生保裁判連ニュース 第1号 1995・11
発行 生保裁判連事務局 竹下法律事務所(京都市中京区)
全国から160名の熱気の中
生保裁判の”ネットワーク”を結成
1995年10月8日、京都市内、ハートピア京都
日本全国各地に「いまの生活保護行政をなんとか変えたい」「権利擁護の保護行政を!」と、熱い心で求める仲間がこんなにたくさんいたとは・・・。
事務局として、予想を倍する参加者の椅子運びに追われながら、熱い感動が沸き起こるのを押さえることができませんでした。
小川政亮さんご自身の、まさに生きてこられた歴史そのままともいえる生活保護裁判との関わり。会場は時に笑いが起こり、時にため息がもれ、みんなひとことも聞き漏らすまいと気持ちのいい緊張が漂います。
集会では、おおいにお互いの経験を交流し、議論をしました。生活保護をめぐる裁判や連絡会の意義も出し合われました。
1993年には、秋田加藤訴訟で歴史的な勝訴を勝ち取り、京都柳園訴訟で完璧に勝利するなど、生活保護法に違反する違法な保護行政に断罪が続きました
さらに、全国各地で、国民の生存権を侵害する厚生省の生活保護「適正化」政策に対し、「権利を守れ」と闘いや訴訟が起こっていました。
しかし、全国各地のそれぞれの闘いはともすれば個々ばらばらになりがちです。訴訟技術上の問題も運動を進めるためのノウハウもそれぞれの成功や失敗の教訓が、お互いに生かされているとはいええない状況にありました。
全国連絡会が結成されたことで利用者自らの権利の貫徹という点で、大きな前進がはかれるものと考えています。
紙面の関係で、細かい事実経過や論点はお伝えできませんが、当日報告された各地の生活保護裁判は以下のとおりです。
【秋田加藤訴訟】
重度障害者の加藤さんが、将来の付き添い費用のために保護費から必死に貯めたお金を、収入として認定して保護費を減額。
「預貯金は必要」 「処分は違法」 と判示、原告が勝訴し、確定。
【京都柳園訴訟】
住居のない日雇い労働者の柳園さんが、重病となり入院。保護開始されたが、退院により保護廃止
「働けず収入がないのにの保護廃止したのは違法」と国家賠償責任を認め、原告勝訴、確定。
【東京岩田訴訟】
通院交通費の支給方法、洗濯機の修理費用の支給などを求め、提訴。
【甲府保護申請不当抑制訴訟】
疾病・困窮による保護申請に対し、「申請書」を交付せず、口頭申請も受理せず。入院による急迫保護の申請も無視。処分取消と国家賠償を請求中。
【名古屋林訴訟】
住居のない日雇い労働者林さんが、失業と疾病により保護申請したのに対し、医療扶助のみを数日支給し廃止。生活扶助・住宅扶助の支給と、廃止処分の違法性を争い、処分取消と国家賠償を求め提訴。
【金沢高訴訟】
心身障害者扶養共済の年金を収入として保護費から減額することは、不当として処分取消請求訴訟を提起。
【神戸ゴドウィン訴訟】
外国人留学生へ、医療扶助適用した神戸市に対し、国庫負担金を支給しないのは不当として代位請求。
一審では、「外国人に対し何らかの医療制度が必要」としながら形式的理由で棄却。控訴中。
【神戸服部訴訟】
付添看護費用に困窮し保護申請した服部さんに対し、実態とかけ離れた保険基準料金で最低生活費を計算し、収入オーバーを理由に却下。処分取消を求め提訴したが、阪神大震災を契機に「そちらに全力を尽くしてほしい」と取下。
【福岡中島訴訟】
保護費を節約してかけた学資保険の解約を指示し、収入認定。
「学資保険は保有を容認される」としながら、形式的問題や不当な事実認定を理由に棄却。控訴中。
【福岡増永訴訟】
車の一時的借用を理由に保護減額処分をしたのは不当として、取消を求め提訴。
(編集委員
H)
集会参加者の声
☆横浜市・(ケースワーカー)
日々の『業務』に追い捲られているだけでなく、きちんと向き合いながら「いつでも、どこでも、誰でも」その人固有の権利を保障することをも業務とする仕事づくりの必要を痛感します。当日の中でも話しがありましたが、例えば不服審査の仕方なども、具体的に対応するなども私たちの大事な仕事ではないでしょうか。久し振りに『後味の良い集会』に参加したとの思いが膨らんできました。
☆京都・府立大 4回生
朝日訴訟をはじめとして、人としての最低限度の生活を営むために、大変な苦労をされていること、に驚きました。私にとって、当たり前の日常生活を手に入れるために、大変な苦労をされている方々また周りの弁護士さん、ケースワーカーの方々など、裁判のいろいろな過程にわたってチームワークを大切にして頑張っていらっしゃる姿がよく判りました。
本当にいい勉強をさせて頂いたと思います。
全国生活保護裁判連絡会の規約
《規 約》(抜粋)
二条(組織)
(1)本会は、生活保護受給者及び生活保護を受けようとしている人達の権利の実現のために活動している弁護士、学者及びケースワーカー等により組織する。
(2)本会の趣旨に賛同する者は会に対し参加を申し出、会の会員名簿に登録されることによって会員とする。
三条(目的)
(1)本会は、生活保護法に関連する不服申立や訴訟を介して国民の生存権保障を実現するため、理論的実践的諸問題を研究し、且つ、必要に応じ支援協力する。
(2)ニュースの発行等により、生活保護に関する争訟事件等の情報交換を行う。
六条(財政)
(1)本会の財政は、会費その他の寄付による。
(2)年会費は、1口2、000円とし、個人1口以上、団体は2口以上とする。
《郵便振替》
口座番号 01000−6−21939
口座名義 生保裁判連
《役 員》
★代表役員
小 川 政 亮(金沢大学元教授)
中 川 健太朗(花園大学教授)
林 健一郎(福岡保護変更決定処分取消訴訟弁護団)
藤 原 精 吾 弁護士
内 河 惠 一(名古屋医療単給決定取消訴訟弁護団)
尾 藤 廣 喜 弁護士
小笠原 忠 彦(甲府生保申請拒否処分取消訴訟弁護団)
★事務局(連絡先)
竹下法律事務所
(郵便番号)604 京都市中京区竹屋町通麩屋町角
TEL 075−241−2244
FAX 075−241−1661
編集部より
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