updated Oct. 1 2000
派遣110番によく寄せられる質問と回答例(FAQ)


質 問 と 回 答 例 (F A Q)

3315. 派遣労働者の雇用保険への遡及加入  派遣元に何度かけあっても雇用保険に加入してくれません。遡って加入して給付はもらえますか。
 93年4月〜98年3月の5年間、ある企業で社員として働き、その後派遣として働きはじめました。社員としての5年間は社会保険・雇用保険に加入していました。
 派遣社員になってからあちこちの派遣会社から就業しましたが、
 98年12月〜99年7月(7ヶ月半)について、雇用保険の適用対象となると思うのですが、派遣会社Aで雇用保険加入してもらえませんでした。なお、2000年2月〜2000年6月については、派遣会社Bで雇用保険に加入しています。
 99年の7月までの仕事を終えた後「教育訓練給付制度」のことを知りスクールに通おうと思ったのですが、雇用保険に入っていなかったためこの制度を受けることも、失業保険を受給することもできませんでした。もしこの未加入の期間分をさかのぼって保険を払うことができたら、この制度受けることができるのでしょうか?
 もしできないとしてもこの件について派遣会社に賠償してもらうことはできるのでしょうか。教えて下さい。

 
 一般に、雇用保険の加入資格は、次のように説明されています。

 「常用型」の派遣労働者は、一般の労働者と違いませんので、当然に、雇用保険の加入資格が認められるとされています。しかし、労働行政は、一方で登録型派遣労働者を制度として拡大しているのに、「登録型」の場合には、通達で雇用保険の適用など厳しい扱いをしています。

 (1)反復継続して派遣就業する者であること、
 (2)家計補助的な者でないこと、が必要とされている。

 「反復継続して派遣就業する」とは、1年以上の継続勤務が見込まれることをいう。この1年の期間は、一つの派遣就業期間が短くても、引き続き他の派遣先に就業することになっているときには.その間に若干の間隔があっても継続して派遣就業する者であるとして取り扱われる。

 また、所定労働日がきわめて少ない者、所定労働時間がきわめて短い者、期間を限って派遣就業することを希望する者、その者の希望職種、技能から見て期間を限った派遣就業しか見込みのたたない者は、(1)に該当しないとされている。


 派遣会社Aと派遣会社Bとで雇用保険加入の扱いが違うということですね。

 実は、1999年12月施行の労働者派遣法によって、派遣労働者の場合についても、雇用保険加入が原則であることが確認され、派遣就労の前に、社会保険とともに加入して、そのことを派遣先に通知することが義務づけられることになりました。

 しかし、労働者派遣法の義務づけはきわめて不十分です。実際には、「1年以上の継続勤務」について、派遣会社に判断がまかされているのが現状です。その結果、1年を下回る契約期間で雇われることが多い登録型派遣労働者の場合、口頭では長期の派遣であっても、派遣元の勝手な判断で雇用保険に加入しない例があるようです。

 派遣会社Aと派遣会社Bとの雇用保険加入をめぐる対応の違いは、

 〔1〕派遣労働者について「1年以上の雇用の見込み」の要件にこだわる会社か、そうでない会社かによる違いか、
 〔2〕1999年12月以降の、新労働者派遣法による雇用保険加入指導が強化される前か後による違いか
 のいずれかではないかと推測できます。

 通常の労働者の場合、半年間の雇用保険加入があれば、失業給付を受けることができますし、教育訓練給付は通算で計算します。ごく短期であっても、雇用保険加入が原則であり、派遣労働者として「1年以上以上の雇用の見込み」は、その会社ではなく、労働者について判断するべきものだと考えます。派遣会社に判断をまかせる考え方は、雇用保険の建て前である強制加入の原則に反していると考えられます。実際に長期で働く実態があれば、「雇用の見込み」といったあいまいな基準で加入の資格を判定するべきではないと考えられます。

 他方、教育訓練給付制度の利用資格条件としては、
 〔1〕年令、性別に関係なく、雇用保険の一般被保険者期間が通算5年以上であることと、
 〔2〕一般被保険者であること、
 または、
 〔3〕転職した場合でも「離職後1年以内に再就職し、通算5年以上の一般被保険者期間がある」場合に、「現在は働いていないが、通算5年以上の被保険者期間があり、かつ離職後1年以内」ということ
 になっています。

 そうしますと、99年7月の時点で、〔2〕一般被保険者であるか、〔3〕離職後1年以内であれば、教育訓練給付を受給できたことになります。
 派遣会社が勝手な判断で加入をさせないことは許されないことです。遡っての加入は、2年間までなら可能です。もし、そうした手続きがとれなかったり、2年を超えた部分については、違法に加入しなかった派遣会社に、損害賠償を請求することが可能です。 経営者向けの相談・回答例でも同様な考え方で、労働者から企業への損害賠償を認めています。

 なお、この相談では、相談者ががんばって、遡っての加入を認めさせることができた旨の結果報告をいただいています。
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