ゲームのイベント探訪記


「女郎ぐも相撲」


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 蜘蛛の闘いが見られるのは、鹿児島県加治木町と、ここ四万十市の2ヶ所だけである。以前は中村市と言っていたが、合併で四万十市となった。高知からJRの特急で約1時間半。普通列車だと3時間ほどかかる。この町の一條神社で行われる「女郎ぐも相撲」が今回の目的。朝9時からと早いので、前日に入り、駅前のビジネスホテルに宿をとる。駅は町の外れにあるため、中心部までは15分ほど歩かなければならない。

 朝8時半に宿を出て神社に向かう。大きなビルはあるが寂しい感じだった町は中心に近づくにしたがって頼もしい町並みになっていった。会場となる一條神社は町の中心部。朝9時の競技開始というので、事前準備から見ようと行ってみると、そこには高い石段が待ち受けていた。登ってみると山頂に確かに神社。その境内の一角にテントが建てられ準備の真っ最中。建物の一つの前に椅子が並べられ観客席になっている。石段を上がったところに受付が設けられ、準備完了。

 時間が近づくと、蜘蛛を持った子供が次々と登ってくる。競技場となる建物は畳8畳くらいの木造の小屋と言った殺風景なもので、ふだんは何に使われているのか分からないが、造りでは、ただの小屋の側面を外したようにも、また、舞台のようにも見える。ここに2箇所、闘技場が設けられる。加治木町の蜘蛛合戦同様、行司用の席、その前に、箱の中に立てられた縦棒と、それに垂直に結ぶつけられた横棒である。

 加治木町の蜘蛛合戦は300人以上も集まったが、こちらは50人程度、それも多くが子供で、付き添いだけの親が多いから出場する蜘蛛は、30匹程度である。 開始時間が近づき、神主のような格好をした行司が現れる。後から聞けば神社とはなにも関係の無い方だとか。

 試合形式は加治木町の蜘蛛合戦同様、まず1匹の蜘蛛を横棒に乗せ、棒などでつついて一番端に追いやる。こちらの蜘蛛をカマエと呼ぶ。続いて、シカケと呼ぶ二番目の蜘蛛をその横棒の中ほどに止まらせる。うまく止まったら端の方に追いやる。こうして2匹の蜘蛛はぶつかり、喧嘩を始めるのである。絡み付きながら格闘しているかと思えば、糸を枝に付けて垂れ下がったり、展開はなかなか複雑で面白い。特に決まり手というのは定めていないが、落ちたり逃げたりした方が負けとなる。ぶつかった蜘蛛が必ず喧嘩をするかというとそうでもない。すれ違ってしまったり、相手を無視して糸をかけて降りてしまったりと、生き物は人間の期待どおりに動いて暮れないから、また面白い。降りた蜘蛛を引っ張り上げたりし、行事は苦労しながら二匹を対決に向かわせるのである。

 中村の蜘蛛相撲は体長による二段階制で、大型と小型に別れている。トーナメント形式で試合は進んでいく。昼過ぎには優勝者も決まり、表彰式。参加者が帰って行くと、役場の職員らしきスタッフは、片付けにかかる。生き字引のような行司に話を聞くと、この蜘蛛相撲、元は応仁の乱の頃から始まったらしいが、詳細はわからないとのことであった。町に下りると、祭りと言うことで、メインストリートは様々な売り店が出ていて賑やかだったが、一本外れると静かな町並みが続き、8月というものの爽やかな午後であった。

(2006.8.)

 

 

 

 

 


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