updated Aug. 24 1998
派遣110番によく寄せられる質問と回答例(FAQ)


質 問 と 回 答 例 (F A Q)

6010. 私の職場は放送番組などを作っていますが、危険な大道具や小道具、照明器材などもあり、工場のようで危険が一杯です。派遣や他社の労働者が同じ職場で働いていますが、安全衛生委員会を一緒に作れますか?
 正社員だけで安全問題を話合っても職場に潜在する危険は解消しません。3K労働を派遣労働者や外部労働者に負担させて、正社員だけが安全に過ごせることは道義的にも、法的にも許されません。
 安全衛生問題は、労働安全衛生法の趣旨から、職場で働くすべての労働者が対象になるものです。できれば、派遣労働者や外部労働者も参加して、企業籍を超えて安全衛生問題に取り組める体制を作ることが必要です。労働者派遣法では、派遣労働者は、衛生管理者の選任や労働安全衛生委員会の委員選出の際に、算入するべきこととしています。委員を選挙で選ぶときには、派遣労働者も選挙権や被選挙権が認められなければなりません。
 労働者派遣法によって公認されることになった派遣労働者、派遣元事業主、派遣先事業主という三面関係は、派遣労働者の保護を不明確にすることになっています。

 派遣労働者が実際に就労する派遣先事業所では、別会社の労働者であるということから、派遣先事業主の派遣労働者に対する安全衛生面での取組みが軽視される可能性があります。その結果、危険、有害業務等が派遣労働者に命じられ、労働災害・職業病が派遣労働者に集中して発生することなりかねません。たしかに派遣類似の形態である建設関係の下請と警備業が労働者派遣法の対象から除外され、また製造工程の業務への派遣も除外されています。安全衛生をめぐる問題は従来からの下請労働関係で発生することが多く、労働者派遣の対象業務拡大のなかで、安全衛生の問題が派遣労働者に集中することになってきます。サービス業とされる病院においても、清掃業務を分担する下請・派遣労働者が、汚物処理の際に使用済みの注射針によって院内感染の危険にさらされていることが報告されています。
 派遣類似の複雑な雇用関係の下で、災害補償の責任が不明確になり、結果として被災労働者の保護に欠けることは、これまで様々な形で問題となってきました。たしかに民事損害賠償として争われた事例の中に、元請けの責任を認めさせた裁判例も増えてきたが、とくに下請労働関係の下で、労働者が十分な賠償や補償が受けられないまま苦しむ事例が多くなりかねません。

  派遣労働関係と安全衛生・災害補償責任

 派遣労働関係においては、上記のように派遣労働者が労災、職業病の危険にさらされる危険性が高いのですが、このような法律関係の場合、安全衛生の義務を負う事業主と災害補償責任を負う事業主は、派遣元事業主又は派遣先事業主のいずれかが問題となります。
 労働者派遣法は、これに対してきわめて複雑で分りにくい措置を定めています。すなわち、労働者派遣法第45条は、労働安全衛生法についてはそのほとんどの規定を派遣先事業主に適用するという「特例」を規定しています。この特例規定によれば、安全衛生規定は、総括安全衛生管理者、衛生管理者、産業医、衛生委員会などの安全衛生管理体制については派遣元と派遣先の双方に適用がありますが、安全管理者、作業主任者、安全委員会については派遣先だけに適用があります。なお、衛生管理者や衛生委員会等の設置義務のある事業場規模の根拠となる「常時使用する労働者数」には、派遣元も派遣先も派遣中の労働者を算入することになっています(昭和61・6・6 基発333号)。
 本来、労働者派遣法は、派遣元事業主が使用者としての責任を負うのですが、特例として派遣先にも安全衛生の責任を課すという形式を採用したのです。

 職場の現実を直視し、企業籍を超えて安全問題に取り組むことが必要

 最初に述べましたように、企業籍を超えた安全衛生問題への取り組みは重要です。請負(下請、外部他社)の形式であれば、受入企業とは独立して安全衛生の問題について、独自の責任がありますので、受入企業が法的に直接に責任を取ることはありません。もし、事故が職場で起きたときには、派遣労働者はもちろん、事業場内下請労働者についても、受入企業は損害賠償責任を負うことになります。
 安全衛生問題については、万一の事故が起きないようにする点では、派遣労働者、下請労働者、正社員、派遣元、派遣先(受入企業)、下請会社ともに、一致できる面がありますし、客観的にも、相互に密接に協力しないと事故は防げません。できれば、職場の統一安全基準を労働者全体が民主的に参加して集団的に決定して、事故は、誰一人決して起こさないという、働きやすい安全な職場を作ることが必要です。
 こうした安全衛生問題でも、労働組合をつくる条件がある正社員の責任とイニシャチブは重大です。
 民間放送では、以前からの取り組みのなかで、企業籍を超えた労働安全衛生委員会の取り組みを進めている日本テレビ労働組合の経験が注目されています。


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