15.直接談話霊媒


「私は自分が、この国が産み出した霊媒の中でも最もしっかりとテストされた霊媒であると言っても大丈夫だと思います。箱に入れられたり、縛られたり、封印をされ、さるぐつわをされ、紐でつながれようと、その声は相変わらず永遠の生命のメッセージを伝えるためにやってきたのです。」
レスリー・フリント


ヴィ:直接談話をできる霊媒はとても恵まれています。直接談話とは「死んだ」者たちの声がその人自身の声で、霊媒が用意した声箱や霊媒の声帯を用いず、霊媒が産み出すエクトプラズムによってできる人工的な見えない声箱を用いて聞こえる現象を指します。

 イギリスで最も優れた直接談話霊媒にジョン・スローン(John Sloan)がいました。何年もの間、彼はいくつかの小さな友人グループのために、無料で交霊会を開いています。彼の交霊会に長期間出席し続けた人の一人アーサー・フィンドレー(J. Arthur Findlay)は、他界の存在との交信に関する科学的分析を示した世界的な古典「On the Edge of the Etheric(エーテルのはざまにて)− 1931」を執筆しました。この本の中で彼は、ジョン・スローンとの最初の交霊会で何をどう目撃したかを述べています。

 スローンが3時間以上に渡る交霊会の間中、一見して意識不明に見えながらも詐欺を行なっているとしたら、いったいどうやってそれを行ない、また報酬を受け取らない理由はいったい何なのだろうとフィンドレーは困惑していました。彼は30種類以上のそれぞれ異なる調子とアクセントを持つ声に出会い、その声たちは自らの名前を名乗り、その人が生きていたときに住んでいた住所を正しく述べ、彼らが誰だかわかる人々に話しかけ、家庭内のこまごました事柄まで伝えてきました。2つか3つの声が同時に聞こえたこともあります。これらの声が何か間違いを伝えてくると言うことは全くありませんでした。

 フィンドレーは彼にとって圧倒的な意味を持つ証拠について、次のように回想しています。

「まず隣に座っていた男が『どなたか、あなたとお話したがっている人がいるようですよ。』と言った。そう言われて私はこう答えた。
『誰なのでしょう?』
すると、誰もいないはずの場所からこのような声が聞こえてきたのだ。
『おまえの父親、ロバート・ドウニー・フィンドレーだよ』
その声は続けて、父と私、そしてもう一人しか絶対に知らないはずのことについて述べてきた。これは十二分に異常な出来事だった。なぜならそのもう一人というのは父と同様にすでに他界していたため、生きている人間でその声が述べている事柄について知っているのは、私一人しかいないはずだからだ。しかし興奮はこれで終わらなかった。父が話し終わった後に出てきた声は、そのもう一人であるダヴィッド・キドソンの名を名乗り、その話題について会話を続けたのだ。スパイなどあり得ないし、霊媒や他の人が故人の声色を真似ていたというのも無理がある。実のところ、私は部屋に入ったときに名前を言わなかった。私はそこにいた誰も知らなかったし、こちらの事を知っている出席者はいなかったはずだ。これが初めてジョン・C・スローンに出会ったときの話だ。」

 アーサー・フィンドレーはこの体験を期に多くの年月を心霊研究に注ぎ、「Where Two Worlds Meet(二つの世界が出会うところ)- 1951」「The Way of Life(人生の在り方)」「The Rock of Truth(真実の衝撃)- 1933」「The Unfolding Universe(未発見の宇宙)- 1959」「The Psychic Stream(心霊の奔流)- 1939」「The Curse of Ignorance(無知の呪い)- 1947」「Looking Back(回想録)」といった偉大な古典的研究を執筆したのです。

 教授、これについてどう思いますか?

O:彼の体験談は、それほど不思議なことではないな。

ヴィ:どうしてです?

