- 天丸橋に他の車は無かった。沢沿いの道を歩き出した。日影で寒かった。ウールの帽子と手袋を付けた。水量の少ない沢を何回か徒渉した。途中の少し広くなった場所で一休みした。
- 更に進むと岩をへつる所が有りロープが付いていた。尾根に取付くと斜面をジグザグ進む急登になった。道は細く霜柱もできていて歩きにくかった。風が時々強く当たった。勾配が少し緩んだところで一休みした。
- 尾根が終わると谷の道になった。落ち葉が多く道が少し分かりにくかった。大山との分岐を示す標識が有った。更に登ると稜線に出た。ここも分岐点で、左へ進むと大山、右が我々の向かう天丸山だった。冷たい風が強く吹いていた。風と反対側に少し下がった落ち葉の上で一休みした。。
- 急坂を登って倉門山を超えると、なだらかな稜線歩きになった。快適になった。右手の木の間にこれから登る天丸山が見えた。そそり立つ岩山には、いったいどうやって登るのかしらと思った。
- 右回りにU字に進み、帳付山との分岐を過ぎて少し下ると天丸山の基部に着いた。まっすぐ上からロープが下がっていた。ロープ一本目は狭い岩の間、二本目も急で手がかりが少なく難しかった。少しやさしくなった三本目を過ぎると、次のロープは最初の一歩の踏みだしが岩をまたぐ感じで難しかった。ロープの順番待ちで体も冷えてきた。何とか順番に登り切ると、勾配が緩くなり、ようやくロープが終わって山頂に着いた。高さ計約30mの岩場の通過に約40分かかった。
- 山頂は予想より広かった。風は少なく潅木の間から西上州や奥秩父の山々が見えた。体が冷え、登りの緊張で食欲もなかった。とりあえず食べ物を口に入れた。写真に写る表情もこわばっていた。
- 下りのロープではお互いに指示を出しながらゆっくりと下った。幸い恐怖感を感じることなく、45分かけて4人全員が無事に基部にたどり着いた。思わず笑みがこぼれた。
- 基部からはなだらかな稜線を進んだ。名残の紅葉が少し残っていた。風が強かった。北側を見ると前日は黒かった浅間山が、この日は白くなっていた。倉門山西側の平坦地には窪地が有ったので風を避けながら休むことができた。
- 下降点の分岐からは、落ち葉の多い谷の道を通り、霜柱の残る尾根へと下っていった。幸い風は治まってきた。沢に出た時はもう一息と思った。無事、天丸橋に着いてほっとした。
- 結局この日は誰にも会わなかった。帰りに道の駅に寄り、地元の野菜と味噌をお土産に購入して、厳しい西上州の山に別れを告げた。