- 三峰口からのバスは昼近かった。乗る時に運転手から「山は日帰りですか?」と尋ねられ「泊まりです」と答えると笑顔で「それなら良かった」と、小鹿野町作成の登山マップを渡してくれた。
- 終点の日向大谷でバスを下り、登山口で届けを記載して出発した。すぐに鳥居と社が有った。谷沿いの道は細いトラバースや渡渉が有った。赤い岩の多い道だった。急登になると「八海山」標識が有った。男性単独行とすれ違ったので、様子を聞くと「上にはだれもいない」との事だった。
- 小屋に着いた時は結構くたびれていた。テントを張り、炊事場に行くと「飲用禁止」と書かれていた。すぐそばの滝の水を汲むより、5分下った「弘法の井戸」で汲んだ方が良いと、汲みに行った。
- 水入手後、炊事場横のベンチで夕食を作った。食事が終わりテントに戻る頃にはすっかり暗くなり、空には上弦の月が輝いていた。今夜のテントは1張だけだった、小屋のガラス窓には、泊まりの若い男性単独行のランプの光がぼんやりと映っていた。木の上からは聞いたこともない鳥の鳴き声が「ケケケ」と聞こえてきた。夜中には鹿の鳴き声が盛んに谷間に響いていた。
- 翌朝は明るくなってから出発した。鎖場やスチールの階段を登っていくとオオカミの狛犬に守られた両神神社に着いた。山頂近くになると紅葉がきれいだった。
- 山頂手前でトレイルランナーに抜かれたと思ったらすぐ戻ってきた。すれ違うときに「すぐそこが山頂ですよ」と言われた。山頂からは西側の展望が開けていた。東側は雲に隠れていた。休んでいると山慣れた感じの男性が登ってきた。「八ヶ岳が見えていますね。今朝、日向大谷から登ってきたんです。明日は天気が悪いので今日は登る人が多いでしょうね」と言われた。お互いに写真を取り合った。「お先に」と挨拶して下り始めると、すぐに黒い服の少し疲れた感じの男性単独行とすれ違った。「すぐ山頂ですよ」と教えてあげた。
- 下りは中双里(なかそうり)に向かった。梵天尾根に入ってすぐのピークで道を見失いそうになりコンパスで確認して進んだ。
- 尾根は所々紅葉がきれいだった。秩父市と小鹿野町の境界見出標が点々と設置されていた。ミヨシ岩への登りは鎖と岩が多かった。眺めの良いミヨシ岩からの下りも少し分かりにくかった。
- 大峠を過ぎると少し尾根が広くなって歩きやすくなった。時々出てくる登山標識の多くは熊にかじられた跡が残っていた。白井差峠からは植林帯になった。少し急な坂をジグザグに下っていった。
- 登山口の中双里に着いたときにはバスまで十分時間が有った。のんびりとバスを待った。