updated Aug. 24 1998
派遣110番によく寄せられる質問と回答例(FAQ)


質 問 と 回 答 例 (F A Q)

1050. 派遣先で物が紛失したら派遣社員を犯人扱いするのが許せません。どうしたらいいでしょうか?  通信関係のショールームで派遣社員として勤務しています。
 そこでは色々な商品を展示しており、時々盗難があります。そんなとき、必ず、派遣社員の私が犯人にされてしまいます。今までも、色々とひどいことをいわれてきましたが、この「盗人扱い」されるのだけはどうしても許せないのです。
 こんな会社は退職した方がいいのでしょうか?
 また「辞めろ」といわれながら、仕事をするのかと思うと、気が重いです。

 110番の相談でも、ご指摘のような「人格」や「人権」を否定する事例の相談が少なくありません。
 派遣労働関係では、派遣先が大企業(ここでは「大手の通信」会社)であること、派遣元が零細の業者であること、派遣労働者が弱い立場にあること、また、女性が多いことなどから、派遣先の従業員が、派遣労働者の人格侵害をすると思われます。
 ところが、従業員を守るべき派遣元も派遣先に強く対応して派遣労働者を守ることはしてくれません。あまりにもひどい人格侵害の広がりに対する批判が高まって、労働省は、96年になって、派遣元と派遣先の責任を明確にするため労働者派遣法施行規則を改正しました。
 派遣先自身の商品管理のルーズさを派遣労働者にしわ寄せしています。また、派遣元が雇用者としての役割を果たしていないと思います。本来であれば、使用者は、本当に商品を盗んだ従業員は懲戒解雇させることができます。派遣労働者であれば、派遣先は、派遣元にそれを求めることもできるはずで、その派遣労働者の受入れを拒否できるはずです。
 そういう本来の手続をとらずに、相手が、あなたに「早く辞めろ」というのは、証拠なしに、あなたに無実のまま責任をとらせようとしている可能性が強いと思います。誰か、真犯人をかばうか、その追及を意識的に曖昧にしている可能性もあります。
 「退職も考えていますが、そうすると、罪を、認めてしまうようで・・私はどうしたらいいのでしょうか?」とありますが、法的には、あなたには何らの落度もありませんから、退職する理由は一切ありません。
 派遣労働者が犯人扱いされたケースは前にもありました。ある役所でのお金の紛失の例で、派遣労働者の責任にしようとした例です。
 むしろ、責任をとる必要があるのは、相手方(派遣先)です。派遣先使用者には、職場の環境を、労働者が快適に働けるように維持・管理する点で、労働契約(労働者派遣契約)上も法的な責任があります
 派遣労働者であるからというだけで、盗難の犯人として「決め付ける」ことは決して許されることではありません。それ自体が、あなたの「個人としての尊厳」を否定し、「名誉」を含む「人格権」を侵害する、違法な「不法行為」です。つらい思い、くやしい思いなどの「精神的な被害」に対しては、慰謝料も請求できます。
 また、相手の対応が余りにもひどい場合には、刑法が定める犯罪(「名誉毀損(めいよきそん)罪」や「侮辱(ぶじょく)罪」)にも当たります。被害者として警察に「告訴」することも可能です。いざとなれば、こうした不法行為や犯罪に対して、法的な対抗措置もとれます。自分自身を守るために、この点にしっかり確信をもって対応して下さい。
 解決策として、

 (1)派遣元に、派遣先でこのようなトラブルが発生しないように、派遣労働者のための未然の防止措置をとらせる。また、この件について、派遣労働者が疑われているので、真相を究明させる
 (2)派遣元が、(1)の雇用者としての責任をとらないとき、公共職業安定所(労働者派遣法についての監督機関)に派遣労働者のための適切な行政指導をもとめる
 といったことが考えられます。
 そして、派遣元や公共職業安定所に申し入れなどの行動が必要です。

 いやな職場でも毅然として働き続けておられることに、敬意を表します。
 冷静に見極めて、職場で、本当にあなたの味方になってくれる人を見つけて下さい。また、相談できる人、力になってくれる人が増えていけば、働き続けることができると思います。
 しかし、もし、あなたが、どうしても、あんないやな職場では働き続けたくないと考えられるようになることもあるかもしれません。そのときには、とうぜん、退職することはあなたの権利です。しかし、今後のこともありますので、自分自身(の名誉)を守るためにも、相手方の法的責任を明確にしておいたほうがよいと思います。
 いざというときのために、思い出すのもいやかも知れませんが、是非、詳しいメモ(いつ、だれが、何を、どうしたか)を書いておいて下さい。必ず役に立つと思います。また、信頼できる人の意見も聞いてメモをしておいて下さい。
 以上が、差し当たっての回答ですが問題が深刻ですので、できれば、弁護士に相談すること、相談していることを相手方に通告することが必要だと思います。


FAQの目次に戻る
110番の書き込み欄へ