第98話:Houseで。Rosavealで。Galwayで。 |
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帰る前の夜だった。モニクがお別れを言った。
静かなハグ(そう、なんでもダイナミックなモニクにしては)だった。 ニールとターニャ、リーズベスとエスター、そして私の5人は明朝の同じ船でイニシュモアを去る。モニク、イーナとブランドンは新年をずっとイニシュモアで過ごす。船が出るのは朝9時。朝食が10時過ぎであるクリスマスのMainistir Houseでは、それは極めて早朝なのであった。 そして迎えた最後の朝、ジョエルはなんと7時過ぎに起きて、いつものようにパンを焼いてくれた(ちなみに、私が起きるのは7〜8時で、いつもジョエルより早かった)。ポリッジ、レーズン入りのスコーン、ソーダブレッド、固まりのまま出されるバター、ニールとターニャが持って来たメープルシロップ、それに紅茶。 イーナもブランドンも、まだ早い(といっても8時だが)のに、暖炉のあるダイニングに集まった。 リーズベスは感極まったのか、みんなにハグし、頬へのキスを3回ずつ繰り返して別れを惜しんだ。イーナが笑っていた。
埠頭へは、来た時と同じミニバス(というかなんというか)、同じ親父によって運ばれて行った。今朝の船で戻るのは10人足らず。もう、船影が見えていた。 ![]() 左からエスター、ニール、ターニャ、リーズベス。 船が着くロザヴィールに、ニールとターニャは車を置いていた。2人は、ゴールウェイに向かうバスに乗った私たち3人のところまでわざわざ車を回して、手を振って見送ってくれた。 ゴールウェイは、目下エスターが学び、住んでいる街だ。彼女の家へ行く2人と、私はバスを降りたところで別れた。すぐにダブリンへ向かう彼女たちと、いったん北上する私とは、スケジュールがすれ違いだった。またもや頬に3回もキスを繰り返すリーズベス。エスターはとってもシャイな子で、ハグには首を振り、握手で名残りを惜しんだ。
昨日、そうイーナは言ってこの短い日々を振り返った。素晴らしい時間だった。しかしまた、もはや思い出に過ぎない。 私はまた、ひとりに戻った。 ?(第98話:Houseで。Rosavealで。Galwayで。 了) text and photography by Takashi Kaneyama 1999 |
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