ゲームのイベント探訪記


「全国泣き相撲大会」


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赤ん坊を向き合わせて泣かせる泣き相撲は国内で10ヶ所以上で行なわれている。特に神社の神事として行われているところが多い。今回取材した岩手県花巻市は、かなり歴史が古く、この平成22年の行事が、第21回というものである。

 花巻市とは言っているが、市町村合併のため花巻市となった、元の郡東和町というところにある成島三熊野神社の行事である。成島三熊野神社は花巻市市街から離れたところにある。行くには花巻駅からJR釜石線で20分ほどの土沢駅で降りる。ここからバスがないことはないが、一日2,3本程度なので、タクシーを利用した方が便利だ。もっとも乳幼児連れということもあり、参加者の多くは車で来ていたようだ。タクシーで走ること約10分。広い駐車場が神社の登り口である。見上げると山の中腹に神社らしきものが見える。神社はかなりの急斜面を上ったところにあるのである。神社の近くの駐車場は使えないため、この日は駐車場との間に無料シャトルバスが運行する。参加費にはその料金も含まれているのだろう。

 参加者は全国から800名。ゴールデンウィークなので、この地方出身で実家に帰っている者もいると思うが、わざわざこのために来ている者もいるのだろう。参加費は15,000円。内容的には安くないと思うのだが、一生に一度のことと思えば安くないのかもしれない。この人数が一度に対戦するわけではない。5月3日から5日までの3日間、一日3回行うのである。計12回だが、それでも1回70名ほど。取り組みにして約35番である。

 まず一同は神社の外に並ぶ。時間がくるとそろって鳥居をくぐり参道を歩いて社殿の前まで移動、ここに上がってお祓いを受ける。土俵から少し離れた所にはアナウンス席が設けられ、男女一名ずつのアナウンサーが見学の者が飽きないよう、いろいろと話をしてくれる。それが済むと、一同は横にある土俵への通路前に整列。合図とともに入場である。入場の間、アナウンサーは全員の名前を読み上げる。「○○ちゃん、○○出身、○○部屋」という具合だ。部屋名は名字である。昨今の流行だろうが、どういう漢字を書くんだろう、とか、日本人なのだろうか、という名前ばかりだが、もはや驚くようなことでもない。

 土俵上にそろったら、東西分かれて着席。試合開始の前に方式が説明される。多くの泣き相撲は相撲取りなどが抱えて向き合わせるのだが、ここでは紋付き袴をつけた男2人が抱える。この2人は親方と呼ばれ、向き合わせる際は「ヨゥ、ヨゥ」と声を出す。この声を見学者一同も出して欲しいとのことで説明アナウンスがある。「では練習してみましょう」ということで、会場一同で「ヨゥ、ヨゥ」。みんなで大きな声を出して赤ちゃんを泣かせてください、とのことだが、ここの泣き相撲は泣いた方が負けである。多くの泣き相撲は先に泣いた方が勝ちで、早く泣けとばかりに大きな声を出したり、怖い顔をしたりするわけだが、ここは泣かない方がよいのである。勝負は早い。なにしろ35番を2時間ほどで片づけなければならず、しかも毎回呼び出しがあるのである。勝負は「ヨゥ、ヨゥ」を2回やって、行事が勝敗を決定する。どちらかが泣くまで待っていられないのである。行事が両者の顔を見て軍配を上げ、決まり手を言う。ここの泣き相撲の面白いところは決まり手があることである。その種類も多い。「暴れ泣き」「しらんぷり」「微笑み返し」 などなどユニークな名前が付けられ、発表されるたびに会場から笑い声が起きる。
こうして30数番の取り組みが終了。表彰式ということで、何名かが呼び出され賞品が渡される。表彰の基準は不明だが、変わった決まり手や、わざわざ遠くから来た人なのかもしれない。
 こうしてお開きとなるわけだが、そのころには次の組が鳥居の外で行列を作っていた。神職たちもこの3日は大忙しのようであった。

 

 

 

 

 

 


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