ゲームのイベント探訪記


薩摩なんこ

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 東京は身を切るような寒さだったが、南国鹿児島は20度近い暖かさである。鹿児島県姶良(あいら)郡加治木町。鹿児島湾のちょうど北の端あたりに位置する人口3万ぐらいの小さな町である。ここで毎年、この地方の伝承遊戯である薩摩なんこの大会が行われる。薩摩なんこは長さ約10cm位の木の棒を3本ずつ後ろ手に隠し持ち、何本かを相手に見えないようにして出し、互いの合計を当てあう遊びである。

 会場は加治木町商工会館。今回は第30回大会とのこと。年に2回の年もあったので、年としては28年目とのことである。今年の参加者は約140名。昨年は170名であったが、大きな企業が撤退したために減ったらしい。

 会場は中央部にビニール製の畳が敷かれ、外側には食堂風に机と椅子が並んでいる。参加者には弁当と焼酎、手ぬぐいが参加賞として配られる。夜6時半開始だが、 6時前から多くの参加者が詰めかけ、夕食タイムとなっている。年に一度の大会だ。 机の上で缶ビールや焼酎の瓶が開けられているのは言うまでもない。

 中央部のビニール製の畳だが、三畳ぐらいずつの区画が5つ設けられている。一つの区画には6つの席が設けられ、同時に12人が対戦できるのである。対戦席には、まな板となんこ棒が6本、横に焼酎の瓶と猪口が2つ、箸が3本置かれている。箸は勝ったものを記録するためのものである。試合は3本のうち2本先取で勝ちとなるのである。焼酎はもちろん負けた方が飲む罰杯である。高地の箸拳では2本取られて試合に負けた方が飲んでいたが、こちらでは一本負けるたびに飲まなければならない。審判は、3席に一人付いている。がほとんどの参加者はルールを知っており、進行に問題は無いようであった。

 まず、開会式。会長挨拶の後、来賓として助役と松元町商工会長の挨拶。鹿児島市の西にある松元町でもなんこの大会が行われているのである。続いて規則の説明。といってもルールではなく「礼に始まり礼に終わること」「正座を崩さないこと」といった心得のようなものである。

 そしていよいよ個人戦から、となるが、始まると会場は騒然として大変だ。試合自体はそれほどうるさくはないのだが、一試合が短いために、始終対戦者の呼び出しが行われているのと、人の移動が頻繁なのである。個人戦が準決勝ぐらいになると、女性のみによる女王戦が始まる。だが、個人戦の上位に女性が何名か残ったため、対戦順序が大幅に変更されこちらもてんてこ舞。だがもともと参加者が少ないため、たいした混乱も無く終了。

 その後は団体戦だ。気合が入るのだろうか、さすがにこれが一番うるさい。この大会は、個人戦も女王戦も決勝まで行ってしまい、箸拳のように決勝だけ最後に残すというようなことはしていない。しかも、すべてトーナメント表を作っておきながら、個人戦は各区画で一人になるまで試合を行い5人による変則トーナメント、女王戦、団体戦は3つの区画を使い各区画で一人/1チームになるまで試合を行い3人または3チームで巴戦だった。きれいにトーナメントにできるはずだが不思議だ。このあたりも地方の古い遊びの面白いところだろうか。団体戦の決勝は3戦目で一方の組の一人が現れず、不戦負けであっさり終了。ほんの数分前まではいたはずなのに、これも不思議な話だ。

 そして表彰式。傍らでばたばた片付けを行っているという、落ちつかない式だ。参加者の半分以上が帰ってしまっているのも結構情けない。優勝者にはちょっと不似合いな優勝旗とトロフィー。副賞はもちろん焼酎の一升瓶だ。女王の副賞は大鯛一尾。何はともあれ年に一度のお祭りである。忘年会もかねて、なんこ大会の参加者は実に楽しそうであった。 (2001年11月9日)

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