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■2007年06月30日 第二回ポプラ社小説大賞

 第二回は大賞受賞作なし(優秀賞1作、奨励賞2作)。前回の『削除ボーイズ0326』を上回る作品はなかったということか。2000万をぽんと渡すのはたいへんです。しかし、あれを基準にすると、超えるのはけっこうむずかしいのでは。3年に1回ぐらいしか受賞作が出なくなったりして。

 ところで、2ちゃんねる各所で一時はびこっていた「『削除ボーイズ』は映画『バタフライ・エフェクト』のパクリ」という妄説にまったく根拠がないことは、『文学賞メッタ斬り! 2007年版 受賞作はありません編』の中でも詳しく説明したんですが(p.88)、「大森はそのパクリに気づかず推薦し、あとからあわてて言い訳を書いた」という趣旨のコピペがいまだにしつこく貼られている。こんなの。
> 「時間ものにまだこんなすごい奥の手があったなんて……。
> 今までの人生からどの3分26秒を消したいか、考えはじめたら夜も眠れません」
>                           翻訳家・評論家 大森望
> ↑帯の文句

> ↓小説すばる11月号の書評
>
> 「映画の歴史改変もの(「時かけ」「バタフライ・エフェクト」・
> 「サウンド・オブ・サンダー」etc)でもおなじみのパターン」 (大森望)
>
>  大森氏は読んで、最初はバタフライのパクリとは気づかず帯を書いた。
>  しかし自分でか、だれからかの指摘で非常に似ていることに気づき、小説すばるで
> > 時をかける少女、デイズオブサンダーなどのまったく設定の違う作品とともに
> > バタフライをあげて、タイムリープものと括り、カモフラージュした
 いちいち反論するのもバカバカしいが、いい加減うんざりしたので一回だけ書く。
 まず、「バタフライ・エフェクト」については、劇場公開前に試写で見ているし(2005年2月16日の日記参照)、映画評も書いたから、もしパクリがあったとしたらそれに気づかないこともありえない(SFおたくはむしろそういうところにばっかり注意して見ている)。
 では、小説すばるの書評で「おなじみのパターン」と書いたのがなんのことかと言うと、それは元の文章にちゃんと書いてある。主語まで含めて引用すれば一目瞭然。
どうやら、KMD[註:時間削除装置]によって過去は書き換えられるけれど、書き換えた本人の記憶は保持されるらしい――というのは、映画の歴史改変もの(「時かけ」「バタフライ・エフェクト」「サウンド・オブ・サンダー」etc.)でもおなじみのパターン。過去を削除するたびに記憶がどんどん重ね焼きされてゆく。一種の歴史改変SFでありながら、“3分26秒間だけ”で“削除のみ”という厳しい制限のおかげで、タイムパラドックスが大きな問題にならない。KMD自体の背景や作動原理は棚上げにされているが、それを使うとどうなるか、どういう使い方がベストなのかという応用問題に関しては、なるほどよく考えられている。タイムマシンとは違う不自由さが小説の面白さに直結しているわけで、時間SFとしても新機軸だ。(小説すばる2006年11月号)
 推薦文の“すごい奥の手”とは、“3分26秒間だけ”で“削除のみ”という厳しい制限を課しながら歴史改変に挑むことを指している。それに前例があるというなら、素直に参りましたと頭を下げますが、「バタフライ・エフェクト」に似てることに気づかなかっただろと言われても笑うしかありません。やれやれ。


