updated Aug. 24 1998: last updated 17 July 2002 派遣110番によく寄せられる質問と回答例(FAQ)
質 問 と 回 答 例 (F A Q)

1040. 派遣で高収入を得られますか?

 【派遣で高収入を得られますか?】 でUP事例としてUPされている時給についてですが、お話にならないぐらい現実とかけ離れていますね。
 いったい何処の世界の時給かと思いました。(笑)
 こういうのを見てしまうと、その世界を知らない人にとっては、妙な幻想を抱くことになりませんか?
 知ってる人間にとっては、まったく陳腐なものにうつります。
 これは非常に残念なことです。

 2002/07/17 NさんからのMail(女性、30歳代、登録型、OA操作(CAD))

 たしかに、このFAQを書いた1998年当時から状況は激変し、99年の派遣自由化を経て、派遣労働者の賃金は2002年現在、大きく値崩れしてしまいました。派遣で高収入を得られないという趣旨をより強調しなければなりません。2002/07/17 S.Wakita

 時給は値崩れ
 一方、派遣労働ネットワークの「派遣スタッフアンケート2001」(335人回答)では、派遣労働者の厳しい実態が明らかになっている。
 賃金では、全国平均の時給が1465円(首都圏で1585円)。94年調査の1704円から98年調査の1660円へ、そして今回の1465円と時給は下落し続けている。同ネットはこの傾向を「時給の値崩れ現象」と呼んでいる。
(2002/04/27 連合通信: 厚労省調査─業界は急成長/派遣ネット調査─労働者は待遇悪化/2つの調査にみる明と暗)

「義務は社員と同じ、でも待遇はボーナスも有給休暇もない。大卒女性にも仕事がない今、三十過ぎの既婚の私に仕事があるだけでよしとしなければならないのでしょうか」(朝日新聞1996.8.30)

 ◇仕事は正社員並み、身分は不安定
 Sさん(39)が金融関係の派遣社員になって6年になる。今の年収は税込みで300万円。首都圏での一人暮らしには厳しく、土日はアルバイトだ。「新しい仕事が見つからない場合の保険」の意味もある。12年間勤めた会社を辞め、派遣を選んだが、「最初は経験を積めば給料が上がると思っていた」。これまで10カ所以上に派遣されたが、時給は1400〜1600円の幅で上がったり下がったり。「生活実感では下がっている」という。〔[働き方が変わる]3 派遣労働の自由化 広がる賃金格差(毎日新聞1998年03月29日)〕

 派遣労働者の賃金は、派遣先から派遣元へ渡される派遣料金の6割から7割程度だと推測されています。
 次の表は、労働省に近い研究者がまとめた派遣関係の書物に掲載されていた料金表です。

 表3‐2 基本料金表(1時間当たり)→これも2002年現在大きく値崩れ? ただし、これは派遣先から派遣元に渡される料金です。
  業務内容  料  金
文書ファイリング  2,000〜2,300円
経理・財務業務  2,200〜2,500円
貿易業務  2,300〜2,600円
秘  書  2,600〜3,500円
受  付  2,200〜2,500円
OA機器操作  2,400〜2,800円
市場調査分析  2,400〜2,700円
CADオペレーション  2,600〜3,500円
デモンストレーション  2,700〜4,000円
トレース業務  2,600〜3,000円
通  訳  3,000〜9,000円
翻  訳  4,500〜5,500円
英文タイプ  2,600〜2,800円

 高梨昌『人材派遣の活用法』東洋経済新報社、1997年7月、56頁

 仮に、女性の派遣労働者に多い年収260万円前後であるとしても、年齢が20歳代からほぼ30歳代に限られています。登録型派遣労働者は、社会保険未加入が問題になっています。保険料負担がないために、賃金が高く見えますが、実際に社会保険料などの負担を考えると、実際に受け取る賃金はそれほど多くありません。
 社会保険(健康保険・厚生年金保険)に加入していないときには、国民健康保険・国民年金(第1号被保険者)の適用となりますので、年収からは夫の被扶養者とはなれない人が多いと思いますが、自分でこれらの保険料を支払うことになります。その負担は、国民健康保険で年間の保険料が市町村にもよりますが、40万円程度、国民年金が、15万円と合計で55万円もの負担になり、残りは200万円程度になってしまいます。
 時給にだけ目を奪われて、派遣は高収入を得られると錯覚することなく、社会保険、雇用保険、交通費などの実費を含めて、実際の収支を派遣会社に確認してください。福利厚生も派遣先の施設を利用することも、とくに法律で保障されている訳ではありません。通常の場合は、派遣元・派遣先の間の労働者派遣契約によることになりますが、派遣先の正社員に比べてきわめて貧弱であるのが現実です。
 交通費さえも派遣労働者が自分で負担させられるのが一般的です。
 定期昇給、賞与(ボーナス)、退職金、企業年金の会社負担、福利厚生、社会保険料の事業主負担などもありません。パートタイマーには、自治体によって独自の退職金制度を条例化して事業主に掛け金をかけさせている例がありますが、派遣労働者を対象にした退職金制度はありません。年次有給休暇も最高20日を受け取る長期雇用のパートタイマーがいるのに、20日の年次有給休暇を受け取る登録型の派遣労働者は、ほとんどいないのではないでしょうか。
 まさに、派遣労働者は「ないない尽くし」です。
 派遣先企業が忙しい時期に、また、即戦力として派遣労働が注目されています。また、労働者が仕事、会社、時期を自由に選択できる新しい働き方だと「華やかさ」ばかりが宣伝されています。しかし、いろいろと持ち上げられる反面、派遣労働者の待遇は悪過ぎます。また、派遣労働者の実際の働きぶりや派遣先への大きな貢献に比べて、派遣労働者が受け取る賃金は余りにも低いと言えます。長く働けば働くほど、不利になるのが派遣労働では困ります。派遣労働者に、公正な労働条件を保障するべきです。


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