読書ノート (1997年2月)


不機嫌な時代 JAPAN 2020
ピーター・タスカ 講談社 1997年1月20日発行 1,600円


1997年2月2日  表紙gif

 副題の2020とは西暦2020年の、日本の政治経済体制を予測しようというものだ。 非常に大きな問題で、自分にはだいぶ難しい内容だった。 しかし、今の日本が『閉塞状態』にあり、大変な岐路に立たされているという感じは強く持っており、 最後まで興味深く読むことができた。

 ところで、再配分連盟(redistributional coalition)という言葉をご存じでしょうか? 私はこの本で初めて知ったのですが、マンクール・オルソンという経済学者がいったようです。 補助金、関税、特別減税、あるいは新規参入を妨害する様々な規制によって メリットを受けている団体のことだそうです。 この定義によると現在日本の大半の仕事がこれに相当するとのことです。 例えば医者とか弁護士は試験という仕組みで新規参入を妨害しています。 また、自動車整備業界は、車検制度でメリットを受けています。 著者によると、族議員の存在、供給者寄りの行政、 内外からの新規参入が非常に難しい日本のビジネス習慣を考えると、 日本は再配分連盟の天国になる資格があるという。 マスコミもそうだし、何と言っても改革をリードすべき政治家自身が再配分連盟そのものだ。

 どうも全体を読んでみて、日本の将来に対して悲観材料が多くて暗い気持ちになる。 「終章」のシナリオ1を読んで背筋が寒くなったが、 大いにあり得る話だ。 ぜひ情報を核にバランス成長できるシナリオ2でいってもらいたいものだ。 なお、シナリオ3の中では郵政省は二分割され、 電信事業は通産省へ、郵便事業は大蔵省へ組み込まれることになっている。

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食に知恵あり
小泉武夫 日本経済新聞社 1996年9月19日発行 1,600円

1997年2月6日

 この「食に知恵あり」は、日本経済新聞に毎週連載されており、 以前から楽しみにして読んでいる。 本書には平成6年4月から8年6月掲載分までを載せてある。 去年から買ってあったのだが、 一応読んでいるのでそのままにしておいたのだ。 ところで、先週の金曜日で終わったが、 NHKラジオ第一放送の「朗読の時間」でこれが取り上げられていたので改めて読んでみた。 小泉さんは2月2日のNHK FMにも出演していた。

 今朝の日本経済新聞にも載っていたが、テーマは「川ガニ」だった。 いつもながら独特の書き方で、読んでいて思わずよだれが出てきそうになり、 実際に食べてみたくなる。 ちょっと長くなるが引用したい。 『モズクガニのオスを一匹手に取り、 親爪(ハサミのところ)を外して殻の下の肉を平らげてその甘さと上品なうまみを味わい、 次に小脚内の肉をむさぼる。 あとは甲羅を外して、手で左右に折り曲げて二つ割りにし、 手づかみでやおらしゃぶりつく。 途中、甲羅の内側に付いているカニミソをなめ、 そして次にメス。肉身を食べてから、甲羅を外し、 二つ割りにすると中には卵巣が詰まっていて代赭色を帯び、 そこに口を付けてペロリとやる。重厚にして上品、トロリとして甘くてうまい。 人間がいまだ本姓をつかみ切れていない幻の味がそこにあった。 「淡味集合して濃味を成し、その濃味強からずして無上の淡味を呈す」。 川ガニの味をこう見た。』

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  大失業時代 the END of WORK
ジェレミー・リフキン TBSブリタニカ 1996年5月24日発行 2,000円

1997年2月8日

 今朝の日本経済新聞の一面トップは、
「転職求職者200万人越す 失業増加の恐れ」だ。 グラフを見ると、我が国の完全失業率は92年の2%から現在の3.5%まで一貫して増え続けている。 今後は雇用問題がますます大きな社会・経済問題となってくることだろう。

 本書によると、失業の増加は日本だけの話ではなく世界経済全体の必然的な方向のようで、 産業のほぼあらゆる部門で人間を機械に置き換えているテクノロジー革命のためだという。 従来ならある部門の労働者が技術革新によって職を奪われても、 別の新しい部門が誕生しその労働力を吸収してくれた。 受け皿になったのは流通業などが主なものだが、 これからはこの部門自体がリストラの対象となる。 これからの新興部門は起業家や、科学者、エンジニア、プログラマー、 専門労働者、教育者、コンサルタントなどの少数のエリートに限られ、 その必要とされる数も限られている。 職場を追われる何百万人という人の数に比べるとほんのごく一部に過ぎない。

