- 硫黄島は良い天気だった。港の水面は茶色に濁っていた。「温泉の成分が流れ込んでいて、水の表面だけ酸化して茶色になっている」と硫黄島で下りる人が教えてくれた。船のスクリューでかき回されたところだけ水が澄んでいた。
- 宿が取れずテント泊の予定だった。事前に連絡していたので港には観光案内所のロングヘアの若い女性が出迎えに来ていた。本来のキャンプ場は炊事場老朽化のため観光案内所で紹介してもらったプール横の芝生にテントを張った。
- 観光案内所のお勧めも有り、東温泉に行く事にした。海岸沿いの道の周囲は高さ3-4mの竹ヤブに覆われていた。途中で硫黄岳が見えた。山側を通ってきた道に出会ってから少し下ると海岸に出た。歩道を少し歩くと東温泉に着いた。海岸の岩場に湯船が三つあるだけの野性味豊かな温泉だった。熱い湯が海へ流れ落ちていた。真ん中の湯船がちょうど良い湯加減だった。脇にには岩で囲まれた脱衣所が有った。脱衣所で短パンに履き替え、海の向こうに屋久島のシルエットを見ながら湯船に浸かった。
- 帰りは山側の道を通った。こちらの道は少し登り下りが有った。岳乃神神社への入口が有ったので寄ってみた。神社にはクジャクがいた。我々が近づくと飛んでいった。神社からは硫黄岳と矢筈岳が見えた。周囲は竹ヤブで少しツバキが生えていた。カラスが多かった。岳之神神社から5分ほど歩くと稲村岳の登山口が有った。壺に書かれた標識が有った。
- テントに戻り、三島開発総合センターの風呂に入りに行った。観光案内所の説明では、週三回お風呂が入れるとの事で、ちょうどこの日がお風呂の日だった。総合センターの建物に入ると、お風呂の手前の部屋が、鹿児島県議会議員の投票所になっていた。離島のため日曜の投票を木曜に切り上げているらしく、ちょうどこの日が投票日だった。中をちょっと覗くと、受付に2人、奥に3人の立会人が見えた。たまたま投票している人が見当たらない以外、都会の投票所と同じ風景だった。島民200人に満たない島での選挙も大変だと思った。お風呂の帰りには、島に一軒だけのお店で冷えた缶ビールを購入した。夜は星がきれいだった。
- 翌朝は雨だった。噴煙を上げる硫黄岳は登山禁止なので、代わりに観光案内所で教えてもらった稲村岳に登る事にした。観光案内所の話では「山頂は切り開かれているけれど最近登った人がいないので」との説明だった。同行者とは俊寛堂で落ち合うことにして1人で出発した。苔に覆われた車道を登って行くと前日確認した登山口に着いた。
- 最初のツバキ畑を過ぎると高さ3-4mの竹ヤブになった。登山道には竹の倒木が多く、払いのけながら登った。山道にはロープが取り付けてある所が多かった。危険箇所は無く、ロープは手すり程度の意味合いだった。
- 雨の山頂は硫黄岳側と港側のそれぞれが切り開かれていた。港側には我々のテントが小さく見えた。2年前の登山記念プレートが有った。小学校5年生3人の名前が記載されていた。
- 登山口に戻り俊寛堂へ向かった。ツバキ畑が多かった。俊寛堂入口で左へ入ると苔むした歩道になった。傘をさした同行者が待つ俊寛堂にすぐに着いた。俊寛堂は予想より立派な建物だった。
- 俊寛堂を後にして車道を平家城跡に向かった。平家城跡からは水蒸気を上げる硫黄岳がいっそう荒々しく見えた。雨は次第に強くなり山頂は雲がかかり始めていた。平家城跡からの戻りで観光客らしい男性の運転する車一台とすれ違った。
- テントに戻りプールの建物の軒下で雨宿りしながら昼食を食べた。幸い、黒島に向かう船の出発時には小降りになった。