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コラム4 オールレザーソウルの英国靴が減っている

 はじめて本格革底の靴を買ったとき、お店の人から言われました。「歩くときは滑らないように気を付けてくださいね」と。冗談きついな〜と笑顔で返したら、案外その店員さんの表情は真顔だったのを覚えています。そして一言。「英国靴を履いていて滑って転んで死んだ人もいるぐらいです」
 ま、まっさか〜と思っていたのですが、その後、私自身がその言葉が冗談ではないことを、いやというほど実感することになります。英国靴を履いていてツルッと滑ることを…。
 ジョン・ロブのシティーやエドワード・グリーンの靴底って完全に革だったのです。とくに雨のときがひどい。「滑るぞ〜滑るぞ〜」と注意しながら歩いていてもツルッと滑ってしまう。実に危ない。また、滑りそうになるときメチャクチャ格好悪い姿勢になってしまう。紳士も形無しの状況です。そもそも英国をはじめとした西欧各国はアスファルト舗装ではなく大抵、石畳だったりするのですよね。ですから完全な革底の靴を履いても恐らく滑るようなことは極めて稀なのでしょう。一方の日本はどこに行ってもアスファルト舗装かあるいはツルツルの床材なんですね。
 ページ作者が経験したツルツルの床で特に「何とかしてくれ〜」と思ったのが新幹線の新大阪駅。ホームからコンコースに降りるエスカレーターがあり、エスカレーターから降りるや否や、ツルッと滑ってしまいます。なぜかエスカレーターを降りたところの四方だけ黒塗りの床仕様でしてここが特にツルツルさせてあるのです。他のところはそれほど滑らない床材なのにわざわざエスカレーターを降りて最も滑りそうなところだけこういう滑りそうな床材を張っているのです。およそ喜劇のワンシーンをギャラリーに見せるために用意しているかのような状況なんですね。あともう一つ、阪急三番街のファッションフロア一帯もひどい。とくに案内所のところがヒドイ。ツルツル滑ります。完全革底の靴を履いていたらスケートのように滑っていけそうなぐらいのツルツルの床材なのです。
 で、その後、SHOP店頭で英国靴を見ているとジョン・ロブやエドワード・グリーン以外の英国靴はかかとの部分に若干ラバーを張っていることに気づきました。で、こういう靴を履くとあまり滑らないんですね。見違えるように歩きやすくなるのです。いつからこうなったのか分からないのですが。
 その後、ファッション雑誌誌上でも靴底の貼り替えの話題でツルツル滑る完全革底の靴をかかと部分だけラバーを付けた革底に替えて歩きやすくなる情報が紹介されるようになりました。
 でもなんとなくその頃にはツルツルすべるオールレザーの靴底こそ、英国靴たる存在証明のように思えるようになっていたんですね。ツルッと滑ろうが構わない!それぐらいの決意がいつの間にか私の中に確立されていたのです。
 で、今回、そのジョン・ロブの靴をはじめて底の貼り替えに出したのです。街のミスターミニットなどに貼り替えに出してもよかったのですが、はじめての貼り替えだったので今回は正規店であるジョンロブの大阪店に貼り替えに出してみることにしたのです。
 すると「今はもう、滑り止めのためかかと部分にラバーをつけて切れ込みも入れるのが一般的なのですがそうされますか?」と言われたのです。ま、まさか。「そうです。今、売られている靴はこういう風に靴底のかかとにラバーを付けて滑りにくいように施されています」といって店員さんは陳列されている現行のジョン・ロブの靴の底を見せてくれました。すると、な、なんと靴底に滑らないためのラバー部分がかかとに!
 な、なんといつの間にかジョン・ロブもかかと部分にラバー処理がなされていたのでした。そういうわけで私も店員さんのアドバイスに従ってかかと部分にラバー処理をしていただくことに。で、こうして靴底の貼り替えが出来上がってきました。キレイにラバー処理をしていただきました。ちなみに正規のジョンロブのお店での貼り替えだけに、底にはちゃんと「John Lobb」と「made in England」の銘が彫り込まれていました。(革底の貼り替えだけで2万円台前半のプライスでした。ま、さすがちょっと高いですかね(笑))


