掛金具が上にきたので、中途半端にTHORENSの文字が隠れましたけれど、まあ見苦しくはない仕上がり。ついでなので、アームのコネクターもぴかぴかに研磨して、接触抵抗も大幅低減(だといいな・・・・・)。
さて音は? もちろん変わりました。月並みですが、ワイドレンジになったというのが一番わかりやすい表現。音の重心は低いままですが、中高域の繊細感がかなり増しています。アナログらしい力強さは失われていないのに、全体のバランスは現代のCDの音に近づいた感じ。おかげで、CDと同じチューニングのままで問題なく聞けるようになり、デジタル系との相性もよいです。 この数日間、LPばかり聞いてました。カートリッジ交換前には、LPを久しぶりに聞くと、「音は心地よいけれど、やはり古い音ともいえるかなあ」と感じていました。しかし、新しいMC☆30ωは、そう感じさせません。 昨年来、CDに大きな投資をして、これでアナログとはお別れできるのかと思いましたが、そうはいかないようです。アナログも進化するのです。なかなかLPを完全に超えるのは難しい。何が違うのだろう。音の底力みたいなものが、なにか違うように感じるのです。 加えて言えるのは、高校生のころに買ったLP(ということはマスタング並みに35年以上も前ということ)が、宿命の針ノイズの存在を除けば、最新鋭のCDプレーヤーの音と聞き比べても、勝りはせずとも、著しくは遜色ない音で鳴るのは脅威というべきではないでしょうか。 (2007年10月14日)
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