■2007年06月29日 石田黙展〜人造乙女博覧会@銀座

 新人賞仕事に飽きたので銀座に出て画廊まわり。

 文春画廊の石田黙展折原さんは毎日、朝からずっと会場に詰めてるんだとか。初めて見る実物はさすがの迫力。

 ついでに、ヴァニラ画廊で開催中のオリエント工業30周年記念ラブドール展を覗くと、会場に鈴木孝@アトリエ・サードが。なんか仕事のからみらしい。
 イアン・ワトスン『オルガスマシン』の解説を書いたりした縁で、コアマガジンのラブドール専門誌が毎号届くんですが、考えたら間近に本物を見たことは一度もなかった。
 あんなに美人に映るのは写真だけかと思ったら、実物も美人。間近で見ても粗がない。こりゃ、ハマる人が続出するのも当然か。
 展示物のうち二体は、自由にさわってもかまわないということで、やや緊張しつつ握手。こういう感触ですか。もっといろいろ触りたいが周囲の目が。係の人は、「もっと強く揉んでもらっても大丈夫ですよ。胸とか」と薦めるが、そういう勇気はありません。

 帰りに銀座駅で前Qに遭遇。階段の途中であずまんとゼロ年代と前賢に関する立ち話。
「大森さんがそうやってあおるから!」と決めつけられてたいへん心外でした(笑)。

 伊藤計劃『虐殺器官』は売れ行き好調でいちはやく増刷決定。『Self-Reference ENGINE』は、「オブ・ザ・ベースボール」の芥川賞候補効果を当て込んでか、3刷が決まったらしい。そんなに売れてるとは。


■2007年06月28日 137回芥川賞・直木賞予想

 PARCO出版の会議室で、恒例のメッタ斬り!版予想対談。最初はエキサイト・ブックス、途中から日経BPに移った流浪の番組ですが、今回からはPARCOの通販サイトに掲載されることに。なんだか思いきり浮いてますが、『文学賞メッタ斬り!』シリーズがPARCO出版から出ているかぎり、今後はずっとここで公開されることになる模様。今回は二人の予想がほとんど一致してるので、あんまり対立はありません。候補発表の7/5に予想を公開したあと、対談の内容は、7/9から7/12にかけて、4回に分けて掲載予定。→http://web.parco-city.com/literaryawards/137/

 対談終了後、ブックファースト渋谷店を覗く。2階文芸書の今週のランキングはますますたいへんなことに。3位が『ゴーレム100』、4位が『虐殺器官』、6位が『ミサイルマン』で、間にはさまれた5位の白石一文『永遠のとなり』がたいそう場違いです。

 ところで、『ゴーレム100』のイラストレーター、Jack Gaughanは、邦訳では「ジャック・ゴーガン」表記になってますが、SFの世界では伝統的に「ジャック・ゴーハン」だよな……と思って『リーダーズ・プラス』を引いたらちゃんと項目が立っていて笑った。誰が入れたんだ誰が。
ゴーハン Jack Gaughan (1930- ) 《米国の SF 挿画家; Astounding Science-Fiction, Galaxy Science Fiction などの SF 雑誌や Ace Books などのペーパーバックの多くの表紙画やさしえを描いている》.
というわけで、やはり「ゴーハン」が正解のようです。

 とmixiに書いたところ、SFイラスト研究家の川合康雄氏から、“アメリカの画家たちと話したときには「ジャック・ゴワン」と聞こえたのですが、「ゴーハン」なのでしょうか? 野田さんは確かに「ゴーハン」と書いています。柴野さんは「ゴワン」としているようです。どれがホント? ”とのコメントあり。綴りから考えて、「ゴワン」にはならないと思うんですが、どうなんでしょうか。


■2007年06月26日 推理作家協会賞@第一ホテル東京

 いくつかのメモ。

・野崎六助氏の長編部門選評がめちゃめちゃ長かったらしい。(そのあいだ外で東浩紀としゃべっていたのでよく知らないが、某社の編集者たちが口々に愚痴っていた)

・評論その他の部門の選評では、有栖川有栖氏が、 「小説を建築だとするなら、評論はライトアップのようなもの」と発言。
 横にいたミステリ評論家某氏とさっそく小声で意見交換する大森。
「正面からきちんと光を当てて建築を美しく見せるのが正しい評論だと」
「ってことは、正しくない書評は、裏から照明を当てて壁に亀裂を発見するとか」
「下に潜って懐中電灯で照らして、手抜き工事の証拠をさがすとか」
 などなど。

