updated Sept. 6 1998
派遣110番によく寄せられる質問と回答例(FAQ)


質 問 と 回 答 例 (F A Q)

3072. 派遣先で残業をしてくれといわれたらことわることはできるのでしょうか?
  まず、派遣元と結ぶ労働契約(雇入れ通知書)に残業(時間外労働)に応ずる旨が定められていなければ、残業に応ずる必要はありません。

 労働省が、派遣元に示している「モデル雇入通知書」では、「7 『時間外,休日労働』を例外的に行わせることがある場合には、その程度(時間・日数)を記載すること」とされています。労働契約とは別に、派遣元の就業規則で、残業についての規定があり、時間数や残業に応ずべき場合についてより有利な基準が定められていれば、この就業規則の規定が優先します。

 次に、派遣就労の最初に渡される就業条件明示書に残業することが予定されていなければ応ずる義務はありません。登録型労働者派遣の場合には、雇入れ通知書と就業条件明示書が兼用の書式になっている例が多いようです。就業条件明示書は、雇入れ通知書とは違って、文書で交付することが義務づけられています。そのなかに、「5.派遣就業の開始・終了の時刻および休憩時間」とともに、「10.派遣就業日以外の就業や時間外の派遣就業ができるとした場合の当該の日又は延長できる時間数」を記載することになっています。
 右の雇入れ通知書や就業条件明示書に、時間外労働について記載されていないときは時間外労働に応ずる義務はありません。また、定められた範囲を超える時間外労働にも応ずる義務はありません。

 また、就業条件明示書などで残業が予定されていたとしても、法定労働時間(一週四〇時間、一日八時間)を超える残業(法外残業)については、労働基準法が定める次の要件を満たさない限り、派遣元・派遣先ともに残業を命ずることはできません。
 (1)残業(時間外労働)協定 労働基準法第三六条に基づき、派遣元事業場で結ばれていることが派遣元事業場の過半数の労働者代表と派遣元事業主との間で、時間外協定を締結することが必要です。法律上は、実際に就労している派遣労働者全体を民主的に代表する過半数代表との協定がなければなりません。現実には、派遣元でどのように派遣労働者の過半数代表を選出しているのか問題を含むことになります。三六協定では、時間外労働の上限や対象となる労働者や業務について明確に記載されていますので、その範囲を超える残業を命じることは許されません。三六協定がどのように結ばれているか、派遣元事業主に確かめることが必要です。
 (2)(1)の協定を労働基準監督署に届け出ること

 (3)有害業務や女性などについての時間外労働の上限を超えないこと
 「坑内労働その他命令で定める健康上特に有害な業務」については、時間外労働の上限(一日について二時間まで)が定められています。派遣対象業務のなかでは、駐車場の管理業務など「有害物の粉じん、蒸気又は発散する場所における業務」(労働基準法施行規則第一八条)に該当するときには、有害業務として時間外労働は一日二時間までとなります。また、女性については、一九九九年三月までは、時間外労働の上限があります(基本解説五一参照)。

 (4)労働契約・就業規則・就業条件明示書で法外残業を命ずることができる旨の規定があること

 (5)実際に、法外残業をさせたときは、二五%以上の割増賃金をつけること
 午後一〇時から午前五時までの深夜の残業であれば、さらに二五%以上の深夜割増をつけることが必要です。
 こうした要件を満たさずに、残業(時間外労働)を命ずることはできません。違反すれば、それぞれ労働基準法違反で派遣元と派遣先のそれぞれに罰則が適用されることになります。

 派遣労働者について36協定を締結する単位となる事業場が派遣元事業場か、派遣先事業場かについては解釈が分れるところです。
 私たちは、実際に残業の命令をするのが派遣先であること、労働時間関係については派遣先が労働基準法の使用者責任を負うことから、派遣先事業場を単位にして36協定を締結するべきだと考えています。
 しかし、労働省は、次のように、派遣元事業場を単位としての36協定締結を前提にしています。あちこちの派遣先に分散して働く派遣労働者の過半数代表を選出することはきわめて困難であり、派遣元事業場を単位としての36協定は実際には形式だけのものとなりかねません。労働者派遣法の見直しの内容としても、派遣先事業場での36協定締結を義務づけるべきです。
 これについては、「派遣労働者と36協定」を参照して下さい。

 労働基準法が定める「法定労働時間」以内の残業は、法内残業(法内時間外労働)といいます。つまり、労働契約・就業規則・就業条件明示書で定められた「所定労働時間」を超えた部分です。所定労働時間を7時間30分とすれば、【図】のようになります。


 法内残業については、法外残業の厳格な要件を満たすことは必要ではないと考えられますが、派遣労働者の場合には、最初に指摘したとおり、就業条件明示書で法内残業をさせるとしていない限り、応ずる必要はありません。

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