ゲームのイベント探訪記


横浜ウエイターズレース


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ウエイターズレースはレストランや食事処、酒場などで働くウエイター・ウエイトレスが、瓶やグラスを乗せた盆を持って走る競走である。  元々はフランスのパリでウエイターたちのアピールのために始まったと言われており、はっきりした根拠はないがパリが発祥と認識されているようである。現在では他の国でも行われている。フランスでは現在、中西部の都市リモージュ(Limoges)で毎年全国大会が開催されている。2017年の大会では400mと4kmの2部門があった。4kmは街の主要な通りを一周する一時間ほどのコースである。

 日本で最初に行われたのは、東京都新宿区の神楽坂のフェスティバルだと思われる。神楽坂商店街では街のアピールをしようと、1999年から「神楽坂まち飛びフェスタ」というイベントを開催している。これは10月の中旬から11月の上旬まで、10種類を超す様々なイベントを行うものである。内容は毎年異なるが体験会(茶道、香道、着付け)、お座敷遊び、コンサート、落語会、お絵かき会、バザー、阿波踊りなどなど幅広い。そこで2007年から行われているのが同様のゲームだが、こちらはギャルソン・レースという名称で行われている。これは片手にトレイを持ち、その上に水の入ったコップを一つ載せて100mのコースを走るもので、一定量以上の水をこぼすと失格となる。神楽坂はビストロやカフェが多く、在日フランス人も多いことからと、フランス人のビストロオーナーの発案で始まった。事前申し込みが必要だが、一般人でも参加できる。筆者の記憶では当初は本職のウエイターやウエイトレスやバーテンダーが制服で走っていたが、いつからか一般人も参加できるように変えたようである。

 横浜では2011年にホテルや飲食店が中心となって実行委員会ができ、日本ウエイターズレース協会を立ち上げ、毎年11月に市内の日本大通りで開催されている。ルールはThe International Waiters Race Communityの公認ルールということであるが、銀のトレイの上に瓶と水の入ったコップ3個を片手で持ち、片道150mのコースを往復する。男子の部、女子の部、団体の部の3部門があり、団体は5人一組(女性が最低一名含まれていることが条件)でトレイ、瓶、コップは同じものを使用しリレー形式で一人一往復の計5往復をするものである。コップの水はこぼしても良いが、瓶は落として割れると失格となる。コップはプラスチック製なので落としても割れないが、瓶はガラスなので落ちれば割れる可能性は高い。途中瓶やコップを手で支えるのは構わないが、ずっと支え続けているのはルール違反となる。参加は飲食業関係者か料理関係の学校の学生に限られている。2016年には大阪でも行われたが、その一度だけで続いてはいない。

 筆者が取材に訪れたのは2017年11月の第7回大会である。会場は神奈川県横浜市の日本大通り。横浜公園から大桟橋まで、近くには横浜市役所や神奈川県庁もある横浜市の中心部である。道路の一部を封鎖して競技コースが作られ、両わきの歩道には会場アナウンスを行うための櫓やスタッフ用テント、看板や表彰台などが設置されていた。参加者は毎年ほぼ同じ横浜のホテルやチェーンの飲食店を経営している会社のようだが、横浜の飲食店に限られているので当然といえば当然である。大会の前後の挨拶でもライバル意識丸出しのような発言が随所で聞かれた。

 パリや神楽坂では水をこぼしてはいけないので、競技者は競歩のような感じでヨチヨチと歩いていくが、横浜の場合はコップの水をこぼしても良いし、倒れそうになった瓶やコップは手で直して良いので、スタートから全力でダッシュする人間が多く、スピード感はあったが、逆に面白みに欠けた。というのは、コップの水をこぼし、空になったコップをお盆の上に横になった状態にしてしまい、瓶だけに気を付けて走れば全力疾走に近い速さで走れるので、結局体力勝負・走力勝負に近いのである。パリや神楽坂は水をこぼさないようにしなければならず、さらに手を出してはいけないため、走りたいが走れないもどかしさが見ていて笑いを誘う。レース後は時間が記録され、上位者による準決勝、決勝と続いた。協賛企業も多く、ホテルのディナー券などが商品として提供されていた。 (2017.11.23)

 


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