想い出ジュークボックス

 ほんの少し前、流行歌はわたしのすぐそばにあった。

 流行歌が遠ざかっていったのか、わたしが離れたのか、いつかほとんど無縁になってしまったような気がする。

 それとも、いまも「はやりうた」は耳を通して脳裏に残っていて、遠い未来のある時に、ふと、いまこのときの想い出として浮かび上がってくるのだろうか。

 ちょうどその昔一顧だにしなかった「長い髪の少女」や「真冬の帰り道」といった、あのグループ・サウンズのいくつかの歌が、いま、ほどほどの記憶を呼び起こすように。
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 それにしてもメロディーの美しさ、または歌詞の親しさ、あるいはその双方で体ごとひとつの世界へ包み込む、そんな歌がなくなってしまったように思う。

 わたしが変わってしまったのだろうか。作り手が現実を汲み取るのに怠惰になったのだろうか、それとも、普遍性を詠むには時代があまりに自閉的になってしまったのだろうか。

 詮索はやめて、心の中のジュークボックスから、いくつかの想い出を引き出してみよう。


どこまでも行こう
白い想い出
あの日にかえりたい
明日があるさ
うちのママは世界一
公園の手品師 
<この項終わり>

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