・小鷹信光氏のお孫さん3人が花束贈呈で大活躍。孫連れの受賞者は協会賞史上初めてでは、と大沢理事長が発言。
 巽昌章氏が子連れならちょうど一緒に遊べる年齢だったのに、今回は単身での上京だったそうで、孫・子対決はならず。 考えてみると、小鷹さんは娘ばかりか娘婿(東浩紀)も同伴だったわけで、これも珍しい例かも。

・桜庭さんの二次会で、ものすごくひさしぶりに後藤啓介氏と再会。21年前、初めての単独訳書『惑星救出計画』のカバーを描いてくれたのが、加藤洋之(現・加藤龍勇)+後藤啓介のコンビ。
 その後いろいろあってコンビは解消、後藤さんは一時、老人介護の仕事をしていたらしい。現在はイラストレーターに復帰。あんまりひさしぶりだったので、顔はすぐわかったのに誰だったかしばらく思い出せなかった。最近、そこで会うとは思ってもみない意外な人と会ったときに、どうしても名前が出てこないケースがけっこう多くて、だいぶ老人力がついてきた模様。

・小鷹さんの二次会は平均年齢の高さにもかかわらず料理は揚げ物中心。曽根さんや石上さん、松坂さんのテーブルではほとんど手つかずで残ってました。

・小鷹さんは、ミステリマガジン連載におけるエリスンとハリスンの間違いにまったく気づいていなかった模様。おそれおおくて誰も指摘できない?

・二次会場は、桜庭→巽→小鷹→桜庭と巡回し、解散後はSF組でコージー・コーナー。塩澤編集長と電車に乗って帰宅。


■2007年06月25日 中江有里トーク〜大宅賞・清張賞

 電車の中でなんとか横溝賞の桂美人『ロスト・チャイルド』を読み終え、赤坂ツインタワーのレストランで朝10:30から、hanakoのミステリ特集用鼎談。お相手は中江有里さんと石井千湖さん。 中江さんはなんと平山夢明『ミサイルマン』持参。『ミサイルマン』を持ってる姿だけでシュールです。そ、そんなもの持たないで!
 最近のミステリ方面の話題作をピックアップしてあれこれ語る企画。「最近のミステリの流行は?」と振られても、ミステリがあんまり流行してないからなあ……。

 鼎談後、大宅賞までに創元SF文庫の鏡明『不確定世界の探偵物語』解説を仕上げるはずが、不慮のバッテリー切れ。最低12ページ、できるだけ長く……と言われたので鏡明の伝記を書いてます(笑)。

 しかたないので銀座に出て、旭屋で文化放送のネタ用の新書を買い、帝国ホテルの椅子でぱらぱら読む。安倍晋三『美しい国へ』。なぜか初版(笑)。こんな本だったのか。麻生太郎『とてつもない日本』と対決させようと思ったが勝負にならない気が……。などとやってるうちに開場。

 文春のパーティに出るのはひさしぶり。石を投げられるかと思ったが、文春にはジェントルマンな方々が多く、(腹の底でどう思っているかはともかく)意外と大丈夫でした。

 大宅賞は立花隆の選考委員代表スピーチが爆笑。佐藤優の他の本のカバーまでとりだしてどんどん解説。
「鈴木宗男の懐へ飛びこめという外務省からの指令に従っただけだと書いてますが、もしかしたら今も、日本の論壇を制覇せよという外務省の指令に従っているだけじゃないかと」
「鈴木宗男さんのことは日本一うさんくさい政治家だと私は思ってるんですが、日本一の知性の持ち主が日本一うさんくさい男と組んで本を出したわけで……」
 などなど。
『自壊する帝国』は記憶で書いているにしては話が細かすぎる、フィクションじゃないかという声が選考会で出て、その話をご本人にしたところ、佐藤優氏は、私にはビデオテープのような記憶力があるんですと言って、その場にいた文春の編集者と初めて会ったときのことを克明に語りはじめた……。
 今週のラジオのネタはやっぱり佐藤優・鈴木宗男『反省』にするか。


