読書ノート (1997年4月)

複雑系の経済学
週間ダイヤモンド編 ダイヤモンド社 1997年2月6日発行
2,060円

1997年4月6日

先月末から読み始めているが、 年度替わりの関係もあって忙しく、 なかなか読み終えることが出来なかった。

 この本は、「週間ダイヤモンド」の特集記事と、 複雑系の研究のメッカであるサンタフェ研究所の ブライアン・アーサー教授の論文などを編集したものだ。 従来の単純さを求めてきた物理学者の間に、 新たな視点から複雑さを追究しようとする動きがでてきたという。 そして、1980年代以来、ノーベル賞受賞者を含むアメリカの物理学者数人の発案で サンタフェ研究所が作られ、 複雑適応系(complex adaptive system)の研究推進をおこなってきた。 これは、複雑な系の中には生物や社会のように内部に判断機能をもち、 外界に適応する能力をもつ存在があり、 それらを研究対象にしようというものとのことである。 これまでの要素還元型とは違った新しい科学への発展が期待されている。

 第一部の「収穫逓増の世界」では、現在の経済全体が、 従来の大量生産の分野と、収穫逓増型のハイテク型の分野に 大きく分かれつつあると指摘している。 第二部では、「変容する経済学」が述べられているが、 正直なところ良く理解できなかった。 第三部は、日本総合研究所の田坂広志氏により、 企業経営への応用が書かれているが、 これは面白く、興味深く読んだ。

 「複雑系」というキーワードに対し、 おぼろげながらイメージがつかめた。 どうもこれはだいぶ重要なパラダイムのようだ。 もう少し、他の本も読んでみたい。


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成り上がりの時代
落合 信彦 ザ・マサダ 1997年3月26日発行
1,545円


1997年4月13日
 終身雇用制が崩れつつあるという。 家族的経営ということを売り物にしていた大企業でも、 リストラの名の下に中高年を対象に首切りを行っている。 このリストラは中高年だけでなく、20代30代の若者にも 広がってきているようだ。 若くても見込みのなさそうな者は、いずれ会社のお荷物になるので、 早いうちに間引きをしてしまった方が良いらしい。

郵便局の場合でも、民営化でもされれば、すぐにでもリストラが始まるだろう。 いや、すでに実施され始めた総合担務制とか、 新しい人事制度はその始まりとも言える。 公務員だからといって、定年まですんなりと勤め終わるという時代は終わった。 こうしたことに対処するには自分の実力を付けるしかないということを、 本書を読んで再確認した。



家族シネマ
柳 美里 講談社 1997年1月31日発行
1,236円


1997年4月15日
 このところビジネス書ばかり読んでいるが、 久しぶりに小説を読んでみた。 本屋で芥川賞受賞作品として、 たくさん平積みにしてあったので買ってきて読んだ。

表題の他に「真夏」「潮合い」が収められていたが、 潮合いが面白かった。 中二の子供がいるので、 いじめ問題とか小さい子供の考えていることに関心があるからだろう。 やはり読んでいるときに関心のあるテーマは面白い。 同じ本でも読む時によって、全く違った印象を受けるのは良くあることだ。

自局のロビーには本を300冊ほど置いてあり、 貸し出し自由にしてあるので、 わりとよく利用いただいている。 この手の本はすぐに借り手が付くだろう。



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