スイスに関する本の紹介 その十二

 スイスの本について、まだまだ面白そうな本はいくつもあるのですが、齊木崇人氏の書かれた「スイスの住居・集落・街」(丸善)はとても面白かったです。
 ブリエンツ郊外のバーレンベルク野外博物館を本にしたと言えば当たらずと言えども遠からずといったところでしょうか。
 土地の性格、U字谷から、ミッテルランドの穀倉地帯、アルプスの山の中腹の村に至るまでも多くの集落の形態、家屋の特徴をさまざまに分類し、解説をしているこの本は建築巡礼というシリーズの中の一冊で、建築関係の専門書の棚から見つけたのですが、専門書というより、多くの美しい写真とともに分かりやすく解説をしてあり、私たちのような建築についての素人向きの良い一冊であると思います。

 次は、石川照雄氏の「絵地図でたずねるスイスの街角」(日地出版)です。これを頼りに行くのはちょっと難しそうですが、一件ずつ何があったか、後で思い出すのにうってつけです。
 マップを絵地図にするといっても、知っている街ならともかく、知らない街をこれで訪ねるのは、私にはどうしても無理なように思えますが・・・。
 しかし、とかく山とハイキングくらいしかスイスにはないがごとく扱われがちなスイスを街という視点で紹介してくれたことは、といも新鮮であったので、ここに紹介したいと思います。

 あと、時々古本屋さんに出ているので、見かけたらぜひにということで宮下啓三氏の「スイス・アルプス風土記」(白水社)を。
 スイス各地の民話を紹介しながら、その土地の人々がアルプスに対して持つ様々に感情を叙述すると、裏書に書いてありましたが、まさしくそんな本であり、有名なピラトゥスを舞台にした竜の伝説からスイス建国のテル伝説に至るまで、幅広く扱いながら、そこに住む人々の心をよく映していると思います。
 宮下啓三氏は多くのスイスに関する名著で高名でありますが、その多くが絶版ということで、手に入りにくくなっているのは大変残念なことであります。
 中でもこの一冊は宮下氏の博学なことを再認識させられるだけでなく、スイスという国を、そしてそこに住む人たちとその文化を理解する上で、大切なことを教えてくれる一冊です。
 まさに名著と言えるでしょう。

 さて、もう一冊、ちょっとハードで、実は私もまだ全部は読めていないので、エラソーに言えないのですが、U・イム・ホーフ著森田安一氏他の訳による「スイスの歴史」(力水書房)はしっかり教養をつけたい人向きですね。ニコラ・ド・フリューなどのスイス歴史上の偉人たちのことが余さず書かれているということで、一度は読んでおいて欲しい一冊です。

 以上、宮下啓三氏の本を除いて、今も本屋さんで手に入ります。旅行案内だけでは、文化はわかりません。ぜひ一度どうですか?