「奈良漬」のこと
「おつけもの」のことのところでもご紹介しましたが、塩漬と
ともに、粕漬も相当古くからあったようです。
奈良時代の「長屋王」の木管や、平安時代の「延喜式」の中に
も書かれていますし、鎌倉時代の延慶三年(1310年)頃の
「夫木集」のなかに
"秋なすび わささのかすに つけまぜて
よめにくわれじ 棚におくとも"という
古歌があるということです。
奈良漬は「越瓜(しろうり)」(白瓜)の粕漬で、奈良時代に、
さる禅僧が托鉢に廻っていた道中に、何とはなく腹立たしいこ
とがあり、道端の瓜を、近くにあった酒の瓶(かめ)の中に投
げ入れたところ、後になって瓶の中の酒のもろみの中から、美
味しく漬け上がった瓜が出てきたとか、
やはり、奈良時代に天王寺辺りに店を出していた商人が、野菜
を粕漬にして浪速方面に売り歩いたのがはじまりなどと、伝え
られています。
いずれにしても、古来都の有った、大和;奈良の地に大陸より
酒造りと共に伝わった野菜作りとが結び付き、美味しい奈良の
都の漬物、奈良漬として、全国に伝わったのではないでしょう
か。奈良漬の材料の「しろうり」は「越瓜」と書きます。この
「越」とは、中国の「越の国」のことで、そこが原産地だとも
いわれています。現在京都府下南部の精華町辺りに、酒造りや
瓜作りが伝わった所が有るということです。機会が有れば、調
べてみようと思っています。