先発メンバー
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交代出場
川崎
56分:小林慶行(西田吉洋)
70分:廣長優志(飯尾一慶)
86分:杉山弘一(三上和良)
横浜
82分:永山邦夫(上野良治)
87分:岡山一成(外池大亮) |
今季、開幕からのスタートダッシュの波に乗り遅れた横浜だが、この日は試合前に東京、清水の上位チームが続けて敗れたため、川崎に勝てば首位グループへの進出が可能な状態で試合に挑んだ。
前半30分、川崎のキムに先制ゴールを許したがハーフタイム、「ラインを下げるな」というアルディレス監督の指示から、中盤も、遠藤、三浦、中村らが積極的にボールに走り込み、ワンツーでゴール前まで攻める場面が続く。後半開始7分には、フリーキックから三浦がゴールを狙う。このシュートを川崎のGK本並がこぼしたところに上野が詰めて同点。31分には、中村、上野、柳とつないで逆転に成功する。最後は、川崎のGK本並がゴール前にドリブルで入った永井をファールで倒して退場。代わりに、川崎のMF・岩本がGKを務める珍事も起き、横浜はこれで勝ち点を12に伸ばし、首位グループに入った。
他会場の結果から、これで勝ち点12で磐田、柏、横浜が並び、さらに勝ち点11に東京、鹿島、清水、C大阪が並び、勝ち点わずか1差の中に7チームがひしめく大混戦となった。
同点ゴールを決めた上野「チームが勝ってよかった。前に出ろといわれた分、後半のほうが戦いやすかった。監督とのコミ二ケーション? それほどありませんねえ。きょうもサブだと思ったくらいですから。腰のほうはもう大丈夫です」
フル出場で動きも落ちなかった遠藤「ここのところ、体の調子がすごくいい。試合をしていても、まったく苦しくなるような局面がなく余裕を持っている。うちの中盤でのスピ−ド、俊輔、アツ(三浦)、柳のスピードは、ゴール前まで相手の脅威になるはず。みなで話しながら、ボールを持ったら、必ず上がるようにと話していることが攻撃の充実につながりつつある」
小学校時代は、GKだった岩本が本並の退場でGKに入ったのは、ベンチからの指示だった。李総監督は、「あの局面で(PKを決められ)ショックを受けないのは、岩本くらい」という、評価されているのか、そうでないのかよくわからない理由で起用された。
「止めたら、ずっとドリブルで相手のゴールまで行ってやろうと思っていたのに。前半から何本かチャンスがあったのに(シュート3本)決められなくて最後にGKなんて……」
先制したのに、と憮然とした表情だった北澤「何が悪いのか……、難しいですね。点を取ってから逆転されるという展開はよくないですね。気持ちをどこかで切り替えないと」
観戦に訪れた川淵三郎チェアマン「お客さんにもっと足を運んでもらえるようにするには、色々と考えないといけないし、やはりいいゲームをしないと。Jリーグはこれで大混戦になった。ガンバはどうしたんだろうな。だけど稲本(ら若い選手が)だって、代表のプレーとチームでのプレーが全然違う。アピールするんだったら、トルシエ監督にじゃなくて、お金を払って来てくれるお客さんにアピールするもんだ」
試合後は、モモの打撲で足を引きずっていたが、川口能活は「きょうはオジー(アルディレス監督のニックネーム)が僕らに与えてくれたモチベーションの勝利。そういうムードを作ってくれたことがよかった」と笑顔を見せた。
今季監督が変り、代表選手の不在のために2月のキャンプもチグハグなまま終えざるを得なかった。そうした中でも、監督がこの試合前、「試合を消化する中で必ず上にいける。この川崎戦に勝つことで、自分たちの抱えている欠点を克服しよう」とゲキを飛ばしたという。
川口自身、「これまでは、口でばかり言っていたんですが」と照れくさそうに話していたが、11人目のフィールドプレーヤーであることへの意識付けとプレーでの持続性を6試合目にして実感できているようだ。
簡単ではないのは、清商時代からずっと慣れ親しんできたはずの「ブラジル流」トレーニングを、「ヨーロッパ型」に変更しなくてはならない点だ。
ブラジル流ではGKコーチとのドリル練習で、シュートを受ける。練習量も時間もかなり長くなる反面、チーム練習からは孤立するケースも多かった。
一方欧州型、つまりアルディレス監督のやり方では、こうしたドリル練習は極端に減らし、「GKはあくまでも全体の戦術の中での1人」という位置づけをする。
ドリルの代わりに全体での戦術練習を繰り返さなければならない。ともすれば、立っているだけ。平凡で、しかも「量」を実感できない練習だけに、川口にとっては発想の転換が難しいこともあったはずだ。しかし、それを鮮やかに転じて見せた点に、今年の成長ぶりが見える。
会見を終わった監督が廊下で「もっと判断を速くできるよ、ヨシカツ」と声をかけ、川口も「イエス」と力強くうなずいていた。