倫理綱領を巡るワーカー等福祉関係者の意見

1990年代のとても古いページです。
登場人物の身分等全く変わっていることお許しを。
ただ、議論の本質はあまり変わっていないから参考になると思うのです。


僕の何人かの電子メール友達の中で、プロのワーカーの方たちに「倫理綱領」を巡ってご意見を下さるようお願いしました。以下に、それを「掲載」させていただきます。感謝感謝!!
ご覧になってコメントがあれば、是非メール下さい。そして、もしお許し頂ければそれも掲載していければなと思います
このコーナーは、原則として、いただいたメールを無修正、実名でそのまま、掲載し、皆さんの参考にしていただくことにしたいと思います。
ただし、ご本人からの希望がありましたら、匿名、部分掲載は当然オーケーですので、ご遠慮なくどうぞ、ご意見をお寄せ下さい。


99.12.10改

1.水戸さん  2.斎藤さん  3.芹沢さん  4.須田さん  5.高橋さん  6.本村さん
7.小野さん(97.9.5)  8.鈴木さん(98.9.18) (8.へのコメント99.3.23)
9.田口(99.1.27) 10.原さん(99.12.10)



社会福祉士 水戸憲一さん!!

やあ、全国のソーシャル・ワーカーの諸君、こんにちは。
「ソーシャル・ワーカーの倫理綱領」をきちんと守っているかな?
もちろん社会福祉士でもあるぼくは守ってるぜ。
(ほんまかいな、おまえさん!)
でも、あの要項って、どこかおじんくさいんだよな。
だから、ソーシャル・サポート・ネットワークの水戸憲一が考えた倫理綱領は これだ!

1 ワーカーはいかなるときでも常にトレンディーでなければならない。
2 ワーカーはいかなるときでもエレガントに演出しなければならない。
3 ワーカーはその色気を使ってクライエントを誘惑してはいけない。ただし 、元か
ら色気がある場合、その限りではない。
4 ワーカーはユーモアのセンスを磨くため、自主的に他の専門職員と交流を 図らな
ければならない。
5 ワーカーはその立場を馬鹿にされた場合、あらゆる手口を用いて反撃しな ければ
ならない。
6 ワーカーは人情と根性を駆使して、あらゆるケースに立ち向かっていかな ければ
ならない。
7 強くなければ生きていけない。
8 優しくなければ生きる資格がない。
9 ワーカーは自分自身の心のトラウマを癒されるべきである。
10 ワーカーは保健婦(または看護婦)を恋人にして在宅介護支援センターを 運営す
るのが望ましい。

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小山先生いわく「こいつに意見を求めるべきではなかった・・・」
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小山のコメント:
さすが!ミト大明神。無理なお願いにも関わらず、こちらのメールから24時間以内でメッセージいただきました。
勿論お返事第1号です 感謝感謝

楽しいメッセージの中に、いくつも大事なポイントが含まれていますね。
ミトさんには騙されてはいかんのですぞ。


神奈川県公務員 斎藤憲磁さん!!!!

1通目
小山先生、ご無沙汰しております。斎藤@神奈 川県立三浦しらとり園です。ご提案の件、了解いたしました。私も最近勉強し直 さなければならないと思っていましたので、ぜひ参加させてください。もっとも、意見なんて大それたものは出せません。感想程度です。とりあえず、以下に最近思っていることを記しておきます。

 ・ソーシャルワーカー協会の倫理綱領( 以下倫理綱領)は10年前に宣言されているが、現在ようやく様々な福祉の分野 で「人権」が取りざたされている。この意味では、10年前に既に宣言として公言されている点は比較的(あくまでも比較的に)先進的であると言える。
・し かし、そのわりには倫理綱領は福祉の現場の中に浸透し切れていない。
・職場の 同僚(福祉従事歴は数年程度)の何人かに、倫理綱領の存在を 知っているかどうかを問うても、知らないものが多い。
・自分の所属する施設でも、職員の倫理 綱領を作成しようとする動きもあるが、他の団体や施設でも同様であろうし、 般化されていない。
・私自身、ソーシャルワーカー協会の会員でありながら、啓蒙活動などはほとんどしていないこともあり、倫理綱領自体を学ぶチャンスは 少ないのかとも思う。
・倫理綱領の中の前文に「それを賛同するものによって 専門職団体を組織する。」とあり、若干の孤立性を感じる。(もっとも社会福祉士会もこの綱領については、福祉士会としての倫理綱領としているが)
・全 ての社会福祉従事者としての倫理綱領として存在し得ないものか考えてみる余地はあると思う。
・実際にこの倫理綱領を遵守する者として、自己の状況をチェ ックする方法がほとんどなく、倫理綱領だけでなく、時代の流れに相応しいチェック項目などがあるとより身近になるのではないか。