かかとがラバー処理された貼り替え後のジョン・ロブ「シティー」!
(右端にフレームインしているのはエルメスのかばん!サック・ア・デペッシュ)

 で、貼り替えが終わってこうして手にとってみてフツフツと沸いてきた疑問があります。ひょっとしてこの靴底のかかと部分にラバー加工を施す処置は日本市場向けだけのものではないのか、と。英国本国で売られている靴にはこのような処置はほどこされていないのではないか、と。それならばわざわざラバー加工をしないほうがヨカッタのではないだろうかと思えてきたんですね。ま、このほうが歩きやすいので大人しくラバー加工をしてヨカッタのでしょうかね(笑)

(2005.04.06)


コラム3 自分の「服装記録」をとろう!

 よく雑誌の企画に「一か月、着回し術」なる企画がありますよね。限られたスーツ、シャツ、鞄、ネクタイなどをいかに巧妙に組み合わせて一ヶ月間を過ごすか?という企画。ま、あんなものほとんど参考にならないんだけど結構、気になる企画だったりしますよね。でも、だったら自分で「着回し」のパターンを構築すればいいんじゃない?って思うのです。 で、まず、自分の「服装記録」なるものをとっておくと結構いろんなところで役に立ったりするということをここで提案させていただきます。
 ページ作者は数年前から自己の服装の組み合わせを記録していてそれが結構、服選びから日常のコーディネイトで役に立っているように思います。「○月×日 スーツ:ベルベストのグレイ、シャツ:バルバの白、ネクタイ:エルメスの赤」…といった感じで可能な範囲で記録していきます。私もはじめは手帳に毎日、ちょろちょろと書いていました。もし多少余裕があれば「今日は雨の日だった」とか「今日は辞令交付の日だった」など、その日、服装を決めるのに参考とした情報も併せて記録しておくとなおいいんじゃないでしょうか。んで、その中で「今日の組み合わせは良かったな」と思った日にはその旨、印を打っておきます。こうすることでどういうアイテム同士の組み合わせが自分には合うのか、といったあたりが漠然と見えてきます。また今後買うネクタイやシャツの選定にも役立ちます。「自分にはストライブの茶色のネクタイが不足しているな」といった感じですね。
 最近では手帳にちょろっと書くのではなく、エクセルのシートに入力するようにしています。パソコンを立ち上げると自動的に入力シートが立ち上がるようにスタートアップに登録しておくのもいいでしょう。この方法だと気に入った組み合わせの日には◎をつけておくと、後日、「この靴と鞄の組み合わせにフィットするネクタイはどれか?」といった情報を過去の経験蓄積から簡単に引っ張り出すことができるわけです。こうしてやっていくと自然と「着回し術」なるものもいちいち作らなくても自然とベストの組み合わせを組んでいくことが出来るようになると思います。

 というわけで皆様も一度、だまされたと思って始めてみて下さい。「服装記録」なるものを。

(2005.01.05)


コラム2 セレクトショップという「幻想」!?

