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 『マルクス兄弟スクラップック』

 書籍名:The Marx Bros. Scrapbook
 著者名:Groucho Marx and Richard J. Anobile
 ISBN :0-06-097265-3
 出版社:Perennial Library
 価 格:C$8.99
 出版年:1989


<内容>
 70年代に行われたグルーチョへのインタビュー。それを年代順にいくつかの章に編纂し、それぞれ関係者(ガンモ、ゼッポ、ジャック・ベニーなど)へのインタビューを補足し、当時の新聞記事や写真をちりばめた文字通りの「スクラップブック」。グルーチョの闊達な記憶力と年をとっても衰えない毒舌でユーモラスに兄弟の歩みが語られていく。英語も平易で大変に読みやすく、兄弟のエピソードが生き生きと語られたインタビュー本の傑作。映画界にデビューする前のヴォードビル時代の兄弟の写真が珍しい。
 グルーチョの毒舌は健在で、「当時のチコは女の子とやりまくってたよ」などと言う時に「fucking」という言葉を平気であちこちに使っている。また兄弟で唯一映画に出演せず、ウディ・アレンの『スターダスト・メモリーズ』でもオマージュがささげられたガンモが、なぜ彼だけ映画に出演しなかったのか、映画の代わりに何をしていたのかを語るインタビューも興味深い。
 推奨。全256ページ。


<抜粋>
グルーチョ「我々の舞台名はアート・フィッシャーというモノロギスト(訳注:独演で漫談を行うコメディアン)がつけたんだ。彼は人々にニックネームをつける癖があって、それらはぴったりはまったんだ。レナードはチコと名づけられた。当時、女の子たちはチックスと呼ばれてたんだが、チコは女の子が大好きだったからね。アーサーはハーポになった。これは分かるね。ガンモの名前の由来は、彼がゴム底の靴が好きだったからだ。私の名前は私が厳格でまじめだったからだ(訳注:グルーチョの由来は"grouchy(気難し屋)"から来ている)。後にゼッポになったハーバートはその頃はまだ小さくてショーには加わってなかった。彼がその名前をつけるのは、もっと後のことだ。
 フィッシャーは新聞の漫画から名前をとってたんだと思う。『モンク・ファミリー』とかそういったたぐいのものだ。
 私は名前なんかどうでもよかったよ。ジュリアス(グルーチョの本名)という名前にそんなに思い入れがあった訳ではないからね。私の名前は叔父にちなんでつけられたんだ。彼は面白い人間で、みんな彼のことは好きだった。叔父は5年ほど私たちと一緒に暮らしてた。親父は追い出したがってたけど、お袋がそうさせなかった。叔父はきっと金持ちだから、死んだら金を遺してくれるって、お袋は親父を説得したんだ。何しろ息子の一人に叔父の名前までつけたんだからってね。やがて叔父が死んだ。彼は何を遺したと思う? ビリヤードの球、メガホンとかいった価値の無いものと、親父への80ドルの借金だけだったんだ!」
(18ページ)


<入手先>
93年、カナダにて購入。


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2000年2月20日作成