以上ざっと日頃思っ ていることを列挙してみました。思いつきのままですが、この程度でよろしいで すか?ぜひ他の方の意見を聞いて、論議してみたいと思います。 *

2通目
*先程メールしました、斎藤@三浦しらとり園です。今、先生のページ からメールしております。
水戸さんの倫理綱領についての意見読みました!さっ すが水戸さん!そんな感じですね。
私の先程のメールは、ちょっとまじめすぎた かな?まぁいいや。色々な方の意見が集まるといいですね。実に勉強になります !!それぞれの立場での自分なりの倫理綱領があってもけっして不思議ではない はずだし。

私なりの倫理綱領で言えば、
・援助業務にあたって後、あとで後悔し ないこと
・自分の信念に基づくこと
・納得できないことは、安易に妥協しないで 問題の 解決にあたること
・福祉援助は専門職だけのものではない
・専門職とし ての自分の位置を常に考えることぐらいでしょうか!こんな考え方もありますね !

斎藤憲磁*

小山のコメント:
神奈川県公務員で、施設指導員の三浦さんの意見。わざわざ、ミトさんの文章を見て追加メール下さいました。
感謝!!
綱領に加えて、チェック項目のようなものがいるのではという提案は、大切だと思いました。


山之内母子寮寮長芹沢出さん!!!!

 小山先生から連絡をいただき、みなさんの投稿を見せていただき、福祉施設職員の 倫理綱領を探したのですが見つからない(私が知らないだけかも)!
 施設や、職員の機能・役割・目的が書かれたものはあるのですが、「倫理」と言う 言葉さえ発見できませんでした、とても残念です。もしどなたか福祉施設や職員の「 倫理綱領」について書かれているものをご存じの方があれば是非教えてください。

 ぜひ山ノ内母子寮の倫理綱領を作成してみたいと思っております。

 私個人としては、倫理綱領とは仕事の場だけのものではなく、生活の中のあらゆる
場面で生かされる事によって、個人の倫理が向上され、また職場に還元されるのでは
ないかと考えます。

 たとえば、「施設職員は、自分に与えられた休暇を有効に利用し、余暇を楽しみ、 常に自分自身が精神的安定を得られるように心がけなければならない。」などはいかがなものでしょうか。

社会福祉法人宏量福祉会
山ノ内母子寮  芹沢  出
nogiku@kyoto-inet.or.jp 

小山のコメント:
「山之内母子寮の倫理綱領を作ってみたい」という心意気素敵ですね。
是非、出来たらこのコーナーに掲載させて下さい。


神奈川県社会福祉士会の須田さん!!

 まず,「倫理綱領」という気の重いテーマに,即メールを書く若い人達に敬意を表します。
倫理とは何か,綱領とは何かなどと漢和辞典を引いている自分の姿がおかしくもあります。さて,先人が苦労してまとめられたソーシャルワーカーの倫理綱領をもう一度読み直してみました。

感じたことを以下に列挙します。
1.言葉も内容も古典的だ。
2.翻訳調だ。
3.借り物の感じがして,身に付かない。
4.です,ます調でない。
5.行動の言葉になっていない。
6.多すぎて,何を守ればいいのかわからない。守る気にもなれない。
7.それに比して,介護福祉士会の倫理綱領はシンプルであり,自分の言葉になっている。内容も時代の要請に応えている。これなら守りたいと思うし,守っていける。
8.法律との整合性はとれているのか。
9.個別性(ワーカーとクライエントとの関係)ばかりで,地域性とか地域ケアの視点がまったくない。
10.利用者,ノーマライゼーション,サービスの選択とかの現代のキーワードがない。
とか,否定的な言葉ばかりになります。