■2007年06月22日 新潮三賞

「呪怨2 パンデミック」を見て、原稿を一本送ったあと、贈賞式から参加。
 福田和也は選考委員代表の挨拶で、講談社ノベルスをライトノベル認定。
 佐藤友哉の受賞者挨拶はバカウケ。本格ミステリ大賞の道尾秀介と双璧です。しかもユヤタンは、「ぼくはずっと新本格ミステリを書いてるつもりだったので」うんぬんと「新本格」を連呼。最近は本ミスでもめったに聞かれない言葉がこんなところで。
 7年前からあたためていたネタを炸裂させた恩田陸の受賞スピーチは完璧。その次に登壇したモリミーはたいへんやりにくそうでした。

 受賞者が佐藤友哉、恩田陸、森見登美彦、小池昌代というメンツだったせいか、会場にはありとあらゆる人が来ていた印象。海猫沢めろんと小川国夫が共存するパーティ会場も珍しい。あと、新婚の奥さん(主演女優)連れの乙一とか。

 二次会は、恩田会場の乾杯に付き合ってからモリミー会場。超大混雑。編集者と書店員がほとんどで、選考委員は浅田次郎だけ。あと作家は、西崎憲と西條奈加のファンタジーノベル勢くらいか。 浅田さんは、「二次会に作家ばっかり来る受賞者はダメ。編集者がたくさん来る受賞者が成功するんです」とスピーチしたらしい(伝聞)。

 モリミー三次会は、角川ししどんの仕切りで意外にもドレス。ドレスの椅子に森見登美彦が座ってるだけでもシュールなのに、ついでだからと葉巻にブランデーグラスまで用意され、おねいさん二人にはさまれての記念撮影とか。この写真が公開されると思いきり女性ファンを減らすに違いない。ぜひ公開してほしい。

 午前0時半、矢来町ブラッセルズの恩田会場に移動。こちらはまだ超満員。3時ごろ解散になり、最近、南砂町に新居を購入した新潮社S野と相乗り帰宅。


■2007年06月21日 『わが愛しき娘たちよ』重版決定


 復刊じゃなくて重版。夏のSFフェア用で、8月配本。
『スロー・バード』が名作セレクション復刊(新装版)で、コニー・ウィリスが重版とは……。どういう基準なのかよくわかりません。
 たんなる増刷なのでカバーも解説もそのまま。翻訳の直しも最小限。
 まあ、amazonで2000円という事態が解消されるのはめでたいが。
 というわけで、『わが愛しき娘たちよ』が読みたいのに見つからないという人は、8月までお待ち下さい。


■2007年06月20日 ベクシル/ハリポタ5


「ベクシル 2077日本鎖国」は、冒頭に3枚ぐらい設定説明のテキストが出るんですが、これが新人賞の梗概の冒頭だったら一次で落とすかも、と思った。テニヲハぐらいは間違えないようにしてほしい。北朝鮮化(?)している近未来日本にアメリカの軍事組織が潜入する話。絵面はともかく、鎖国の理由がまったく納得できないんですが、シーン単位ではけっこう面白いところもあり、「FF」劇場版よりはまだ盛り上がる。脚本の不可解ぶりはマトリックス3本目と同じぐらいか。そう考えると話も似てる。黒木メイサの主役はちょっと無理だった。
 ハリポタは原作でもつなぎの話なのでまあこんなもんか。しかし原作でほとんど無駄死にさせられた人に、映画で花道を用意してあげるという発想はないのか。中国系の女の子の扱いもそうだけど、原作のダメさに忠実すぎ。


