海外図書紹介 『カサブランカ -製作の舞台裏-』

書籍名:Casablabca: behind the scenes
著者名:Harlan Lebo
ISBN :0-671-76981-2
出版社:FIRESIDE (Simon & Schuster Inc.)
価 格:U$15.00
出版年:1992

<内容>
 名作『カサブランカ』製作の舞台裏を、当時の時代背景、個々の俳優、シナリオの紆余曲折、製作現場、批評など幅広い視点から描いている。全224ページ。白黒写真十数点。
<引用>*映画化されなかったシナリオの終幕部
 シーン247 リックの店(リック、イルザ、ヴィクター、ルノー)

 ルノー:
(ジェスチャーをしながら)
「そこにいたのか! その銃を少し下げてもらえるかね」

 飛行機のモーターの音が聞こえる。

 ラズロ:
(イルザの腕をとりながら)
「イルザ、急ごう」

 イルザ、リックをちらりと見てからラズロの方を向く。
 彼女は顔色が悪く、何か決心したように見える。

 イルザ:
(緊張した声で)
「ヴィクター、こんなことを言うのはつらいけど・・・。
 あなたには悪いのだけど、私はあなたと一緒には
 行けないわ。行くべきだけど、そう分かっては
 いるけど・・・でもあなたと一緒には行けないの」

 ラズロ:
「イルザ!」

 イルザ:
(ほとんど泣きながら)
「私はリックとここに残るわ、ヴィクター。
 リックを愛しているの。パリにいた頃、彼を愛していたの。
 一度はあなたのために彼と別れたけど、また同じことは
 できないわ。一年以上も彼のことを忘れようとしてきた。
 あなたのことを愛しているわ、でもリックは特別なの。
 私はここに残るわ、ヴィクター・・・リックと一緒にここに」

 ラズロ:
(とぎれがちに)
「イルザ・・・」

 リック:
(荒々しく割って入る)
「彼女の言っていることを聞くんじゃない、ラズロ。
 彼女はあんたと一緒に行く」

 イルザ:
「リック!」

リック:
「ぼくは君の知っているようなパリにいた頃のぼくじゃない。
 もう君が愛するような人間じゃないんだ。酒場を経営し、
 賭博の胴元になっている。毎朝部屋の鍵を閉めて
 酔っ払うまで酒を飲んだくれてる。
 これからも朝晩そうして残りの人生をおくるだろう」

イルザ:
「なら私も一緒にそうするわ」

リック:
「いや、もうすっかりそれが身にしみてしまっている。
 誰の助けも必要ないほどにね。君にいてもらう必要はない。
 (ラズロを指して)
 君は彼と行くんだ。彼は君を必要としている。
 ぼくはもう終わった人間だ。君が一緒にいるべきなのは
 闘う人間だ、酒場の店主じゃない」

 イルザ:
(泣きながら)
「もしあなたが私を説得しようとしてるなら・・・」


シーン248 ルノーのクローズアップ

 ルノー:
「ちょっとよろしいですか、お嬢さん。このような
 お話の際中申し訳ないが、あなたには選択する余地は
 ありませんよ。リックは残りの人生を労働キャンプで
 すごすことになるでしょうからね」
(101〜102ページ)
<入手先>
 93年にトロントの新古書店にて7C$で購入。
(お買い得だった。日本では3〜4千円で売っていた。)
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96年9月1日作成