実は,1993年1月15日にこの綱領を日本社会福祉士会の倫理綱領として採択した時,
何人かの人から,同様な批判的見解があったことを思い出します。
しかし,綱領とはもともと,いつの時代にも通用する普遍性,原理性を持つものだとすれば,その表現がわかりづらいのは,仕方がないものなのかもしれません。

 私の仕事である生活保護では,ケースワーカーのバイブルとされている生活保護手帳の冒頭に生活保護実施の態度として次の通り書かれています。
1. 生活保護法,実施要領等の遵守に留意すること。
2.常に公平でなければならないこと。
3.要保護者の資産,能力等の活用に配意し,関係法令制度の適用に留意すること。
4.被保護者の立場を理解し,そのよき相談相手となるようにつとめること。
5.実態を把握し,申請に基づいて必要な保護を行うこと。
6.被保護者の協力を得られるよう常に配意すること。
7.常に研鑽につとめ確信をもって業務にあたること。
これも,また、堅苦しい。

その昔,東京のあるケースワーカーが「プロケースワーカー100の心得」をまとめたことがあります。
例えば,
はりつめた気持ちのクライエントに対する時は,こちらの側で息を抜く。
ケースワーカーは,少し抜けた顔ができるとよい。
ケースワークは覇気なり。
といったことが100並んでいます。
これだと多くの人が理解でき,納得します。

今,私が唱えるとすれば次のようになります。
1.元気のでるケースワーク実践を。
2.元気のでる職場作りを。
3.元気のでる福祉社会を。
さて,ところがです。やはり今年も職場に実習生を迎え入れれば,この倫理綱領を読み,
そこから学び合うことにします。
そして,今,私のホームページにもこれを機会にこの倫理綱領を書くことにします。
わかりやすい綱領ができるまで,私はこの綱領を大切にします。
                             須田幸隆
                                   以上
*********from YOKOHAMA*********
I'm glad to send you E-mail by Eudora
Name: Yukitaka Suda
E-mail: zi8y-sd@asahi-net.or.jp
URL: http://www.asahi-net.or.jp/~zi8y-SD/
***************************

小山のコメント:
「プロケースワーカー100の心得」「介護福祉士の綱領」等、分かりやすい、納得しやすいものをという側面と、普遍性、原理性をもつものであるべきという側面の両立についての難しさについての指摘は、みんなが、考える必要があるテーマですね。


カトレアホーム施設長高橋さん!!

> 小山さん
>  倫理綱領ですかあ。困ったなあ。
>  実は、ぼくは、全社協の確か第1回目フ社会福祉士受験資格取得の通信教育に応募
> して落ちたのですよ。その時の選考論文が、福祉従事者の倫理について述べよ....
> てなテーマを選んだと記憶してます。700字くらいで書け.......だったかな?
> (間違えてたらごめんなさい)
>  それなりに一生懸命書いたのですが、結果は不合格!(受講を)
>  それ以来、社会福祉士の受験資格に応募する気をなくし、倫理を語るのも嫌いにな
> りました。(単なる負け惜しみデス)
>  でも、社会福祉士の(悪友)水戸憲一さんの論文を読み、そうか!このように書け
> ば選考を通ったのかと感心しました。
>  さて、そんな経過もあり、倫理を語ろうとしても、考えが思い浮かびません。ぼく
> はいつも自分の中から湧き上がって来るものだけを直感的にに書いてきただけですから、
>倫理綱
領というキーワードには、今のところ自分の中から湧き出るものがありません。
>(ワ
ガママなんです)
>  これだから、福祉従事者の意識が低いのだと批判されそうですが......、ぼくはあ
> まり専門職意識が無いのかもしれません。
>  それでは、いけないのでしょうか?
>  ここでの論議は、「およそ援助専門職者は全て自らの守るべき理念や行動規範を一
> 定共有していなければなりません。」「接し方に、最低限の共通項はある筈です。」
> という前提で始まっています。
>  ぼくは、倫理綱領は必要ない!という積極的な否定論を持つほどのまとまった考え
> があるわけでもありませんが、正直興味が湧きません。反対に生活リハビリの三好春
> 樹さん達なんかは、どう考えているのかなあ?ユニークな視点だからナア。なんてこ
> とに、興味があります。
>  今のところこんな問いかけをぼくの意見としておきますね。
>
>            高橋健一 (Kenichi Tkakahashi)