■2007年06月20日 福田和代『ヴィズ・ゼロ』

 ミステリチャンネル「ブックナビ」収録。今回の国内イチオシベスト1は、香山二三郎氏が推した福田和代『ヴィズ・ゼロ』(青心社)に決定(→amazon。)。これ、青心社の青木さんから推薦を頼まれてゲラを読んだら、たいへん出来がよくて驚いた航空謀略サスペンス。
 台風の直撃で文字通りの孤島と化した関空に、ハイジャック機が着陸する。犯人グループの要求は、脱出用パラシュート八組と、燃料の補給、そして、自分たちのウェブサイトURLをマスメディアに伝えてアクセスさせることだった……。
 という導入から話は二転三転。出だしはちょっとぎこちないが、舞台が関空に移ってからは迫力満点。横溝賞でも乱歩賞でもこのミス大賞でも余裕でとれただろうに、青心社から書き下ろしで出すとは欲がない。
 部数も少なくて、置いてる書店も少ないようですが、冒険小説系の読者はぜひともお見逃しなく。関空ものとしては、五條瑛『ROMES 06』以来かな。
 海外イチオシベスト1は、大盛推薦のポール・アルテ『狂人の部屋』。このトリックは盲点だったな。


■2007年06月17日 魔法のiらんど文庫(仮)

 リリースによると、メディアワークスがケータイ小説サイト『魔法のiらんど』と業務提携して創刊するらしい。

 まんたんウェブによると、
「魔法のiらんど文庫」は、従来のケータイ小説の中心だった恋愛ものに加え、ファンタジーやSFなど新しいジャンルを文庫化していく方針。創刊時は5タイトル、その後は毎月3タイトルのを発行を予定している。「魔法のiらんど」は「『電撃文庫』を発行するメディアワークスとのコラボで、これまでとは違うジャンルの携帯小説を出版できる」としている。

 昨日のラジオで、「ライトノベル読者とケータイ小説読者はまったく重ならない。むしろたがいに憎み合っている」という話をしたばかりだったのに(笑)。まあ、だから提携するんだとも言えるけど。吉本興業と宝塚が業務提携するみたいな。違うか。逆に、ライトノベルのケータイ配信も加速している模様。そのうち、「紙で小説を読んでるのは年寄りだけ」という時代がやってくるかも。
 ちなみにケータイ小説サイトはすでに、紙媒体を持たない新人賞の受賞作発表媒体としても機能しはじめている。たとえばケータイlivedoor 小説。関西文学賞新人賞受賞作や浦安文学賞入選作が無料配信されている。うーん、ほんとは読まなきゃいけないんだけど……。
 月刊アスキーのコラムがなくなったので、こういうネタを継続的にフォローする力が弱まっているのだった。


■2007年06月16日 『日本SF作家クラブ40年史』出版記念宴会

 珍しい人は意外と少なかったが、永井豪、眉村卓、平井和正の3ショットは貴重かも。
 40年史は2000円とは思えない立派な本。残ってた分、10冊ぐらいは買えたんだけど、さすがに重すぎて2冊よけいに買っただけ。これのためにバッグを持参すべきだった。失敗。

 今後、希望者への販売もあるかも……ということだが、刷ってる部数が非常に少ないのでどういうことになるか不明。気になる人は、とりあえず森下さんのサイトへどうぞ。

 会場では、東浩紀から、明日のトークショーですぐ使えそうなネタをたくさん仕入れて満足。
 トピックは、円城塔と伊藤計劃、80年代リバイバル、「ゼロ年代の想像力」と前島賢、ガガガ文庫と佐藤大と仲俣暁生、文化系トークラジオLIFEと鈴木謙介などなど。
 しかし「ゼロ年代」はあっちでもこっちでもネタになってるなあ。時代は宇野常寛……なのか?
「要するに『Self-Reference ENGINE』はセカイ系で『虐殺器官』は対決主義だよね」
 とか使えて便利かも……便利なのか? ご恵送頂いた〈PLANETS〉3号はまだ読んでません。