O:人は起きたことをおおげさに話しがちだ。例えば私自身が経験したこんな話がある。

 あるときイギリスから霊媒が来て、ちょっとした会があった。私はその人の能力がどれくらいいいかげんなのか楽しみにして、その会に出席した。主催者側は、連れてきた霊媒が本物であることを見せたいらしく、可能な限り「はい」「いいえ」だけで答え、霊媒に対して不必要な情報は与えないでください、と言っている。まあ、これは当然の注意だな。しかし、そのときの出席者ときたら、霊媒の言ったことが少しでも自分に当てはまると「それはきっとこのことを言っているのですね」と勝手に正解を与え、「どうしてわかったのでしょう。」と驚いてるんだよ。彼らが相手なら誰でも霊媒をできるな。またその手の人たちに限って、家に帰ると「今日すごい能力の人にあって、こっちが何も言わないのになんでも当ててしまうんだよ」とか言うんだろうな。その霊媒に実力があるのかないのか、それは全くわからず、人はこういう風に騙されていくのか、というのがよくわかった会だった。

ヴィ:じゃあ、教授はフィンドレーの述べていることが信用できないと言うのですね。しかし、そうした一般の出席者と研究者は全く違います。研究者は、何かが浮かぶのを見たとしても、公には
「他のものは見たといっていますが、私の角度からはよく確認できませんでした。」
と、逆に控えめに言いがちです。そういう類いの人が「見た」と公言するとき、その情報の信頼性は高いと言えます。

O:仮に百歩譲って、彼が言っていることが信頼できるとしよう。それでも不思議はない。

ヴィ:自分の名前を明かさないで出席したのに、その名前を呼ばれたのですよ。

O:フィンドレーは交霊会に行くにあたって、回りの誰にもそのことを言わなかったのかね? もしくは、フィンドレー自身は知らなくても、彼の顔と名前を知っている人がいなかったと断言できるのか?

ヴィ:それでは彼を含む三人しか知らないはずの秘密について会話が持たれたのはどう見ます?

O:三人しか知らないはずの秘密には、その秘密を知る四人目が絶対にいると私は思うよ。君はFBIのフーバー長官を知っているか。

ヴィ:あの、かなり長い間長官を務めつづけた、アメリカの国民的英雄ですね。それが何か?

O:彼はその立場を利用して、政府関係者を含む国中の主だった人物の秘密を握っていた。彼があんなに長い間長官でいられた背景には、歴代の大統領の秘密を握っていたからだと言われている。

ヴィ:で、教授は誰かが一介の心霊研究者に特別な注意を払い、それを監視していたかもしれないと、こうおっしゃりたいわけですか。

O:第3者がフィンドレーたちの秘密を握り、それを漏らしていた可能性は十分にあるだろう。

ヴィ:私にはかなり無理な解釈だと思えるのですが・・・。いいでしょう。では、その声が宙空から聞こえてきたのはどう解釈するのでしょう?

O:そう、先ほどの話に少しでも意味があるとしたら、その一点だけだな。それにしても反響板などを使えばすぐにできるトリックだが。

ヴィ:今のは単なる前振りです。これから更に本格的な直接談話現象を起こしたレスリー・フリント(Leslie Flint)を紹介しますので、よく聞いていてください。彼はこんな言葉を残しています。

「私は自分が、この国が産み出した霊媒の中でも最もしっかりとテストされた霊媒であると言っても大丈夫だと思います。箱に入れられたり、縛られたり、封印をされ、さるぐつわをされ、紐でつながれようと、その声は相変わらず永遠の生命のメッセージを伝えるためにやってきたのです。」

 レスリー・フリントは近代において完全にテストされた直接談話霊媒といえます。

O:完全にテストされた? 私がその言葉から連想することを言ってもいいかね?

ヴィ:どうぞ。

O:完全に、というならこんな感じだろうな。まず彼を海外に呼出す。そして彼と全く関わりのない人たちのみで交霊会を持つ。このとき彼の衣服を一度全部脱がせ、身体検査をした方がいいな。その後はこちらの用意した服に着替えてもらう。身の回りのものはもちろん持ってこさせない。そうしたら口には水を含んでもらいテープを貼ろう。この状況で、しかも明りをつけた状態で直接談話現象なるものが起きたとしたら、私は超常現象の存在を信じるかもしれない。で、こんな風に完全にテストされたのかね?