****************************
小山のコメント:
「操作主義」批判の高橋先生ですから、このコメントも「当然」かもしれませんね。
(こやまの、「このテーマについて考えてみよう」から、ジャンプしてみて下さい。)
確信犯の高橋先生を如何に、仲間に入れていくかが、「倫理綱領」尊重派のテーマですね。
余談ですが、僕が続けていた大阪市の保健婦さんの勉強会のメンバーに三好ファンがいて僕の勉強会のメンバーでもあり、三好ファンでもある人が中心になって20人くらいで大挙して三好さんを御輿に担いで、夜中に我が家に来たことがありました。
数年前のことですが、懐かしく思い出します。そのメンバーがそのあと、大阪で「おむつ外し学会」をしたのでした。きっと、小山が高橋先生と話したら、あの時のような楽しくて、やっかいな確信犯同士のディスカッションになるのでしょうね。



琉球大学法文学部人文学科地域福祉学講座の
本村真先生のコメントです。

 ◎倫理綱領をすべてのソーシャルワーカーが尊守すための方法

 倫理綱領を制定する目的を、クライエントの権利を擁護するという点に絞り、私なりに考えてみました。
 方向1 違反者に対する罰則を現実のものに
 そのためには
 ■日本ソーシャルワーカー協会に「倫理綱領違反者対策本部」を設置する
 ■すべてのソーシャルワークの実践を行う現場に、「これが倫理綱領違反だ!」というパンフレットを配布し、すべてのクライエントにこれを配布すことを義務づける。
 ■違反者に対しては、それにふさわしい社会的制裁を実際に課す。

  例 違反が対策本部の調査の結果明らかになれば、1回目は文書による厳重注意、2
    回目はソーシャルワーカー協会の会長名で所属機間の長に抗議文を出す、3回目
    は実名、所属機間名をソーシャルワーカー協会の会報に載せる。

 *おそらく以上のことの実現に向けて活動していく中で、現状の倫理綱領は大幅に変更、加筆され、具体的な行動指針も考えられるようになる。
 そしてこの案が現実になれば、現場のワーカーが「倫理綱領」を知らずとも実践ができる時代は終焉を迎える。

 クライエントとワーカーの関係は、「密室の関係」になりやすいと考えられます。
その密室をクライエントの側から打破できる方法を倫理綱領に求めるのなら、上記の案が一つの方法として考えられるのではないでしょうか。

 あまりにもひどいワーカーの対応に対しては、時折マスコミ報道などを通しての社会的制裁が加えられる場合がありますが、それは氷山の一角なのではないでしょうか。
 それとも、実際の現場ではクライエントの権利が侵害されるような対応はほとんどなく、だから、社会福祉を学んで現場で働く人たちでも「倫理綱領」の必要性を強く求めないのでしょうか。カウンセラーとしての現場しかもっていない私としては、社会福祉の現場の生のを声をもっともっと聞きたいなと思っています。

 また、「これが倫理綱領違反だ!」というようなパンフレットにしてクライエントに配布すれば、クライエントの側からも「これも倫理綱領にのっけてくれ」という意見が言いやすく、専門職団体だけの自己満足に陥らない、「倫理綱領」になるのではないでしょうか。
 
 P.S
最初は自分自身、実現は「無理だろうな」と思いながら書いていましたが、ふと、「予算とやる気があれば実現可能かな」と、半分くらい思っています。やる気がある人は恐らくたくさんいるでしょう。誰か宝くじを当てて、日本ソーシャルワーカー協会「倫理綱領違反者対策本部」設立準備基金を設置してくれる人はいないでしょうか。

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小山のコメント:
本ページ初の、大学関係者からの意見です。「罰則規定」の提案は、ユニークで参考になりますね。
アメリカ心理学会の「心理学者のための倫理基準・事例集」(誠誠書房)をみても、アメリカ心理学会会員資格の剥奪など、踏み込んだ対応が紹介されています。もちろん、異論はありでしょうが、参考になる提案です。



7.京都で、老人福祉関係のワーカーをしておられる小野さんのホームページにジャンプです。

みんなで作ろう!(^_^;) 福祉施設職員憲章


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小山のコメント:
このコーナーは、個人ページのリンクで紹介した小野さんのホームページ内にあります。
僕宛にメールを頂いたわけではありませんが、僕のこのページと同趣旨の内容ですのでリンクさせてもらいました。良いですよ。