 それにしても塩澤編集長、最近、やることなすこと大当たり中。ついに論壇誌としての成功にまで導くとは……。


■2007年06月14日 週刊新潮・唐沢俊一盗作疑惑記事の謎

 この一件自体を全然知らなかったという人は、まずばるぼらさんのまとめページを参照してください。

 「漫棚通信ブログ版」はけっこうマメに読んでるので、騒動の最初からウォッチしてたわけですが、今日届いた週刊新潮6月21日号の記事、『朝日新聞“書評委員”に浮上した「ブログ盗用疑惑」』の書きっぷりはちょっとひどいんじゃないかと思った。

 唐沢氏の談話として引かれている一節、「通常は、内容紹介の文が過剰な引用にならないようチェックしていますが、私のミスでその作業を怠った。最後に参考文献や資料などの一覧を付けるのも忘れてしまいました。無断引用したということについては全面的に認めています」は、ぜんぜん説明になってない。
 ふつう、「内容紹介の文が過剰な引用に」と言ったら、ある作品の内容を詳しく紹介しすぎて引用部分がつい長くなることをを指す。たとえば、津本陽『八月の砲声』が辻政信『ノモンハン』から大量に引用しすぎていると遺族に怒られたようなケースですね。
 しかし今回の場合は、その「内容紹介の文」自体が、他人の文の無断転載(に若干の改変を加えたもの)だったわけで、それを指して「過剰な引用」と呼ぶのは悪い冗談。「無断引用したということについては全面的に認めています」というけど、そもそもこれ、引用じゃないでしょ。他人の文章に手を加えて自分の文章にすることは、ふつう引用とは言いません。改変している時点で「引用」ではない。さらに、もし改変がなかったとしても、引用の要件を満たしていない。少なくとも、「出所を明示すること」「本文と引用部分が明らかに区別できること」に関してはアウト。さらに、「資料は、ちゃんと手元にあります」と言うんだったら、漫棚通信から引用する必然性はないわけで、「引用する必然性」に関しても疑問が生じる。とか検討するまでもなく、こういうのをふつうは「盗用」と呼びます。

 ぶっちゃけ、「コピペした他人のテキストをちょこちょこいじってそのまま自分の本に使った」という話なんだから、全力で謝罪する以外の選択肢はないと思うんだけどなあ。むしろ、最初から過剰なくらい大げさに謝ってしまうと一瞬で鎮静化するのに。ただちに絶版・回収を宣言したほうが圧倒的にラクだったんじゃ……。まあ、そうもいかない事情があるんでしょうが、こういう凡ミスが生じた経緯についても、その後の対応についても謎が多いことである。

 にもかかわらず、週刊新潮の記事は、唐沢氏に「漫棚通信さんには、お目にかかって直接、お詫びしたいです。しかし、名前もわかりませんし、メールでのやりとりしか応じてもらえないのは残念です」と言わせたり、(ネット上で祭りになったおかげで)「先方もかなり強気で、話し合いがなかなか進まない」という唐沢氏の知人の言葉を紹介したりした挙げ句、「身から出たサビとは言え、これが、ネット社会の怖さでもある」と結んでいる。まるで、匿名クレーマーの地雷をうっかり踏んで大変な目に遭ってる被害者に同情するかのような論調。全然そういう性格の問題じゃないと思うんですが。  もうひとつ、週刊新潮の記事で謎なのは、唐沢氏が「書評委員をつとめる朝日に対しては、当分、原稿を自粛したいと申し入れた」という一節。「裏モノ日記」を読むと、出稿・出演を自粛しない媒体もたくさんあるようなので、なぜ朝日新聞だけ特別に自粛するのか意味がわからない。世間を騒がせると新聞の書評原稿は自粛するのが社会常識なんでしょうか?