  最近、いろんな意味で気になったニュースのひとつが、衣料品を扱う輸入商社がルーマニア製のスラックスをイタリア製として輸入、名の知れた多数の大手セレクトショップに卸し、最大4年間にわたりイタリア製のタグを付け販売していたことが判明し公正取引委員会がこの輸入商社をはじめセレクトショップなどに排除命令を出した との報道でした。この輸入商社はスラックスを製造していたメーカーがイタリアのメーカーだったためイタリア国内で縫製されていると誤解していたとのことです。 この一件に関しては、輸入商社や販売していたセレクトショップですでに回収、代金返金の対応を行っているそうで、それ自体は若干の告知の遅れなどはあるものの異論 なく推移しているようです。
 この一件で気になったのは問題となったスラックスを輸入したのは個々のセレクトショップではなく一つの輸入商社だったというところ。各セレクトショップは単に販売していただけだったというのです。公正取引委員会の排除命令に対し各セレクトショップは「原産国を実際に確認できるのは輸入商社で、販売会社は商社の情報に頼るしかない」として不服表明しており、セレクトショップ自ら、自分たちのことを「販売会社」に過ぎないとしています。まぁ、このコメントは今後の販売活動に足かせを受けたくないため意図的に自らの役割を小さく主張している面はあると思いますが、やはりセレクトショップ自ら が自己の役割を単なる「販売会社」とした点に私は少なからずショックを受けました。
 これは現実にはもはや完全な理想に過ぎないのかも知れませんが、大手セレクトショップは、それぞれが個別に国内外を渡り歩いていろんなお店をまわって現地で商品を各ショップなりの審美眼でセレクトして買い付けを行い、それを 自分の店で販売する、そういった存在であってほしい。セレクトショップにはいろんな商品が少量ずつ置かれていますが、商品が大量に置かれていないのはそれだけしか手に入らないのであって決して希少価値を意図的に煽っているものではない、そうあってほしいのです。
 業界に精通した人に言わせれば、そんなこと現実にはまったく不可能で絵空事なのかも知れません。一部の高級ラインはともかく、すべての商品にそこまでのことは不可能だと言われるかも知れません。効率性を重視すれば一つの商社を窓口にして複数のセレクトショップが仕入れをするというのが現実なのかも知れません。ですが、それを百も承知の上で、 大手セレクトショップはやはり自らモノをセレクトするお店であってほしい 。どこの大手セレクトショップに行っても多少の別注ラインを除き同じ商社を通じて同じようなものばかり並んでいる…それでは何のためのセレクトショップなのでしょう?
 そういう意味で今回の件はセレクトショップに対して漠然と持っていた「疑い」のようなものが現実に具体化したように思え、ちょっと失望してしまいました。
 またもう一つ残念なことはこの件をメンズファッション関係の雑誌が全く言及しないこと。趣味的な雑誌なのだからそんな無粋なジャーナリスティックすぎる事柄は触れないほうがいいと判断されているのでしょうか。でも ファッション誌を名乗るからには例えば編集後記のようなところでひとことぐらい触れるべきではないでしょうか。いや、ひょっとすると、メンズ雑誌が触れない最大の理由は各誌の大口の広告出稿先に関する悪いニュースだからなのではないのでしょうか。メンズ誌だけでなくいろんな服飾関係の評論家もこの件にはまったく触れようとしません。こういうところ を見るにつけなんとなくこの業界のクリティーク面での胡散臭さを感じてしまうのは考えすぎなのでしょうか。

(2004.12.05)


コラム1 ショーウィンドーはチラシじゃない

 ひとくちに「紳士のお店」といってもいろいろあります。私は旅先でも「紳士洋品店」なるものを探索するクセがあっていろんなところを訪ねています。でも残念ながら訪れてもこのサイトに載せられるようなお店はほんの一握り、ということになっています。
 いわゆる「いいお店でないお店」は、店のショーウィンドーを見ただけである程度判断できてしまいます。そう、ショーウィンドーに並んだスーツやネクタイなどなどにペタペタと値札を大書して貼ってあるお店。こういうお店はまずダメだと考えて間違いありません。
 服や靴などモノの価値は貨幣価値だけで換算出来るモノではありません。値札がついているとついついそのモノを貨幣価値を前提に考えてしまいます。ショーウィンドーに飾る行為は、そのお店が今、どんな装いを提案しているのか、あるいは基本的にウチにはこんな質のいいモノがある、ということをアピールする行為だと思います。その際に値札がついていると観る者に余計な先入観を与えることになってしまいます。そういうことを分かっているお店なのかどうなのかが値札の付け方を見ると分かるのです。最善は全く値札を付けないこと、だと思います。それが無理なら目立たない程度に小さく値札を付けるよう心がけるべきです。
 ところが実際には飾られている服の横に値段をバーンと大きく書いて付けているお店が多いんです。地方都市に行くほど多いですね。残念なことにショーウィンドーをチラシと同一のように考えているお店が結構あるんですね。こういうお店は中に入ってもロクなモノは置かれていない、と考えて良さそうですよ。

(2004.10.02)


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