<残念今はなくなっています。リンクはずしました。>



8.鈴木さん

message=こんにちは。私は東洋大学の社会福祉学専攻博士前期課程2年に在学中の学生です。
今日はじめて先生のページを発見し、じっくり読ませていただきました。
修論は児童養護施設のケアワーカーの抱える問題について特に主任保母・指導員に焦点をあてています。
ある養護施設で5年ほど前、実習をさせていただいたとき、私を担当して下さった保母さんの子どもに対する言動と言ったらそれはひどいものでした。暴力こそふるわないまでも”虐待”と言っても過言ではないでしょう。
そのことに疑問を持ち、怒りさえも覚え、次に行った実習先でも「ケアワーカーって何だろう。」「本当にこの人たちが子どもと生活していいの?」と強く思いました。そして今日に至っているわけです。
常識的に(常識ってあってないような世の中ですが)考えられないことばかり。
ソーシャルワーカーの倫理網領についてを読んで、私の言いたいことはもしかしてこのことだったのかもしれないと思いました。倫理網領が守られるためには職務条件など改善されなければならないところが多々あると思います。
私は現場経験がなく現実にはわからないところがいっぱいあります。本音で語ってくれる方々の話を聞く機会がもっとあったらいいのにと思っています。
今後とも何かにつけこのページを活用させていただき、また、何らかの形で参加してみたいと思います。
ありがとうございました。                           
    ****************************************************************************
小山のコメント:
現場の方には、いっぱい反論があると思います。「一瞬のシーンを実習生が見ていて、ひどい声掛けだ、体罰だと言われてはかなわない」と言う思いをもたれる方も多いと思います。そして、その指摘・反論は半分当たっていると思います。実際、人と人との関わりは、一シーンで語られるほど単純でないものです。信頼関係があるからこそ、乱暴に見える関わりをすることもあるでしょう。危険を防ぐために怒鳴ることも、たたくこともあるでしょう。それをいちいち、部分だけを見て批判されてはかなわないと言う思いは肯定されうると思います。
しかし一方で、この思いは半分間違っていると思います。本当に通り過ぎるシーンを人は誤解するでしょうか。一瞬のシーンにこそ、本質的関係がかいま見られるともいえるのではないでしょうか。こちらは信頼関係があるからこそ怒鳴っているつもりになっているけれども、本当にその言葉は態度は相手を傷つけていないだろうか、萎縮させてはいないだろうか。実習生は、職員のクライエントへの声掛けにクライエントのように萎縮してしまっていたり、傷ついていたりしているのではないでしょうか。
萎縮して福祉から撤退してしまうのではなく、踏みとどまってより良い援助について考えていこうとしてくれている若い仲間に拍手を送りたいと思います。現場のみなさんもこの思いを仲間として受け止めていっていただきたいと思います。



9.田口さん

message=意見を求められるとすぐに言ってしまう悪い癖で、さっそくお便りします。
先生のレスを見てから、実は倫理綱領を読み返してみました。なんだかもったいないような気がしました。いままでなんで良く読まなかったんだろうと。そんな気持ちをまとめたのが下記の駄文です。