 人間のする仕事が無くなっていくということは十分納得できたが、 ではどうしたらいいのだろうか? 時短によるワークシェアリングにより、 労働を皆で分かち合うのが良いだろう。 これも専門性の高い仕事を誰もがやれるとは限らないが、 そもそも単純な仕事はこれからますます不要になっていくのだからしかたあるまい。 そしてコンピュータとかロボットによって効率化し、 生じた余暇時間をボランティア活動等に使っていくということになるのだろうか。 いずれにしろ、雇用形態がこれから劇的に変化するのは間違いない。

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インターネット時代の情報発信入門
小栗 宏次 リバティ書房 1996年10月22日発行  1,300円

1997年2月10日

 多くの点でなるほどそうだとうなずかされた。 その中から次の5点だけ紹介したい。 (原文のままの引用ではありません)

1.これからの時代は農業、工業中心のように過去の分析によって未来を予測できなくなる。 むしろ先に未来を予測することによって、社会がそちらの方向に動き出すような時代となる。

2.情報社会が発展し誰もが容易に情報を入手できる高度情報化社会では、情報のみではなく、 その情報を生かして新しい創造的な何かを提案することに価値が見いだされるようになって来る。

3.これまで情報といえば「秘密」「蓄積」するものという考え方が主流であったが、 これからはむしろ「公開」「発信」という考え方が重要になってくる。 そして「どれだけ情報を蓄積しているか」ではなくて、 「どれだけ大量情報の行き来の中に自らを置くか」ということが重要になってくる。

4.安い部品の製造や安い賃金での生産ということだけでは差別化が難しくなり、 インターネットなどの情報システム活用により、 どこよりも早く新しい製品を市場に出すといった「スピード」が、 次の時代の勝者を決めるポイントとなる。            

5.地域からの情報発信では従来のマスコミなどでは「ボツ」であった情報こそが、 中心的な情報ということになる。地域からの情報を見て、 その地方へ行ってみたくなるような情報が大切。

 田舎の郵便局から情報発信を試みているので、 大変示唆に富んでおり、おもしろく読むことが出来た。 なお、著者自身も ホームページを作られているので関心のある方はどうぞ。             

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7つの習慣
スティーブン・R・コヴィー キング・ベアー出版
1996年12月25日発行 2,000円

1997年2月17日

昨日の日本経済新聞の週間ベストセラーで一位になっていた。 一週間前から読んでいるのだが、だいぶ手こずっている。 実のところなかなか内容に入り込んでいけなかった。 480ページのだいぶ厚い本だが、半分程まで読み進んで、 やっとすこしは同調出来だした。 この手の成功関係の本は10年以上前から、 カーネギーの本あたりを中心に10冊以上読んでいるが、 これはどうも自分には読みにくい。 内容自身はなるほどと思うことばかりで別に異存はない。

7つの習慣とは、主体性を発揮する、目的を持って始める、重要事項を優先する、 WinWinを考える、理解してから理解される、相乗効果を発揮する、 それと刃を研ぐだ。 明日から松山へ2日間出張だ。後半は帰ってから読みたい。

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1997年2月23日 (日)

 先週は出張が続き、あまり本を読めなかった。 第三の習慣「重要事項を優先する」はおもしろかった。 早速、自分自身も取り入れていきたい。 時間管理のマトリックスを緊急性と重要性で4つのカテゴリーに分け、 緊急ではないが重要なことに精力的に取り組もうという事だ。 ここには人間関係作りとか、健康維持、準備や計画、真のリクリエーション、 勉強や自己啓発、仕事の品質改善など 誰でも大切だと思っていることが挙げられている。 ただ、そうは思っても他の緊急性のある仕事に忙殺され、 先延ばしになって出来ていないことが多い。

 これを自己の人生目的を明確にした上で、 週間スケジュールを作ることにより、 自己管理していこうというものだ。 それにより緊急性のある仕事そのものが減っていき、 自分で対応できる範囲に収まってくると言う。 つまり、問題の根本のほうに働きかけていこうというもの、 問題を予防的に解決していこうというものだ。 これを実行するだけで、この本を読んだ価値はあったと思う。


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