ヴィ:衣服を脱がせて身体検査まであったかどうかは正直言ってわかりませんが、それ以外のことは満たしています。彼の口がテープでふさがれたり水を口一杯に含んだ状態で、肉体を失った人たちの何千もの完全に異なる声が、フリントも知らない外国語や、もう地球上で話されていない言語を含むさまざまな口調で話しかけてきました。

 彼の自叙伝「Voices in the Dark(暗闇の声)- 1971」においてフリントは、彼がどのように縛られて拘束され、さるぐつわをされて箱に入れられ、シールで封印されても、永遠の生命について話す声が現れたかを、詳しく記述しています。またその本には、彼がホテルの一室や、海外の見知らぬ人の家、ホール、劇場、教会で、特に準備なしに交霊会をやってきた事実が述べられています。

 サイキックニュースの1948年2月14日号に、フリントが手足を椅子に結えつけられ、口の上には柔らかいしっくいが塗られ、その上から包帯を巻かれた状態で行なわれた交霊会について、その詳細が載っています。その実験に立ち会った人々は、上記の制限にも関わらず、声はいつもの明快さで話し始め、叫びすらしたと認めました。もっとも頑固な懐疑主義者さえ、フリント氏の口をふさいでもこの見えないものの声が好き勝手にしゃべるのを止めることはできない、と悟らざるを得ないほどの声が、その部屋にいた12人ほどの人たちの耳に聞こえてきたのです。実験の最後に、彼らはフリントを縛った縄と、口をふさいでいたしっくいに、何ら手を触れた形跡がないことを発見しました。

 フリントの交霊会で伝えられる情報は、ある種の批評家たちが霊媒について言っているような、誰にでも当てはまるあいまいな示唆ではありません。

 例えば次は、第2次世界大戦で戦死した若い飛行士と、その両親とのやりとりです。この声は最初、ドーディング卿が出席した交霊会に声を現し、自らの名前をピーター・ウィリアム・ハンドフォードと告げ、彼が言った住所を訪ねて両親と連絡をとって欲しいと述べてきました。両親は次の交霊会に出席することに承諾し、その席でピーターは40分近く、生前と同じ声で以下のことを話したのです:

・死ぬ前に、ドイツシェパードを買うのに引っ掛けて言ったジョークについて
・母親がその日の朝、彼とノルウェーにある彼の墓の写真をバッグに入れたこと
・彼のために両親が思い出の庭に植えてくれた桜の木を好きなこと
・死後六年経っても、彼の寝室がそのままであること
・寝室の壁紙が好きではなかったこと
・父親がいまだに、その体に合わない小さな車を乗り回していること

 両親はこれらがすべて本当であることを認めました。

O:そんなのはあらかじめ調べておけば用意できることだろう。

ヴィ:でも話しているのは宙空からの声なのですよ。

O:それだ、信じられないのは。人間の耳というのは結構不確かで、例えば歩いていてサイレンの音が聞こえたとき、それがどの方向から聞こえてくるのかわかる人は意外に少ない。だから腹話術を直接談話現象などと思っていた可能性は十分にあるだろう。

ヴィ:その説は、フリントののどにマイクが取り付けられたときに却下されました。このマイクは彼の声帯が少しでも震えると、それをものすごく拡大します。それをオブザーバーたちが赤外線スコープで監視していても、声は現れたのです。

O:フリントが卓越した催眠術師で、出席者たちの集団幻聴をうまく誘導したというのはどうかね。

ヴィ:声は何度も録音されています。

O:となると、共犯者がいたことが考えられるな。

ヴィ:そうなのです。頭の固い人たちはそういう考え方をします。フリントは次の抜粋の中で、彼の超心理学者に対しての失望感を表しています:
 
「テストへの協力を認めたばかりの頃はまだかなり世間知らずで、科学者や研究者が用意したテストに成功することで、世界中に死後の生を知らしめることができると信じていた。しかしすぐに、自分たちを研究者と呼ぶ人たちの多くは、人間存在の意味や目的、また死後の生の可能性、こういった考えを始めから完璧に除外して考えていることに気付いたのだ。彼らの関心事は声の真実性を打ち崩すことだけで、彼ら自身が用意した実験が成功に終わったことの意味を認めるよりは、ばかげた、信じられないほどのこじつけをもってきて、この現象を説明しようとした。」

 こういった心霊研究者たちによって挙げられた、ばかげたくだらない理論が、今、教授が言ったような事柄です。ひどいのになると、フリントは胃袋で話すことができるのだという説を持ち出す人まで現れました。