あらためて倫理綱領を読み直してみましたが、やっぱりいいですね! って言っても日本のものでなく、全英ソーシャルワーカー協会のものです(笑)(小山先生、イギリスの倫理綱領も是非載せてください! )
日本の「ソーシャルワーカーの倫理綱領」は、今ある中では最も包括的で良いと思います。でもちょっと「体温」っていうか熱のようなものが稀薄なのが物足りないなー。だから、言葉だけが難しいと敬遠されるのでは。良いのです確かに、でも言葉が生きていない。もったいないです。
全英SW協会(以下BASW)倫理綱領。私が読んだのは、訳文でしかも抜粋です。NASWのものなどは英語が読めなくて分かりません(泣)でも、これだけを見ても「倫理綱領」ってものが持つ素晴らしい力が分かります。すごい分量なのですが、それだけにソーシャルワーカーの仕事の全体像がなんとなく見えてくるような、「ああ、そうだったのか!」と思うようなことがいっぱいありました。
BASW倫理綱領の冒頭に「目的」という項目があって、「倫理綱領の本来の目的は、これら暗黙裡の原則をクライエントの保護のために明白にすることである」とあるのです。私はこの一文で脳天打ち抜かれてしまいました! 「クライエント保護のため」と言い切り、さらに私たちの実践には「暗黙裡の原則」というものがあるということ。ソーシャルワークって何?と思いながら毎日四苦八苦しているわけで、それを明文化するなんてナント素敵な!と思ってしまいました。
「実践の諸原則」という項目の第一には「ソーシャルワーカーは人間福祉のための諸政策を立案し実施していくことに貢献し、そしてソーシャルワーカーの知識、技能もしくは経験が非人間的な諸政策を促進させるのに利用されることを許さない」!!!「許さない」とは凄い、でもこれにはちゃんと注釈がついていて「出来る限り」という限定付きであると断っています。それにしても、すごい心意気ですよね。そうだそうだ!、と喝采を送りたくなります。(うー、か○ごほけん…)
同じ項目の第7に「自らが与えるサービスの水準維持に対して責任を負う」とあります。そして、専門職として継続的な教育・訓練を受けることがソーシャルワークの実践にとって基本であり、資格取得のための訓練がソーシャルワーカーの教育のすべてではない、とも書いてありました。いやはや!
それとねそれとね!「ソーシャルワーカーはクライエントが利用できる選択の幅を広げ、決断する力を増すように援助する」ですって。「決断する力を増すように援助する」ってさらっと言うけど、ぐーの音も出ないほどたまげました。難しい言葉で言えばエンパワーメントでしょうか。この倫理綱領のすごいところは「自己決定」とか「ノーマライゼーション」とか、はやりの言葉、もしくは一人歩きするような言葉を使ってないところです。全て一般的な用語で書いてありますし、わざとそうしてあると注釈までついています。
倫理綱領は私たちの指針になると思います。もっと研究したいテーマですね。これを点検することによって、ソーシャルワークとは何か、少し近づけるのではないでしょうか。それだけの中身があると私は思いました(BASWを読んだだけですが)。
最後に「原則についての声明」を引用します。これを読んで、毎日の板挟みの苦しみから解き放たれるような、あーこれでよかったんだ、と肯定できるような、癒しを感じてしまいました。「ソーシャルワーカーは、政府や社会、また機関の活動の仕方が困苦や苦痛を作り出し、またその一因をなしたり、その軽減の妨害をしたりしている実態に、有力者たちや一般大衆の注意を向けさせる権利と義務がある。ソーシャルワーカーは、権力を持っている組織と、相対的に力がないサービスの申請者との接触面に立つことが多い。確かにソーシャルワーカーは、自らが業務に取り組んでいる当局に対して責務があり、その専門職としての業務の効果的達成に責任を負っており、またその機関の資源の運用にも責任がある。申請者の無力という点を考慮して、ソーシャルワーカーは申請者の権利を出来るだけ完全に実現させ、またそのニーズをなるべく満足させることを保証する特別な責任を負っている」!!!!!!この仕事をしていて良かった…(泣)

話は変わりますが、大学院生鈴木さんの意見は、小山先生がコメントをつけなければ攻撃されただろうと思います。現場の人から同じような話をよく聞くのです。「働いてみなければわからないよねー」と。しかし、私は小山先生とほぼ同意見です。実習生の気持ちも理解できないようでは・・・と思います。だったらどうしてそのようにクライエントに接しているのか、わかるようにしなければなりません。「分からないものが何も言うな」では、ソーシャルワーカーとは言えないと思います。ワーカーだってクライエントと同じ立場で生活したこと無いのだし、それでも受容とか共感とかするわけです。
それが経験主義でない私たちの仕事の科学のはずです。クライエントとワーカーだって、基本的には分からないもの同志。そこからはじめなくちゃ、と思います。

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小山のコメント:
メディカルソーシャルワーカーの田口美和さんに、投書をお願いしました。ご本人が、「The社会福祉士!」というHPの運営に関わっておられる方です。
田口さんが、おっしゃるように、倫理綱領って読み直してみると、素敵で役に立つこと一杯です。
皆さんも是非ご覧下さい。
BASWの倫理綱領失礼しました。見つけたいと思います。






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