■2007年06月12日 今年の日本SFベストワンは……

伊藤計劃『虐殺器官』。カバー出来。6/22刊行予定だって。よく間に合うなあ。

『Self-Reference ENGINE』に続く小松左京賞落選作シリーズ第2弾。タイプはSREと正反対ですが、これまた大傑作なんでぜひ読んで下さい。ていうか、『SRE』が実はぴんと来なかった人にとくにおすすめ。今年の日本SFベストワンは、冗談抜きでこの両者の争いになるかも。いや、ベストテン年度だと『マルドゥック・ヴェロシティ』もあるし、『敵は海賊 正義の眼』もシリーズ最高傑作らしいので予断を許しませんが。

 『虐殺器官』は、グレッグ・イーガン『万物理論』の近未来でルーシャス・シェパード『戦時生活』の主人公がカーツ大佐を追いかけていたら『エンベディング』と遭遇したとか、そんな雰囲気。思いきり硬派なんだけど、モンティ・パイソンがふりかけてあるので大丈夫。ティプトリーの某短編を思わせるようなラストがまたすばらしい。
 ミステリ的に言うと、言葉の正しい意味での国際謀略小説。スリリングな軍事冒険小説とも読めるので、そちら方面の人もお見逃しなく。


■2007年06月11日 『スロー・バード』復刊

 イアン・ワトスンのワールドコン来日対策(結局来られなくなったらしい)で、元祖・奇想SFコレクションが名作セレクションから復刊。というか新装版刊行。「知識のミルク」の致命的な誤訳を直し、解説を若干追加しました。20代の翻訳は直しはじめるとキリがありません。

 ところで、届いた見本をぱらぱら眺めててやっと気がついたんですが、これ、「大森望 他訳」になってるじゃないですか(元版は「佐藤高子 他訳」)。amazonなんか「イアン・ワトスン (著), 大森 望 (翻訳) 」ですよ。
 代表訳者名は版元の裁量範囲とはいえ、単なる復刊でいきなり名前が変わるとは。せめて事前に言ってくれればよかったのに。佐藤さんに申し訳が立ちません。

 解説は、旧版に5ページほど新情報を追加。手前ミソながら、これはなかなかいい短篇集なんで、持ってない人はぜひ。
 ワールドコンが日本で開催される年に「二〇八〇年世界SF大会レポート」を読み返すのも感慨深い。あと、名作セレクションは4月に『銀色の恋人』を出し、6月に「銀座の恋の物語」を復活させたわけですね。銀恋セレクション。

 復刊といえば、友成純一の名著『ホラー映画ベスト10殺人事件』 がついに光文社文庫から復刊される模様。 これもひとつの平山夢明効果でしょうか。 あとは飯野文彦だな。


■2007年06月11日 島田雅彦(46)処女映像作品

『カオスの娘』ビデオクリップ完成!
監督、脚本 オレ
出演 可愛い教え子たち&AMAMI&オレ

 だそうです。 →youtube

■2007年06月10日 本格ミステリ大賞@日本出版クラブ

 委任状を出すのをまたもや忘れたのでさすがに気が引けて、本格ミステリ作家クラブ総会から出席。歌野議長の堂に入った司会っぷりが見事。こんな才能があったとは。

 基本的にはシャンシャン総会ですが、大賞にメール投票システムを導入してほしいという川出正樹提案からひとしきりメール論議。現在はハンコ入りの投票用紙を使った郵送のみなんですが、これ、記名投票なんだから(しかも何百字も選評書かなきゃいけないんだから)、そういう方法での本人確認は不要では。
 このミスはもう十年以上前からメール投票ですが、なりすましとか二重投票とかがあったという話は寡聞にして知りません。
 しかしメール投票が増えると、開票儀式(封筒の封を切って投票作品を読み上げる)が有名無実化する危惧はあるか(メールを事務局でプリントアウトして封筒に入れて封をすることで、儀式性は担保できるにしても)。

 特別賞の候補出しに関しては、もうちょっとシステム化してもいいのではないかと思った。大賞候補アンケートのさいに、「ぜひ特別賞を授賞したいと考える対象があったら、その理由とともに書いてください」みたいな別項を立てておけばいいんじゃないの?

