みだれめも 第233回

水鏡子


○近況(3月)

  コロナで1月2月とじりじり目減りしていた株資産が、周知のとおり3月に入って大暴落。手当が遅れてほぼ全銘柄が損切不能の塩漬けとなりひたすら損失を拡大している。余剰余力で建てたはずの書庫費用が、まるまる含み損に転嫁され、さらに豪ドル建てで掛けていた個人年金保険もとんでもない円高で、原資を割り込む気配さえある。当初の契約段階で豪ドルレート85円、三桁を目指す雰囲気が、いまのレートで65円、利息分を吹き飛ばす勢いである。生涯生計計画に洒落にならない破綻が見えてきた。
 人生設計仕様の大幅な変更は必然となり、株価の動向を注視しつつ、5年計画の再建を目指し、今年は質素倹約に努める。隠れ目標としていた、推定死亡時期の10年くらい前の時点で生計外資産をすべて吐き出し、今の家をバリアフリーの老人仕様に建て替え、さらなる書庫を増築しようという企みは泡と消えた。

 確定申告に行く。
 一昨年は65歳になる3月まで勤めていたので、その間の社会保険料や年金掛金があったので、控除額が80万円近くに上り、去年は市民税非課税世帯になった。
 市民税非課税世帯というのは、公的支出が思った以上に低くなる。
 所得税住民税がゼロとなるのはまあ当然なのだが、国民健康保険料、介護保険料が激減した。どちらの保険料にも所得に応じた税額が計算され、そこに非課税世帯としてのさらなる軽減が課される。二つ合わせて65,000円ほどである。
 うれしいけれど、いいのかこれで、とも思う。通院医療費が3割負担で毎年10万円前後払っているので国地方自治体の負担額は20万円強になる。
 そしてたぶん年金生活者の大半は、似たような経済状況健康状況であると思われるうえ、さらにここに介護費用がかかってくる。市民税非課税世帯の割合はかなりの量を占め、少子高齢化に伴い、今後とも拡大していく局面が容易に予測できる。生活保護でない状態でも、自治体の負担は大変なものであることを、この前の劣化団塊の世代論と関連づけて思いを広げる。
 ただ、この保険料の軽減の結果、確定申告における控除額が基礎控除を含めて50万円程度にとどまるということであり、そのため今年は非課税世帯でなくなる可能性が高い。課税世帯になることで今年は保険料の軽減がなくなり、そのために掛かった今年の保険料による控除額の増加によって、次の年の確定申告ではまた非課税世帯に復帰する、さらに次の年はまた軽減された保険料のせいで課税世帯になるといった年ごとの凸凹状態で推移するというのが先輩年金生活者からの説明である。

 3月の書籍費は5万円の大台。購入冊数390冊で3か月トータルで1000冊を越えた。18きっぷの時期になって、例会のある日曜日は、朝一度電車に乗って比較的近場のブックオフに行き、一度帰って再度ブックオフ経由で例会に行くというのを繰り返してたらこの数になった。新刊書籍は、『月の光』『チンギス紀』『オーバーロード』など12000円。なろう153冊。コミック46冊。収穫は、持ってなかった半村良『太陽の世界①~⑩』、ドーキンス『虹の解体』、バイコフ『樹海に生きる』、『セルボーンの博物誌』、居安正『ジンメルの社会学』、『切支丹風土記 別巻文学編』米沢嘉博編『ロボットマンガは実現するか』など。

 3月の読書は、先月言っていたVRMMOものとともに、出来の悪い作家作品を集中的に片づけた。どうしようもなくだめな作品が書籍化されて、それはしかたがないにしてもなぜ2作目も刊行されるのか、そんなことを思いつつ、読んだ。なかには続きをWEBに読みに行って、書籍化部分はあれでも編集の手が入っていたんだとさらに驚かされるものもあった。本にするなよと強く印象に残った作家が何人かいるのだけれど別に志茂田景樹みたいに直木賞を取ってるわけでもないので、あえて名はさらさない。
 予定していた能天気VRMMOスローライフもののまとめについては、コロナの大変な世情の中で、なんか書く気が起きなくなっったので、今回は短く近況報告にとどめることにした。

 SFセミナーが中止になって春のイベントがなくなったので、4月は泊での古本屋巡りを検討している。コロナについてはわりと気にしていない。密室密集肺呼吸の危険性ということは、要はウイルスの飽和攻撃に気管咽喉頭部を突破され肺に到達されるかどうかの勝負であると思うので、あまりしゃべらず、マスクによって侵入数を削ったうえで、大量に水分を取って、咽喉頭部が戦線維持をできている間にウイルスを消化器方面に流し込めばそう心配はしないでいいと思う。芸能人のようにしゃべらない、スポーツ関係者のように常態的に肺呼吸をしなければ感染しても咽喉頭部で抑え込めると信じている。
 これで4月も購入量300冊越えは確定かなあ。


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