O:胃袋理論と私を一緒にされちゃかなわんな。私はそんな荒唐無稽なことを言い出しはしない。だが、もしヴィクターの引用してきた事柄が真実だったとしたら、当然、共犯者の疑いが出てくるだろう。

ヴィ:実際、その他のいかなる説明も見出せなかった研究者たちは、今度はフリントが不正を働いていると主張してきました。別の部屋に共犯者がいて他界した人々の声を真似ている、または死者の声としてあらかじめ録音しておいたテープレコーダーを隠している、こうした疑いがでてきたのです。死後の生を決して信じないことに決めた人や、フリントの交霊会に一度も出席したことのない人々が考え出す独創力のあるトリックには限りがありません。フリントはそれについてこう言っています:

「私が、こういったおろかで頑固な人々が訴えるナンセンスについて何か言うとしたら、共犯者の物まねや隠されたテープレコーダーが、いったいどうやって出席者たちのとても個人的な事柄について長時間の会話を交わし、故人が今も存在しているということを確信させるほど、その故人の特徴をうまく捉えているのはなぜなのかを聞きたい。さらに、私を助けてくれる共犯者たちはいったいどうやって、オーストラリアやインドから到着したばかりの人たちの、亡き妻や夫、親類たちの声を完璧に真似ることができるのか、聞く耳を持たない皮肉屋たちに聞いてみたいものだ。しかしながら私は、病的な情報に冒され偏見を持った懐疑主義者たちと口論を続けることによって、自分の貴重なエネルギーを浪費したいとは思わない。私と、一緒に交霊会を行なった何千もの人々は、真実を知っている。」

O:そんな風に言われても、その声がどれだけ似ていたのか、どれだけ真実を言ったのかがはっきりしないからな。

ヴィ:フリントの本を読めばわかります。

O:うわさの本人が書いた本など信用できん。自分を有利に運ぶためにいくらでもうそを書くだろう。

ヴィ:そういうことなら、他の人を紹介しましょう。レスリー・フリントを調査してその真実性を完全に保証した専門家に、ニューヨーク市コロンビア大学の電気工学教授ウィリアム・R・ベネット教授がいます。技術者というのはとても実践的な人々で、大げさな想像で物事を話すことはしない傾向にあるので、彼の証言は高い信頼性を持つと言っていいでしょう:

「私はフリント氏を直接調査し、独立して響く声を聞いてきました。初期の調査では不可能だったテストが近代の調査技術では可能になり、この声がフリントのものではないという結論を、ますます信頼できるものにしています。しかし徹底的にやるには、やはり共犯者の疑いを持たなければならないでしょう・・・。
 この疑いは、1970年の9月、ニューヨークに彼を呼んだときになくなりました。私はアパートで即席の交霊会を設定したのですが、その状況でも声は現れ、その場にいた客たちと会話を始めたのです。」

O:その教授はフリントに買収されたんじゃないのか。

ヴィ:直接聞いてみたらどうです。おそらくまだ生きているでしょうから。

O:買収された当人に「買収されましたか?」と聞いても、正しい答えが返ってくるはずはないだろう。

ヴィ:それもそうですね。それでは他の研究者も紹介しましょう。
 
 フリントの誠実さと声の真実性を示すさらなる証拠が、真摯な研究者、ジョージ・ウッズとベティ―・グリーンの注目すべき研究によって明らかにされています。1953年から1970年までの17年間、ウッズとグリーンはロンドンのフリントの家に毎週通い詰め、自分たちが死んだときに何が起こったかを話す、口調もアクセントも異なる何百の声を録音してきました。ギャリ―・ウィリアムズが書いた「A Life Beyond Death(死を超えた生)- 1989」の「The Other Side(向こう側の世界)」と題された章に、二人の研究のとても素晴らしい要約が納められています。

 さて、彼らも買収されたと言い張りますか? 17年も通い詰めたわけですから、関係者も多いですよ。その人たちもすべて詐欺の一味なのでしょうか?

O:買収されて17年分の研究成果を一日で作ることは可能だ。結局、その二人が本当に毎週行っていたのかどうか、これに関する証言が集まらないと何とも言えないな。

ヴィ:うーん、さすがに一筋縄ではいきませんね。でも、そんな風に言っていられるのもここまでです。

O:どういう意味?

ヴィ:次の章に行けばわかります。

弁護士の論じる死後の世界


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