 5時からは大賞の贈賞パーティ。巽昌章氏の3歳になるお嬢さんがものすごい勢いでそのへんを走りまわってて、とても捕まえられません。すごい力と速度。あの夫婦からどうしてこんなに敏捷な子供が! 久子ママも基本は放置の方向らしい(笑)。

 その巽さんの受賞挨拶が爆笑だったんですが(今日ここにいない人にもきちんと言及する)、いきなりそんなところで大森の名前を引き合いに出すのはやめてください。心臓に悪いよ!
 そのへんの兄ちゃんが道ばたでばったり会った友だちと喋り出したみたいな調子の道尾秀介の受賞挨拶も秀逸。
 まあしかし、去年にくらべると全体的に「嵐のあと」というか、台風一過みたいななごやかな雰囲気でしたね。

 もっとも、あれだけの大騒動をまったく知らなかった人もいて、非ミステリ系の某文芸編集者からは、「メッタ3を読んではじめて知りました。たいへんだったんですね」といわれたり。この会場に来ててそれはどうか。

 二次会は、飯田橋・日本歯科大裏のイタリア料理屋、スクニッツオ!。こんなところにこんな店があったとは。


■2007年06月06日 ゲドを読む。

 本日刊行の110万部無料宣伝文庫。
 文教堂西葛西店でピンクを、TSUTAYA西葛西店で黒を入手。
 さらにローソンで黄色をゲット。レジで「ゲドを読む。」くださいと言ったら、三色の中から選ばせてくれました。 店員に声をかけた人にだけ渡すというのが基本らしい。
 あとは青と赤だ(笑)。
 5色そろえてヤフオクに出す人が続出しそうな予感。(と思ったらすでに出ていた)

 もちろん中身はぜんぶ同じで、中沢新一の語り下ろし原稿(さすがによくできた内容)以外はだいたい再録。 河合隼雄の再録を読んでると「牧神」のル・グィン特集の話とか出てきて懐かしい。

「心に沁みることば」は意外と分量が少なかった。 「がばいばあちゃんの勇気が湧く50の言葉」みたいに、これだけで一冊にすればいいのに。

 今日の文化放送ゴールデンラジオでは、急遽これをネタにすることにしたんですが、中身についてはあんまり言うことがない。やはり宮崎父子と鈴木Pネタで行くのか。
 これ、1冊あたりの原価ってどのぐらいですかね。50円? もっと安い?


■2007年06月05日 中原昌也聖誕祭@ロフト+1

 中原くんのお誕生会に行ってるヒマなんかないよ!

 と思ったが、佐々木敦を迎えてのメッタ斬り!トークショー前にプチ文壇力(笑)を強化すべく、子供を風呂に入れてから出撃。義理堅いトヨザキ社長はプレゼント持参でやってきて、途中30分ほど壇上にあがって、中原入りメッタ斬り!トーク(司会は柳下毅一郎と高橋ヨシキ)。
「くれぐれも誰にも言わないで」と自分で念を押しまくっていたネタを自分からどんどんしゃべる中原くん37歳。
 続いて登壇した滝本誠とのトークは芸術の域に達してました。
 最後は中原カラオケ絶唱3連発で幕。中原ファンは善男善女が多いと思いました。

 渡辺電機(株)の中の人にひさしぶりに会いましたが、あいかわらずオフラインでは寡黙で温厚な紳士。とてもあんなことやこんなことをあちこちに書いている人とは思えません。



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