シーン247 リックの店(リック、イルザ、ヴィクター、ルノー) ルノー: (ジェスチャーをしながら) 「そこにいたのか! その銃を少し下げてもらえるかね」 飛行機のモーターの音が聞こえる。 ラズロ: (イルザの腕をとりながら) 「イルザ、急ごう」 イルザ、リックをちらりと見てからラズロの方を向く。 彼女は顔色が悪く、何か決心したように見える。 イルザ: (緊張した声で) 「ヴィクター、こんなことを言うのはつらいけど・・・。 あなたには悪いのだけど、私はあなたと一緒には 行けないわ。行くべきだけど、そう分かっては いるけど・・・でもあなたと一緒には行けないの」 ラズロ: 「イルザ!」 イルザ: (ほとんど泣きながら) 「私はリックとここに残るわ、ヴィクター。 リックを愛しているの。パリにいた頃、彼を愛していたの。 一度はあなたのために彼と別れたけど、また同じことは できないわ。一年以上も彼のことを忘れようとしてきた。 あなたのことを愛しているわ、でもリックは特別なの。 私はここに残るわ、ヴィクター・・・リックと一緒にここに」 ラズロ: (とぎれがちに) 「イルザ・・・」 リック: (荒々しく割って入る) 「彼女の言っていることを聞くんじゃない、ラズロ。 彼女はあんたと一緒に行く」 イルザ: 「リック!」 リック: 「ぼくは君の知っているようなパリにいた頃のぼくじゃない。 もう君が愛するような人間じゃないんだ。酒場を経営し、 賭博の胴元になっている。毎朝部屋の鍵を閉めて 酔っ払うまで酒を飲んだくれてる。 これからも朝晩そうして残りの人生をおくるだろう」 イルザ: 「なら私も一緒にそうするわ」 リック: 「いや、もうすっかりそれが身にしみてしまっている。 誰の助けも必要ないほどにね。君にいてもらう必要はない。 (ラズロを指して) 君は彼と行くんだ。彼は君を必要としている。 ぼくはもう終わった人間だ。君が一緒にいるべきなのは 闘う人間だ、酒場の店主じゃない」 イルザ: (泣きながら) 「もしあなたが私を説得しようとしてるなら・・・」 シーン248 ルノーのクローズアップ ルノー: 「ちょっとよろしいですか、お嬢さん。このような お話の際中申し訳ないが、あなたには選択する余地は ありませんよ。リックは残りの人生を労働キャンプで すごすことになるでしょうからね」(101〜102ページ)
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